薄暗い小部屋で怪しげな研究に没頭するマッドドクターは、ホラー映画の人気のサブジャンル(医療手術ホラー・メディカルホラー)、お馴染みのホラーキャラクター類型のひとつ。マッドサイエンティストと重なる要素も多いが、マッドドクターは、医者であるため、対象が「人間」であることが作品の特徴になっており、内容は、外科手術的な皮膚移植から、過激な生体実験、人体改造、死体蘇生(ゾンビ化など)、果ては生命の創造まで。本年代記においては、人情・愛情型、サイコパスな人体実験マニア型、大志・チャレンジャー型の3タイプに分類して、体系的にマッドドクター映画を振り返っていく。

人体実験マニアのサディスト型マッドドクター映画

「人体実験マニアのサディスト型マッドドクター」とは、患者が苦しむ顔を見るのを至福の喜びとするような変態なサド系医者や、とにかくメスを握らせろ、何でもいいから解剖させろという危険極まりない狂気的な人体実験マニアのこと。人体実験マニアのサド医師は、人体破壊を繰り返す「人間解剖島/ドクター・ブッチャー」(1981年)などに登場する。

ホラー・ホスピタル(1973年)

車椅子姿のマッドドクターのストーム博士。ロボトミー手術によって、ストーム博士の言いなりになる人間(奴隷)=ゾンビを作り出していた。

車椅子姿のマッドドクターのストーム博士。ロボトミー手術によって、ストーム博士の言いなりになる人間(奴隷)=ゾンビを作り出していた。

ホラー・ホスピタル(原題:HORROR HOSPITAL/COMPUTER KILLERS/DOCTOR BLOODBATH)は、1973年のイギリスのホラー映画。バイオレンスやスプラッターを盛り込んだマッド・サイエンティスト映画の傑作。

マッドドクターのストーム博士が作り出したものは、言いなりになる人間(奴隷)=ゾンビだった。

マッドドクターのストーム博士が作り出したものは、言いなりになる人間(奴隷)=ゾンビだった。

【STORY】
霧深いイギリスの山奥の治療施設。そこには密かに研究を行うマッド・サイエンティストのストーム博士がいた。都会を離れたバンドマンのジェイソンは、偶然その場所を旅行先に選んでしまう。列車で相席になったジュディと共に休暇を楽しむ筈だったのだが、これから始まる惨劇の主人公になるとは未だ知らなかった・・・

人間解剖島/ドクター・ブッチャー(1981年)

人間解剖島/ドクター・ブッチャー(原題:DOCTOR BUTCHER M.D./ZOMBI HOLOCAUST/QUEEN OF THE CANNINBALS/LA REGINA DEI CANNIBALI)は、1981年のホラー映画。マッドドクター・ゾンビ・カニバリズムの3つの要素を併せ持つホラー映画。死体安置所で起きた奇怪な事件を追って謎の孤島にたどり着いた一行を待ち構えていたものはゾンビ、食人族、マッド・サイエンティストというとんでもない面々だった。

死体安置所で起きた奇妙な事件を追い、人気のない孤島を訪れた一行に、ゾンビの恐怖が待ち受ける。手術台の美女に迫る狂気のメス!悪魔のゾンビ島で戦慄の生体実験が始まる……。頭皮を引き剥がされる美女。眼球を押し潰され、内臓を食い荒される男。画面を深紅に染める凄まじい残酷描写の連続で、劇場公開時にはカットを余儀なくされた問題作。

Dr.ギグルス(1992年)

『Dr.ギグルス』(原題:Dr. Giggles)は、1992年制作のアメリカ合衆国のホラー映画。自分を医者だと思い込み、精神病棟でDr.ギグルスと呼ばれている男が看守を殺害して脱走し…。

精神病院を脱走した男が、医者であるという妄想を抱え、人体を切り刻み始める。彼の父親は、30年前に患者の心臓をつぎつぎとえぐり出し死刑となっていた……。「ダークマン」のラリー・ドレイクが、インパクトある形相でマッド・ドクターを演じるホラー作品。

デンティスト(1996年)

デンティスト(原題:The Dentist)は、1996年のメディカル・ホラー映画。興奮すると患者の口の中をバキバキにしてしまうサディスティックなファインストーン歯科医の狂気を描くサイコホラー。「ソサエティー」「死霊のしたたり2」「バタリアン・リターンズ」のブライアン・ユズナ監督作。

続編「キラー・デンティスト」(1998年)

もし歯科医が異常人格者だったら?衝撃のサスペンス・スリラー。

もし歯科医が異常人格者だったら?衝撃のサスペンス・スリラー。

誰か止めて。

キラー・デンティスト(原題:THE DENTIST 2)は、1998年のサイコホラー映画。「デンティスト」(1996年)の続編。マッドドクターのファインストーンは、ドリル、注射、ピンセット、そしてメスを巧みに使いこなす名歯科医。が、ひとたび彼がキレはじめると、同じ道具はたちまち殺人ツールに変わってしまう。

愛・人情型マッドドクター映画

「愛・人情型マッドドクター」とは、愛する妻や恋人、大切な娘を救うために、悪魔に魂を売って、鬼と化したマッドドクターのこと。フランスのホラー映画の記念碑的な古典「顔のない眼」(1959年)などが代表作。

医療手術ホラーの原点『顔のない眼』(1959年)

顔のない眼は、『狂ったメス』や『ショック療法』などの“医療系ホラー”というジャンルの基盤を確立させた怪奇ホラー作。

顔のない眼は、『狂ったメス』や『ショック療法』などの“医療系ホラー”というジャンルの基盤を確立させた怪奇ホラー作。

『顔のない眼』(仏: Les Yeux sans visage、英: Eyes Without a Face)は、1959年製作のフランス・イタリア共同製作のホラー映画。フランス語による白黒フィルム。怪奇色を帯び、残酷なシーンもあるが、抒情的な映像を作り出しており、登場人物の苦悩や罪悪感などの心理も的確に描き出された佳品である。古典的な「マッドドクターもの」の変化球的な作品であり、「美女の皮をはぐ男」(1961年)や「狂ったメス」(1967年)といった「医療手術ホラー」の原点とも言える傑作。

交通事故で顔の皮膚が滅茶苦茶になってしまった娘の顔に、医者である父が、誘拐して殺した若い女性の顔の皮膚を移植するという怪奇スリラー。

交通事故で顔の皮膚が滅茶苦茶になってしまった娘の顔に、医者である父が、誘拐して殺した若い女性の顔の皮膚を移植するという怪奇スリラー。

生血を吸う女(1960年)

血を入れ替えないと死んでしまう奇病に冒された娘のため、女を捕まえては血を抜き、証拠隠蔽のため死体を蝋人形にしていた教授を戦慄の恐怖が襲う。

血を入れ替えないと死んでしまう奇病に冒された娘のため、女を捕まえては血を抜き、証拠隠蔽のため死体を蝋人形にしていた教授を戦慄の恐怖が襲う。

生血を吸う女(原題:IL Mulino Delle Donne Di Pietra)は、1960年のイタリア・フランス合作のホラー映画。新鮮な血液を輸血し続けないと死んでしまう奇病の娘のために、凶行を重ねる父親。

屋根に巨大な風車をつけた古屋敷に住む教授とその娘。教授の娘は血を入れ替えないと死んでしまう病気に侵されており、町で女を捕まえてきては、殺害し、娘の血と入れ替えていた教授。さらには死体を蝋人形に埋め込み、蝋人形館に展示をしており…。

美女の皮をはぐ男(1961年)

オルロフ博士の助手である(目が見えず、物音で察知して動く)モルフォが獲物を連れてくる役割。獲物の首筋を噛みつくため、まるでドラキュラのような挙動を見せる。蘇生で生き返ったのでゾンビ風でもある。

オルロフ博士の助手である(目が見えず、物音で察知して動く)モルフォが獲物を連れてくる役割。獲物の首筋を噛みつくため、まるでドラキュラのような挙動を見せる。蘇生で生き返ったのでゾンビ風でもある。

美女の皮をはぐ男(原題:L’Horrible Dr. Orlof/THE HORRIBLE DR. ORLOF)は、ジェス・フランコ監督による1961年のスペイン・フランスのサイコ・医療ホラー映画。火傷を負った妻の顔の皮膚を治療するため、若い女をさらっては次々にその皮膚をはぎ、移植を繰り返す狂気の愛情に取り付かれた外科医であるオーロフ博士(ハワード・ヴェルノン)を描いたサイコ・ホラー。本作のプロット自体は、大ヒットしたフランス映画『顔のない眼』を引用したもの。

オルロフ博士は、度重なる失敗から警視正の恋人ワンダを毒牙にかけ、心優しい召使のアンネまで絞殺してしまう。

オルロフ博士は、度重なる失敗から警視正の恋人ワンダを毒牙にかけ、心優しい召使のアンネまで絞殺してしまう。

フェイスレス(1988年)

『フェイスレス』(仏題:Les Predateurs de la nuit、別題:Faceless)は、1987年制作のフランスのホラー映画。ジェス・フランコが自身の出世作『美女の皮をはぐ男』(1962年)をセルフリメイクしたホラー映画。スプラッター描写(顔の皮をはぐグロ要素)は大幅に強化されている。

フラマン博士(ヘルムート・バーガー)は、硫酸をかけられて二目と見られなくなった妹のため、愛人で看護婦のナタリー(ブリジット・ラハレ)とともに若い娘をさらっては皮膚移植の手術を行っていた。

美しき生首の禍(1962年)

生き返ったジャンは「私を死なせて…」と嘆願するが、ビルは、ジャンに最高の身体を移植するため、美人を殺して持ち帰ろうとする。

生き返ったジャンは「私を死なせて…」と嘆願するが、ビルは、ジャンに最高の身体を移植するため、美人を殺して持ち帰ろうとする。

『美しき生首の禍』(原題:The Brain That Wouldn’t Die/The Head That Wouldn’t Die)は、1962年のアメリカのSFホラー映画。『顔のない眼』や『フランケンシュタイン』を彷彿させる医学ホラーのカルト作。TV放映時のタイトルは「死なない頭脳」だった。生首トラウマ映画の決定版。

実験の失敗によって生まれた醜い怪物が、最後に登場して暴れる。クライマックスに登場するモンスターはあまりにも衝撃的だった為、海外では縮小されたバージョンも存在する。

実験の失敗によって生まれた醜い怪物が、最後に登場して暴れる。クライマックスに登場するモンスターはあまりにも衝撃的だった為、海外では縮小されたバージョンも存在する。

【ストーリー】
コートナー博士の息子、ビル博士は天才的な外科技術の持ち主だった。しかし、彼のその過剰な自信は、密かに許されざる人体実験を行なうに至っていた。ある日、彼は交通事故を起こし、同乗者だった婚約者のジャン・コンプトンを亡くす。諦めきれないビル博士は、事故現場からジャンの頭部だけを持ち帰り、実験室で蘇生させる事に成功する。生き返ったジャンは「私を死なせて…」と嘆願するが、ビルの野望は止まらず、ジャンに新しい躰を与えようと、素晴らしい肉体の女性を物色に出かける……

フランケンフッカー(1990年)

手術台から起きあがったエリザベスは、娼婦そのままの怪物の人造人間「フランケン・フッカー(娼婦)」だった。

9人の娼婦の体をツギハギして蘇ったエリザベスは、娼婦そのままの怪物の人造人間「フランケン・フッカー(娼婦)」だった。

フランケンフッカー(原題:Frankenhooker)は、1990年のアメリカのブラックコメディ・ホラー映画。芝刈り機に巻き込まれて死んだ恋人を生き返らせるために娼婦(Hooker)を殺すマッドサイエンティスト(マッド・ドクター)を描く異色の大暴走グロテスク・ホラー。

若い医学生、ジェフリー・フランケンは、不運な死を遂げたフィアンセ・エリザベスを9人の娼婦の身体を使って甦らせる。しかし甦ったエリザベスは怪物そのもので…。

集めた7人の娼婦達に麻薬を調合した「スーパークラック」を吸わせると爆発してバラバラに吹っ飛ぶ。

ジェフリーは、集めた7人の娼婦達に麻薬を調合した「スーパークラック」を吸わせると、娼婦たちは爆発してバラバラに吹っ飛ぶ。娼婦たちは、おぞましいバラバラ死体に…。

クーラーボックスの培養液の中で娼婦たちのバラバラの身体パーツは部分的に融合し溶けあい魑魅魍魎な怪物と化していた。娼婦たちのヒモだった男ゾロを捕まえてクーラーボックスに戻っていった。

クーラーボックスの培養液の中で娼婦たちのバラバラの身体パーツは部分的に融合し溶けあい魑魅魍魎な怪物、グロテスクなクリーチャーと化していた。怪物たちは、娼婦たちのヒモだった男ゾロを捕まえてクーラーボックスに戻っていった。

娼婦たちのヒモだった男ゾロが入って来て、主人公ジェフリーの首を切断して殺してしまう。翌日ジェフリーが目覚めると、ジェフリーの首は娼婦をつなぎ合わせて作ったボディにくっついていた。エリザベスが手術をやってのけたのだった。「首から下は女性の体」になってしまったジェフリーの絶叫が響き渡り、物語は終幕する。

娼婦たちのヒモだった男ゾロが入って来て、主人公ジェフリーの首を切断して殺してしまう。翌日ジェフリーが目覚めると、ジェフリーの首は娼婦をつなぎ合わせて作ったボディにくっついていた。エリザベスが手術をやってのけたのだった。「首から下は女性の体」になってしまったジェフリーの絶叫が響き渡り、物語は終幕する。

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