本物のフリークス(奇形者や障害者)が登場して物議をかもした『フリークス』、『エル・トポ』、『悪魔の植物人間』などのホラーもしくはカルト作品と、『悪魔のシスター』や『バスケットケース』などリアルなフリークスは登場していないが映画の題材としてフリークス(特殊メイクなどで再現)を扱った作品をまとめた一覧。
本物のフリークスが登場する映画
『フリークス』

『フリークス』 (Freaks) は、1932年に制作・公開されたアメリカ映画である。監督はトッド・ブラウニング。日本公開は1932年(昭和7年)11月、初公開時のタイトルは『怪物團』であった。元祖フリークス・ムービー。本物の奇形・不具者が大挙登場する“伝説の”古典ホラー。

旅回りの見世物小屋が舞台で、出演者は実際の見世物小屋のスター、デイジー&ヴァイオレット・ヒルトン姉妹などの本物の奇形者や障害者であった。公開当時は世間に大変なショックを与えた。
『エル・トポ』

『エル・トポ』(El Topo)は、1970年のメキシコ映画。監督・主演はアレハンドロ・ホドロフスキー。無数の死体や流血に彩られた映画。独特の世界観でカルト的人気を誇る。ガンマンを主人公とした西部劇として幕を挙げるが、衝撃的な展開で世界中の度肝を抜いた。本作に登場しているフリークス・奇形役の俳優は本物のフリークス。
荒野をさまよう子連れガンマン、エル・トポ(アレハンドロ・ホドロフスキー)が、東洋哲学者や超能力者など特異なガンファイターを次々と卑劣な手段で殺害し、自分も殺される。やがて彼は子どもが成長して司祭になった時代によみがえり、地底の民たちを解放しようとするが…。

『悪魔の植物人間』

『悪魔の植物人間』(原題:The Mutations)は、1974年製作のマッドサイエンティストを題材にしたホラー映画。『悪魔の植物人間』は、フリークス、センチネルに次ぐ、3大フリークス映画のうちの1作。どれも本物のフリークスが大勢出演している。当時は、こういう描写も映画として認められていたようですが、時代が人権やモラルに敏感になったことで、本物のフリークスを人目に晒すこと自体を問題と捉えるようになったのでしょう。
ヒゲのある女(両性)、針を体に刺しても痛みを感じない男、むくじゃらの猿女、足の骨にカルシウムが無いという逆立ちカエル男、肌がワニのようにガサガサの女、目玉の飛び出す男、全身ガリガリ激やせ女、足の曲がり方が異常な小人などなど・・・これらの奇形・奇病を患った人々が、見世物小屋で働く人々として出演している。
【ストーリー】
イギリス。ある大学で植物と人類の突然変異について熱弁をかますノルター教授。彼には野望があった。それは人間と植物を掛け合わせた新人類を誕生させることであった。教授は見世物小屋の奇形男リンチに、まともな姿に戻すことを見返りとして学生を誘拐させ、生体実験を繰り返す毎日を送っていた。実験は失敗の連続であった。無残な姿となった瀕死の学生は、見世物小屋の客寄せにとリンチが引き取っていた。やがて、実験は成功し、待望の植物人間が誕生するが・・・。
『怪奇!吸血人間スネーク』

『怪奇!吸血人間スネーク』(原題:Ssssnake、別題:Sssssss)は、1973年のアメリカのホラー映画。伝説のカルト動物パニック映画。人類が生き残るために蛇に進化しようと考えるマッド・サイエンティストのために蛇人間になっていく男の悲劇を描いたカルト中のカルト作品。蛇人間の描写は『フリークス』『センチネル』と並び伝説化しているキワドサ。手足のない俳優が蛇人間を演じた。またサイド・ショーの場面(フリークスが出演する見世物小屋)では、本物のフリークスが登場している。
[STORY]
人間の究極の進化形態は蛇になることである。狂った科学者は、助手の肉体を使って蛇の血清を注射し、蛇人間になるための実験を繰り返す。徐々に蛇化していく助手。そんな悪魔の実験を知らない科学者の娘は助手と恋に落ちる。そして彼らは地獄へと落ちていくのだ。
『センチネル』

センチネル(原題:THE SENTINEL)は、1977年のアメリカのオカルトホラー映画。クライマックスシーンに本物のクリークスが地獄の住人(悪魔・悪霊)として登場することにより、倫理的に問題がある作品と評され問題となった。

【ストーリー】
舞台はニューヨーク。ファッション・モデルの主人公は、越して来た古風なアパートの最上階に、いつも窓の外を眺めている盲目の神父がいる事を知る。彼女は住人たちに歓迎パーティを開いてもらったりするが、実は、そこには彼女と神父以外誰も住んでいなかった。そして、ある夜、3週間前に死んだ父親の姿を目撃してから彼女の周囲で次々と奇怪な事が起こり始める……。
阿修羅/ミラクル・カンフー

阿修羅/ミラクル・カンフー(原題:THE CRIPPLED HEAVEN)は、1980年のアクション映画。主人公が実際の障害者。奇想天外なアクションによりカルト・ファンの間では今も語り継がれる伝説のクンフー・アクション。香港(台湾)カンフー映画最大級のカルト問題作。
両腕を失っているシェン・サン・シェンと両足が無いカン・チャオ・ミンが、肉体のハンディを克服して空手の妙技を見せるドキュメンタリー・タッチのクンフー映画。
【ストーリー】
クンフーの達人リー・ホー(シェン・サン・ツェン)は、悪人リン・チェン・カンの罠に落ち両腕を奪われるが絶望の淵から蘇えり、肉体を鍛えることに全神経を集中させる。一方、チャン・シン・チェン(カン・チャオ・ミン)は、リンの部下だったが、ささいなことで彼の怒りをかい、無慈悲にも両足を奪われた。そんなリーと、チャンが、偶然出あい、はじめは敵対意識をもつが、やがて、共通の敵リン打倒を目ざして修練をはじめる。肉体のハンディがあるゆえ、かえって熱情的にうちこむ二人。そして、リンの支配する町に行き、いよいよ闘いの時を迎えた。リンの部下たちを一人また一人と倒し、遂にリンを例すのだった。今、二人の復讐は終った。
『痴漢ドワーフ』

『痴漢ドワーフ』(原題: 丁: Dværgen・英: The Sinful Dwarf)は、1973年に製作されたアメリカ合衆国とデンマークによる合作のホラー映画。セックスとバイオレンスに満ちたソフトコアポルノ映画であり、フリーク(異形)映画の側面も持っている。

主演のトルベン・ビレ(Torben Bille、デンマーク・キューゲ出身、1945年10月31日 – 1993年7月22日)は、当時デンマークで著名な小人俳優であった。トルベン・ビレの単なる見世物役者にとどまらない存在感と演技力によって、一部のカルト映画信奉者に支持され、DVD化もされている。
ラットマン

ラットマンは、ジュリアーノ・カルニメオ監督の1988年のイタリアのホラー映画。主演のラットマンを演じるネルソン・デ・ラ・ロサ・マルティネス(別名マハウ)は、ドミニカの俳優であり、20世紀と21世紀の最も背が低い男性の一人。ネルソンの身長は71センチ。
映画の題材としてフリークスを扱った映画
本物のフリークスを使わない作品は、人権的配慮をあまり考慮しなくても良いため、いろいろな表現や作風を作り出すことができる。
シャム双生児の殺人を描いた作品
『悪魔のシスター』

悪魔のシスター(原題:Sisters)は、1972年のアメリカの映画。黒人青年が惨殺される現場を目撃した女性記者は単身捜査に乗り出すが、犯人の女性には意外な秘密が隠されていた。彼女は元々シャム双生児で、切り離されて死んだ姉の意識が、妹の方に乗り移っては凶行を繰り返していたのだ……。
美しいモデルのダニエルと一夜を過ごした男性が殺害される。その現場を真向いのマンションから目撃した記者グレースは探偵ジョセフとともに事件解明に乗り出す。やがてグレースたちはダニエルをめぐる秘密を知ることに。ダニエルは体がつながったまま生まれたシャム双生児だった。彼女には、切り離し手術後に死んだ双子の片割れの意識が乗り移っていたのだ……。
『バスケットケース』

バスケットケース(原題:Basket Case)は、1982年のアメリカの恐怖映画。手術により切断されたシャム双生児の兄が巻き起こす殺人の恐怖を描いたカルトホラー。シャム双生児のデュアンとベリアルは、自分たちを無理矢理切り離した医者に復讐を果たすが…。

近親相姦が生み出すフリークス
『恐怖のいけにえ』
恐怖のいけにえ(原題:THE UNSEEN)は、1980年のアメリカのサスペンス・ホラー映画。別題は、恐怖のいけにえ/呪われた近親相姦の館 (ビデオ)。
若く美しい3人の女性が、ある夜、宿を提供されたことから恐ろしい殺人事件に巻き込まれるというサスペンス映画。おぞましい秘密が隠された白亜の館に囚われた“いけにえ”たちの運命は!?
【ストーリー】
女性TVレポーターのジェニファー(B・バック)は、カメラマンである妹のカレン(K・ラム)、アシスタントのヴィッキーを連れ、祭りで賑わうカリフォルニア州の小都市ソルバングを訪れた。ところが、既に宿屋はどこも観光客で満室。途方に暮れた彼女らは、偶然出会った親切な中年男ケラー(S・ファースト)の好意で閑静な森の中に佇む屋敷に招待される。その様子を邸内からじっと伺う何者かの視線。体調を崩し、部屋でひとり休んでいたヴィッキーが床の通風口から現れた正体不明の怪物に惨殺され、取材から戻ったカレンとジェニファーにも魔手が迫る……。
祭りの取材へやって来た3人の女性は、中年夫婦の好意に甘えて一晩泊めてもらう事にするが、そこには彼女たち以外の存在があった。夫婦というのが実は兄妹で、近親相姦の末に生まれてきた息子は地下室に閉じ込められている。すでに人間とは言えない状態のその息子が、女たちを血祭りに上げていたのだ。
『キャッスル・フリーク』
キャッスル・フリーク(原題:CASTLE FREAK)は、1995年のホラー映画。『ZOMBIO/死霊のしたたり』『フロム・ビヨンド』の鬼才スチュアート・ゴードン監督。イタリアの古城を相続したアメリカ人一家に降り注ぐ恐怖の数々をSFX満載で描くゴシック・ホラー。
イタリアの古城を舞台にしたモンスター・ホラー。イタリアの古城に人肉を求めるモンスターが潜み、それを知らずに住むことになった一家…。イタリアの古城で暮らす老公爵夫人が亡くなり、夫人の縁者である一家が城を訪れる。だが、夫人は異形の息子を地下室で監禁虐待しており…。
【ストーリー】長い歴史を刻んだイタリアの古城で、隠者同然の生活を送る老公爵夫人が心臓発作で息を引き取った。夫人の縁者であるジョン(J・コムズ)は、妻のスーザン(B・クランプトン)と盲目の娘レベッカを連れ、城の相続手続きに静かなイタリアの田舎町を訪れる。だが、この城には忌わしい秘密があった。公爵夫人は異形の息子ジョルジョを長年地下室に監禁虐待していたのだ。母の死で自由を得たジョルジョは飢えと肉欲を満たすため、暗闇に身を潜めて一家に魔手を伸ばしていく…。
『ヘモグロビン』
『ヘモグロビン』(Bleeders)は、1997年に制作されたカナダ・アメリカ合衆国のSFバイオ・ホラー映画。ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの怪奇小説『潜み棲む恐怖』(The Lurking Fear)を映画化したものである。別題は、ブレーダーズ クライチカ (DVD題)。
16世紀半ば、禁じられた近親婚を繰り返していたヴァン・ダム一族は祖国オランダを離れ新天地アメリカへと移住していた。そして現代、ニューイングランドの孤島を若い夫婦が訪れていた。自分がこの島の出身である事を知った夫が、敗血病の治療の手掛かりをつかもうとやって来たのである。島の医者は彼の…
ミュータントが登場するSFホラー
『ヴィデオドローム』
『ヴィデオドローム』(Videodrome)は、1982年のカナダ映画であり、デイヴィッド・クローネンバーグ監督の代表作品。特殊メイクはリック・ベイカーが手がけた。1983年2月に公開されたが、あまりに難解なため製作費の半分も回収できなかった。その後、ビデオ化されてカルト映画として人気に火がついた。
カナダのトロントにある地方TV局の社長が、奇妙なビデオテープを発見した。暴力と官能に溢れた映像に、彼とその恋人は次第に虜となっていく。やがてテープに秘められた恐るべき陥穽が明らかになる……。
ポルノと暴力を売りにしているカナダのテレビ局社長(ジェームズ・ウッズ)の元に、ひょんなことから禁断のビデオテープが届けられる。それは、見続けると幻覚症状が起き、やがてはその人間の身体までをも変貌させてしまうという恐ろしいテープだった…。
伝記映画「エレファント・マン」

『エレファント・マン』(The Elephant Man)は、1980年制作のイギリス・アメリカ合作映画 。「カルトの帝王」と呼ばれるデヴィッド・リンチ監督、脚本。19世紀のイギリスで「エレファント・マン」と呼ばれた青年ジョゼフ・メリックの半生を描いている。

19世紀末のロンドンを舞台に、生まれながらの奇型ゆえ“エレファント・マン”と呼ばれ人間扱いされなかった実在の人物ジョン・ノリックの数奇な運命と彼をとりまく人間たちとの触れ合いを描く。
関連キーワード/関連項目
- ホラー映画のサブジャンル
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- 日本のホラー映画
- SFホラー映画
- 動物パニック映画
- オカルト映画
- ゾンビ映画
- スプラッター映画・スラッシャー映画
- 人喰い「カニバリズム映画」(食人映画)年代記