サスペリア(1977年)は、世界各国で記録的な大ヒットとなったオカルト映画の記念碑的な不朽の名作。ヨーロッパの由緒正しい名門の寄宿制バレエ学校が実は魔女の巣窟だったという少女マンガのような魅力的なストーリー、原色(赤と緑)を生かした鮮烈な色彩美、ゴブリンによる悪魔的な音楽、残酷美を極めた人体破壊描写の芸術的な演出など、すべてが斬新であり、革新的なショック映画、恐怖映画であった。「決して、ひとりでは見ないでください」。恐怖映画史上、最も秀逸な宣伝コピーと言える。当時、残酷性と性描写(エログロ)を売りにしていたイタリアホラー映画が世界に深く認められるきっかけになった「サスペリア」(1977年)の大ヒット。本特集では、サスペリア3部作(魔女3部作)、『サスペリアPART2』、「2018年のリメイク版」についても詳細に解説します。

オカルトホラー映画の金字塔「サスペリア」(1977年)の謎と伏線

『サスペリア』(原題:Suspiria)は、ダリオ・アルジェント監督による1977年制作のイタリアのオカルト・ゴシック・ホラー映画。英国ロマン派作家トマス・ド・クインシーの小説『深き淵よりの嘆息』(Suspiria de Profundis)をモチーフに、ダリオ・アルジェントとダリア・ニコロディが脚本化した。本作の大ヒットによって、アルジェント監督は世界的な名声を手に入れ、エロティシズム(性描写)とサディズム(残酷性)が売りの「ジャッロ映画」、サンゲリア(1979年)などの「ゾンビ映画」、「食人族」(1981年)などの「カニバリズム映画」などのジャンルでイタリア産ホラー映画が再認識された。

主人公のスージーがドイツのバレエ名門学校に入学する(恐怖劇場の幕開け)

扉が開くとともにゴブリンが奏でる恐怖の音楽が爆音で炸裂して観客は驚かされる

スージーが自動ドアに近づき、自動ドアが開いたタイミングで、ゴブリンが奏でる恐怖の音楽が大爆音で鳴り響き、観客を驚かせる。
スージーが自動ドアに近づき、自動ドアが開いたタイミングで、ゴブリンが奏でる恐怖の音楽が大爆音で鳴り響き、観客を驚かせる。
自動ドアが開いたところから、スージーの悪夢が始まる。恐怖音楽で痛烈な印象を与える。
自動ドアが開いたところから、スージーの悪夢が始まる。恐怖音楽で痛烈な印象を与える。


ゴブリン(Goblin)の映画音楽『サスペリア』 – Suspiria (1977年)
ゴブリンが奏でる恐怖の音楽が「音響立体移動装置」(サーカム・サウンド・システム)により増幅された。恐怖のメロディが多くの人の脳裏に刻まれた。

いきなり街に拒絶されるスージー。悪い予感しかしない。

タクシーの進行をさえぎるくらい飛び出して、タクシーを止めようとしてもタクシーが止まらない。いきなり拒絶されるスージーの前途は多難。
いきなり土砂降りの雨で、ずぶ濡れになっていくスージー。タクシーの進行をさえぎるくらい大幅に道路に飛び出して、タクシーを止めようとしてもタクシーが止まらない。タクシーのありえない拒否っぷり。いきなり拒絶されるスージーの前途は多難。街がスージーをよそ者扱いし拒絶しているかのような演出。
悪天候の中、タクシーがなかなか止まらない。焦るスージー。異国で孤独と不安に苛まされるずぶ濡れのスージー。
悪天候の中、タクシーがなかなか止まらない。焦るスージー。異国で孤独と不安に苛まされるズブ濡れのスージー。タクシーに乗るまでに、すでにサディスティックな扱いを受けるスージー。さすが美少女の虐待フェチ演出が得意なダリオ・アルジェント監督、芸が細かい。

スージーのタクシー乗車場面で本物の幽霊が写り込む?

サスペリア(1977年)の本物の幽霊が写ってると当時話題になったイメージ。監督の演出である。
サスペリア(1977年)の本物の幽霊が写ってると当時話題になったイメージ。監督の演出である。

バレリーナ志望のスージー・バニヨン(演:ジェシカ・ハーパー)は、ドイツにあるバレエの名門校に入学するために、ニューヨークからやって来た。空港でようやく拾うことができたタクシーに乗ってスージーは学校に向かう。

スージーがタクシーの運転手に目的地(「エッシャー通りまで」と行先)を告げるが、スージーの発音が悪いのか全然通じない。しかたがないのでスージーは、目的地を書面で伝えた。その時に運転手の後頭部の襟元辺り(のタクシーの仕切り窓)に苦しみ叫んでいる男の顔が写り込んでいる。70年代のオカルトブームの流れで当時人気があったオカルト番組やテレビ心霊番組で「本物の幽霊」が写っているとして取り上げられた。勿論、本物の幽霊ではなく、ダリオ・アルジェント監督が意図的に仕込んだネタである。

謎のメッセージを残して走り去るパット(パトリシア)

突然、玄関の扉が開き、パットが飛び出してきて叫ぶ「秘密(が分かったわ。)扉の影(で見たの!)アイリス(が3つ。)青いの(を回すのよ!)」(実は、サラに対するメッセージ)
突然、玄関の扉が開き、パットが飛び出してきて叫ぶ「秘密・・・アイリス・・・青いの・・・」(実は、サラに向けたメッセージ「秘密が分かったわ。扉の影で見たの!アイリスが3つ。青いのを回すのよ!」)

激しい雨の中到着したバレエ学院はスタイリッシュな赤い館。そしてその建物の玄関では、若い生徒であるパットが何者かに追われているかのように怯え、何か叫んでいた。

秘密のドア、アイリス、青いの……。」(「秘密が分かったわ。扉の影で見たの!アイリスが3つ。青いのを回すのよ!」(原文「The secret I saw behind the door—three irises, turn the blue one!」))とパットは言っているのだが、真相に迫っていないこの段階では半端にしか聞き取れていない演出になっている。

この謎のメッセージは、終盤で大きな意味を持つ。

学園の玄関にて、中に入れてもらえないスージー

学校の中に入れてもらえないスージー。受付の声の主は誰なのか?一体、どうなっているのか?
学校の中に入れてもらえないスージー。受付の声の主は誰なのか?一体、どうなっているのか?不安でいっぱいになるスージーであった。

インターホーン越しに話をするスージー「スージー・バニヨンです。今、ニューヨークから着いたんですけど」
声(実はサラ)「知らないわ。帰って」
スージー「手紙も持ってます。ひどい雨なの、入れて下さい。そうすれぱ・・・」
声(実はサラ)「帰りなさい。帰って」

学園の玄関に到着したスージーがインターフォン越しに、いくら頼み込んでも一向にとり合ってくれない。一体どういうことなのか。雨の中で全身ずぶ濡れになったスージーは、しかたなく、待たせておいたタクシーに戻る。雨の中、林の中を1人駆け抜けていく先ほど走り去った女性(パット)。さっきの女性だ、車の中からそれを見つめるスージー。

後日、スージーとサラが二人で水泳をしているシーンで、サラが、スージーがバレエ学園を訪問した初日の玄関にてインターフォンの応対をしたのは、自分だと告白した。あの時、サラとパットは学園の謎について、玄関付近で深刻な内容の会話をしており、スージーが突然訪れたことにビックリして、精神的に不安定であったパットは気が動転して玄関から飛び出していったのだった。

魔女の秘密を知りすぎたパットが殺される「パットの首吊り処刑」

友達の住むアパートに逃げ込んだパット(パトリシア)

友達のところに来ても不安な気持ちでいっぱい。
バレエ学校から逃げ出したパットは、友達の住むアパートに逃げ込んだ。友人のところに来ても不安な気持ちでいっぱい。不安のために窓から外の様子を伺う。魔女たちがまるでサバトをやっている最中(呪いをかけている)かのような囁き声、唸り声が混ざった不吉な恐怖音楽がBGMとして炸裂している。魔女が囁くようなコーラスが恐ろしく夜一人では聞けないほど。
暗闇の中に光る眼が・・・
カーテンのない窓の外に広がる暗闇の中に光る眼が、パットを覗き込む・・・パットのことを追っかけてきた謎の殺人鬼。悲鳴を上げるパット。
カーテンのない窓からガラスを突き破って毛むくじゃらの腕が襲う。
突然、カーテンのない窓からガラスを突き破って毛むくじゃらの腕がパットを襲う。衝撃的な展開。人間とは思えない何かに襲われるパット。「キャリー」(1976年)の衝撃のラストの墓場から血みどろの腕が飛び出すシーンも思い出させられる。

魔女の使い魔にめった刺しにされるパット

パットやサラを殺した犯人は映画では明かされないが、「魔女の使い魔」の可能性が高い。
パットやサラを殺した犯人は映画では明かされないが、「魔女の使い魔」の可能性が高い。謎の刺客に執拗にナイフで何度も何度も刺される。美女がサディスティックに痛めつけられるのは、いかにもジャッロ・ジャーロ映画の巨匠であるダリオ・アルジェント監督の演出。
胸元を引き裂かれ、露見した心臓を突き刺す。
胸元を引き裂かれ、露見した心臓を何度も突き刺す。かなり執拗な殺害方法。この殺人者は一体何者なのか・・・。

「パットの首吊り処刑」は、最大の見せ場のひとつ。映画史に残る残酷美を極めた殺人描写・魔女のメッセージも。

パット(パトリシア)は、バレエ学校の「青いアイリス」の秘密を知ったばかりに、魔女の使い魔にめった刺しにされて「首吊り処刑」される。
パット(パトリシア)は、バレエ学校の「青いアイリス」の秘密を知ったばかりに、魔女の使い魔にめった刺しにされて「首吊り処刑」される。魔女の使い魔と思われる謎の殺人鬼は、絶命寸前のパットの体にロープを回すと天井のステンドグラスから突き落とす。パットの死体は天井のガラスを突き破って首吊り状態になった。
ホラー映画史に残るショックシーン
「オーメン」(1976年)の首吊りシーン同様に、ホラー映画史に残る「サスペリア」の最初の殺人ショックシーン「首吊り死体となったパット」。序盤の最大の見せ場。絶世の美女、美少女が美しくも無残に殺されていくのが70年代のイタリアンホラー/ジャッロ映画の特徴。サスペリアは、現代に潜む魔女を題材としたオカルト映画だが、文法的にはイタリアのジャッロ映画の延長上にある作品。
パットから滴る鮮血によって箒に乗った魔女を描いている。魔女の呪いを示す見立て殺人的な残酷アート。
天井のステンドグラスをぶち破って首吊り死体になったパットから滴る鮮血によって「箒に乗った魔女」を描いている。魔女の呪いを示す見立て殺人的な血だまりの残酷アート。
パットの悲鳴を聞きつけて駆けつけた友人のソニアも、不運な惨死の道づれとなって鮮血に染まった。
パットの悲鳴を聞きつけて駆けつけた友人のソニアも、壊れたステンドグラスの破片を浴びて、不運な惨死の道づれとなって鮮血に染まった。
顔面に割れたステンドグラスの破片が突き刺さり、さらに鉄柱が首と下腹部を貫いている。
ソニアの顔面に割れたステンドグラスの破片が深々と突き刺さり、さらに鉄柱が首と下腹部を貫いている。当時のオカルト映画としては、屈指の残酷なスプラッター描写。サスペリアは、不条理なまでに美しい美少女ヒロインたちをサディスティックに痛めつける。

学園生活が始まるが、連続する不可解な変死や怪異を不審に思うスージー

小間使いのおばさんが、手に持っている三角形の金属が発射する謎の怪光線を受けてスージーは具合が悪くなる。おばさんの脇に立つ少年が不敵に笑っているのも不気味。
怪しさ満点の小間使いのおばさんが、手に持っている三角形の金属が発射する謎の怪光線(まばゆい閃光)を受けてスージーは具合が悪くなる。おばさんの脇に立つ少年が不敵に笑っているのも不気味。まさに謎の閃光。登場する人物が怪しいものばかりである。ダリオ・アルジェント監督は、視覚的なインパクトを優先させた意味不明、不条理な不気味さの恐怖演出が上手い(「サスペリアPART2」のビックリ笑い人形のような意味不明だが妙に恐ろしい演出)。
スージーは、レッスン初日に具合が悪い。実力を見せるようにと踊らさせられるが、倒れてしまう。
スージーは、レッスン初日に具合が悪くなる。実力を見せるようにと無理やり踊らさせられるが、鼻血を出して倒れてしまう。あまりにも怪しすぎる学校。少女マンガの清純派の主人公のような鼻血を出す美少女スージーの前途は多難である。
突然身体が不調となったスージーは、途中で床に倒れこんだ。校医の診察を受けたスージーは、増血のためとして葡萄酒を食事に加えられる。
突然身体が不調となったスージーは、途中で床に倒れこんだ。校医の診察を受けたスージーは、増血のためとして葡萄酒を食事に加えられる。注射も打たれる。

二人の犠牲者を出した翌日、スージーの学園生活が始まる。学園には、海外旅行中という女理事長代理のマダム・ブランク、厳格な主任教師のタナー女史、盲導犬に引かれる盲目のピアニストのダニエル、ルーマニア人の下男パブロ、マダムの甥で9歳になるアルバート少年等がいた。スージーは、優秀な成績を認められての入学だったが、初日のレッスンで貧血になり倒れる。小間使いのおばさんの謎の閃光を受けたのが原因と思われる。赤ワイン付きの特別食で療養することになる。ここに来てから変なことばかり・・・。何か盛られているのか、夜は起きていられない。

寄宿舎では大量の蛆が発生。天井から蛆がワラワラと落ちてくるトラウマシーン。
寄宿舎では大量の蛆が発生。天井から蛆がワラワラと落ちてくるトラウマシーン。
屋根裏に保管してある食品に蛆が湧いて、皆の部屋の天井から蛆が落ちる事件が起きた。魔女の棲む館の周辺は甘い匂いの瘴気により腐敗が加速度的に進むのが原因のようだ。
屋根裏に保管してある食品に蛆が湧いて、寄宿舎の各自の部屋の天井から蛆が降り注ぐ事件が起きた。魔女の棲む館の周辺は甘い匂いの瘴気により腐敗が加速度的に進むのが原因のようだ。
鬼教師に罵られて、学園を追い出された盲目のピアニストは、盲導犬にかみ殺される。
鬼教師に罵られて、学園を追い出された盲目のピアニストは、盲導犬にかみ殺される。この殺害現場はナチスの党本部があったケーニヒス広場であり、魔女・魔術とナチズムを結び付けたイメージ作りをしている。敵はおとなしい盲導犬さえも操る強力な魔力・霊力を持っている。

学園の謎解きをパットから引き継いだサラにも危険が迫る「針金地獄」

すぐに眠くなるスージー

スージーの食事やワインに何か一服盛られているのか、スージーは眠気に襲われる。
スージーの食事やワインに何か一服盛られているのか、尋常ではないレベルで、スージーは眠気に襲われる。寄宿舎付きの学校なので、女子寮生活において、いろいろな生徒(魔女学園なので拝金主義の生徒が多い。)の思惑や夢や不安や好奇心が絡み合う学園青春・思春期ホラーとしても楽しめる。ダリオ・アルジェント監督は、「フェノミナ」のように美少女がサディスティックに虐待される、ひどい目に合う物語が多い。眠りに落ちたスージーの助けは得られない。サラに危険が迫る。

針金地獄に落ちたサラが殺害される(サラがいなくなる)

謎の殺人者に追われるサラは、屋根裏で針金地獄の罠に落ちる。もがくほどに肌に食い込む針金地獄。
謎の殺人者に追われるサラは、屋根裏で針金地獄の罠に落ちる。もがくほどに肌に食い込む針金地獄。痛々しい。70年代のサスペリア放映当時は、(最近はあまり見ない)バリ線(有刺鉄線)を至る所で見かけた時代。

呪われたバレエ学校の秘密に感付いたパットと親しかったサラが、その秘密をパットから受け継いでしまったために狙われてしまった。

謎の殺人鬼(おそらく魔女の使い魔)は、サラの首筋を切り裂く。痛さを感じる残酷なゴアシーン。
謎の殺人鬼(おそらく魔女の使い魔)は、サラの首筋(喉)をカミソリで切り裂く。痛さを感じる残酷なゴアシーン。
サラは、魔女の使い魔に追われ、針金地獄に追い詰められて、喉をカミソリで切り裂かれて惨殺された。
サラは、魔女の使い魔に追われ、針金地獄に追い詰められて、喉をカミソリで切り裂かれて惨殺された。

魔女の館の謎・迷宮に挑むスージー。諸悪の根源である「エレナ・マルコス」(溜息の母)との戦い。

魔女との対決に挑む前に喫煙するスージー。スージーは秘密を暴く決意をする。

最後の決戦を前にして、まずは、タバコを吸って気持ちを落ち着かせるスージー。タバコではなく大麻かもしれない。
サラの紹介であったサラの主治医でありボーイフレンドの「精神科医」と魔女のことに詳しい「オカルト学者」から学校の歴史と魔女(初代校長のエレナ・マルコス)についての話を聞いたスージーは、学校の秘密を暴く決心をする。魔女との最後の決戦を前にして、まずは、タバコ(大麻?)を吸って気持ちを落ち着かせるスージー。覚醒した状態で魔女と戦うために、タバコではなく大麻を吸っているという説も。

夜ごとに響く教師たちの靴音は突然消えてしまう。なぜなのか?

部屋に戻ると、急いで煙草に火をつけ吸い込むスージー。雨が窓を叩いている。足音。足音が聞こえる。サラの置いていった紙きれを手にするスージー。その間も足音は続いている。思いをこらすスージー。

「あの人たちは学校を出てないわ。玄関は左にあるはずなのに、足音は右に2、3、4、5、6、7。足音を数えれば行く先がわかるに違いない。…20」左から右へ移動する足音。手にサラのノートを持って、そっと廊下に忍び出るスージー。人気のない赤い廊下を静かにたどって行く。突き当たりのドアを開ける。雷鳴!黄色の部屋だ。壁に沿って数えながら歩いていくスージー。副校長の部屋(応接間)に入ってくるスージー。足元を見ると、高価なじゅうたん。

アールヌーボーな応接間には、夜な夜な魔女が集く隠し部屋へ続く「秘密の扉」が隠されている。
豪華絢爛なアールヌーボー調の応接間には、夜な夜な魔女が集く「隠し部屋」(魔女の隠れ家)へ続く「秘密の扉」が隠されている。

「じゅうたんだわ。それで足音が消えてしまったのね。でも、ここから他へ行く道がないと、おかしいわ」まわりを見回すスージー。

魔女たちが集う「隠し部屋」へ通じる「秘密の扉」はどこに?

鏡に映るアイリスを見て、スージーの頭に、初めの夜に見たパットの姿と声がよみがえってくる。
鏡に映るアイリスを見て、スージーの頭に、初めの夜に見たパットの姿と声がよみがえってくる。鏡に重要な要素(真実)が映る映像トリックは、「サスペリアPART2」の有名な鏡のトリックのオマージュ。「サスペリア」のモチーフのひとつである「白雪姫」の「真実を告げる鏡」のオマージュでもあるだろう。サイコサスペンス作品だと、「目に見えるものが虚像」で、「鏡に映るものが真実」という映像トリック・表現技巧はよく使われる。
パット「秘密が分かったわ。扉の影で見たの!アイリスが3つ。青いのを回すのよ!」
冒頭のパットのこのセリフ「秘密が分かったわ。扉の影で見たの!アイリスが3つ。青いのを回すのよ!」(原文「The secret I saw behind the door—three irises, turn the blue one!」)は、秘密の扉のありかだった。青いアイリスを回せ!
青いアイリスを動かすスージー。
青いアイリス」を動かすスージー。青いアイリスを左側に回すと秘密の扉が開いた。
青いアイリスが秘密の扉の鍵だった。秘密の扉が開いた!
「青いアイリス」の仕掛けが、魔女たちが夜ごとに集う隠し部屋(秘密部屋)へ通じる「秘密の扉」の鍵だった。とうとう秘密の扉が開いた!

突き当たりの部屋から光と人影が見えて来た。覗き込むとそこにはブランク夫人やタナー女史、下男のパブロやアルバート少年がおり、何やら儀式をしている。

ドイツにあるバレエ学校は、魔女の巣窟だったのだ。
ドイツにある名門のバレエ学校は、魔女の隠れ家、魔女の巣窟だったのだ。サスペリアとは魔女学園の物語だった。魔女たちは、邪魔な人間に病や苦痛を与えて死に至らしめる。

タナー「あのアメリカ娘は厄介者ですよ」
ブランシュ「だから言ったでしょ。あのアメリカの小娘を早いとこ始末しておけばよかったんだ!消すんだ、この世からあとかたもなく消えてしまえばいい!やっておしまい、いいね」
タナー「今夜は何も飲み食いしていません」
ブランシュ「だから消すんだ。あの女は、死ねばいい、死ねばいい、死ねばいい。エレナ、力を、お与え下さい!病いよ、病いよ、あの女を連れ去れ、災いとともに。死よ、死よ、死よ」

サラの無残な遺体

昆虫採集では、コレクションの虫にピンを刺して固定するように、魔女の生贄になったサラの目には、ピンが刺さっている。両腕の手首にも杭のようなものが刺さっている。彼女はエレナの黒魔術で操られてしまう。
昆虫採集では、コレクションの虫にピンを刺して固定する。昆虫採集の昆虫のように、魔女の生贄になったサラの両目には、ピンが刺さっている。両腕の手首にも杭のようなものが刺さっている。このあと、サラはエレナの黒魔術で操られてしまう。

恐怖で後ずさったスージーは何かにぶつかり振り返る。そこにあったのは、サラの無残な遺体だった。

エレナ・マルコス(溜息の母)の部屋

サラは別の部屋に入った。そこはエレナ・マルコス(溜息の母)の部屋だった。恐ろしいいびき声がする。エレナ・マルコス(溜息の母)は、いびきをかいて寝ていた。
サラは別の部屋に入った。そこはエレナ・マルコス(溜息の母)の部屋だった。恐ろしいいびき声がする。エレナ・マルコス(溜息の母)は、いびきをかいて寝ていた。
エレナ・マルコス(溜息の母)がカーテン越しのベッドにいた。
エレナ・マルコス(溜息の母)がカーテン越しのベッドにいた。エレナ「ふふふ、アメリカ女だね?来ると思ったよ!」

エレナ・マルコス「だれだ?そこにいるのはだれなんだ?ああ、待っていたよ。アメリカから来た娘だね。いつかはここに来ると思ってた。このエレナ・マルコスを殺したいのか?このエレナ・マルコスをかんたんに殺せるとでも思っているのか?お前のようなものに簡単に殺せるぐらいなら、きょうまで140年も、こうして生きちゃあこられなかったろうよ。呪ってやる!呪ってやる、お前を呪ってやる、呪ってやる。さ、お前に死が近づいているんだよ。怖いか?お前はこのへレナ・マルコスを殺したいんだろう!地獄は裏のうしろだよ。さあ、死に会うんだ。今だ。生きながらの死に会わせてやる」

エレナの嘲笑と共に突然、サラの死体が動きだし、スージーに向かって襲い掛かってきた。絶体絶命のピンチ。
エレナの嘲笑と共に突然、サラの死体(リビングデッド・ゾンビ)が動きだし、スージーに向かって襲い掛かってきた。絶体絶命のピンチ。
雷の光がエレナ・マルコスの透明な身体を光で浮かび上がらせた。
雷の光がエレナ・マルコスの透明な身体(声は聞こえるが目には見えない)を光で浮かび上がらせた。スージーを甘く見ており、完全に油断をしすぎているエレナ。
(パーワーストーン的には魔除け・浄化効果があるとされる)クリスタル(水晶)製孔雀の置物の羽根を振りかざすスージー。
(パーワーストーン的には魔除け・浄化効果があるとされる)「クリスタル(水晶)製孔雀の置物の羽根」をエレナ・マルコスに向けて振りかざすスージー。
ダリオ・アルジェントの監督デビュー作品である『歓びの毒牙』( 原題:L'uccello dalle piume di cristallo)の原題の意味は、「水晶の羽を持った鳥」。クジャクのような鳥の羽が広がっている姿が描かれた作品のキービジュアル。スージーのマルコスを倒すための武器となったクジャクの羽はこの作品のオマージュであろう。
ダリオ・アルジェントの監督デビュー作品である『歓びの毒牙』( 原題:L’uccello dalle piume di cristallo)の原題の意味は、「水晶の羽を持った鳥」。クジャクのような鳥の羽が広がっている姿が描かれた作品のキービジュアル。スージーのマルコスを倒すための武器となったクジャクの羽はこの作品のオマージュであろう。

ダリオ・アルジェントの監督デビュー作品である『歓びの毒牙』( 原題:L’uccello dalle piume di cristallo)の原題の意味は、「水晶の羽を持った鳥」という意味であり、スージーが手に持った「(おそらく水晶の)孔雀の羽」の武器は、まさにデビュー作の(原題の)オマージュであろう。

クリスタル製のクジャクの羽が透明な姿のエレナの首辺りに刺さる。手ごたえあり!
クリスタル製のクジャクの羽が透明な姿のエレナの首辺りに刺さる。手ごたえあり!
クリスタル製のクジャクの羽が首に刺さると、エレナの素顔が浮き上がってくる
クリスタル製のクジャクの羽が首に刺さると、苦悶の表情を浮かべるエレナの素顔が浮き上がってくる。エレナは悲鳴を上げる「ぎゃああーーー」。
抵抗するマルコスの喉を完全に突き刺すスージー。不気味なグロテスクすぎるエレナ・マルコスの素顔が明らかになる。マルコスの素顔のアップに客席から悲鳴が上がる。
抵抗するエレナ・マルコスの喉を完全に突き刺すスージー。不気味なグロテスクすぎるエレナ・マルコスの素顔が明らかになる。マルコスの素顔の大アップに客席から悲鳴が上がる。気持ちが悪すぎる。
エレナ・マルコスは完全に死んだ。彼女の死とともに魔女の館が崩れはじめる。
エレナ・マルコスは完全に死んだ。彼女の死とともに魔女の館が崩れはじめる。恐ろしいポルターガイスト現象が起こり、館は破壊されていく。あっさりとやられたエレナ。姿なき傀儡(使い魔)や猛犬を操る凄惨な殺人技巧に比べて、スージーに呆気なく倒された拍子抜けの結末は、本作の弱点として度々指摘される。

ラストシーン、微笑むスージー。謎の微笑。

ラスボスのエレナ・マルコスが死亡すると、魔女の館は崩壊し、悪の一味も全滅する。
ラスボスのエレナ・マルコスが死亡すると、魔女の館は崩壊し、なんと悪の一味も、一蓮托生なのか、あっさりと全滅する。敵の滅び方があっさり過ぎるかもしれない。
若いアメリカ娘が、邪悪な欧州の魔女を滅ぼしてしまった。スージーが魔女の館から飛び出し、微笑む場面がミステリアスだと話題になった。
若いアメリカ娘のスージーが、邪悪な欧州の魔女一味を滅ぼしてしまった。激しい雨のなか、スージーが魔女の館から飛び出し、微笑む場面がミステリアスだと話題になった。謎の微笑は、魔性が取り憑いたという説、大麻で覚醒しすぎてラリっている(陶酔している)という説もある。後述するサスペリアのリメイク版(2018年)では、スージーの正体は、とんでもないことになっている(魔女・嘆きの母として目覚める)。

ミステリー映画の記念碑的な古典・ジャッロの名作「サスペリアPART2」

「サスペリア」の大ヒットという都合で、続編にされた傑作殺人映画「サスペリアPART2」

究極のジャッロ映画、映画史に残る傑作ミステリーとも評される傑作殺人映画「サスペリアPART2」(1975年)は、オカルト映画の金字塔「サスペリア」(1977年)以前に作られた映画だが、日本では大ヒットした「サスペリア」の続編として劇場公開された。

「サスペリアPART2」(原題:Profondo Rosso、英題:Deep Red)と「サスペリア」には内容的なつながりは全くないが、「サスペリアPART2」は、鮮血(残酷描写)とエロス(性描写)の美学を追求する「ジャッロ映画」と悪魔と邪教を題材とした「オカルト映画」の境界線上にある作品であり、「サスペリア」の雛形・源流であるのは間違いない。


【映画のトラウマシーン】「サスペリアPART2」 ビックリ笑い人形が脈絡なく走って来る。一度見ると忘れられないトラウマ映像。どうやって動いていたのか?全くの謎。

『サスペリアPART2』は、ホラー的な要素を巧みに取り入れたサスペンス映画の最高傑作。スラッシャー映画の源流のひとつ。『サスペリアPART2』は殺人などの残酷描写を主眼とするサスペンス・スリラー映画=「ジャーロ映画」の代表作であり、アルジェント映画の最高傑作と讃えるファンも多数いる作品。

『サスペリアPART2』の最初の惨劇のシーン。窓ガラスにガチャンと顔を叩きつける残酷殺人。切れ味のあるスプラッター描写になっている。
『サスペリアPART2』の最初の惨劇のシーン。殺人鬼は、かなり大型の肉切り包丁でヘルガを切りつけて、とどめに窓ガラスにガチャンと顔を叩きつける残酷な殺人描写。切れ味のあるスプラッター描写になっている。

ローマで開催された欧州超心霊学会で、超能力を持つヘルガが突然錯乱した。彼女は、かつて残虐な殺人を犯した人間が会場内にいると宣言する。その後、部屋に戻ったヘルガは何者かに惨殺される。偶然その瞬間を目撃したイリギス人のピアニスト、マークは、コートの男が逃げてゆく姿を目撃する。彼は女性記者のジャンナとともに事件の謎を解こうとする。

(実は最初の冒頭のシーンを描いている)気味の悪い子供の絵。ホラー要素満載の極上のミステリーになっている。
(実は最初の冒頭のシーン「クリスマスの惨劇」を描いている)気味の悪い子供の絵。この絵を描いたのは、主人公マークの友人であるカルロであることが終盤でわかる。ホラー要素満載の極上のミステリーになっている。父親を殺害したのは子供であることを示しているような絵だが、実際には母親が殺し、子供は血みどろのナイフを拾っただけというのが真相(描写内容の主体は、信頼できる語り手ではないので、この真相も全くの逆の可能性はある)。

マークは「現代の幽霊伝説」を詳しく調べ、書籍から勝手にちぎり取った写真から怪奇現象の起こった屋敷(カルロたちが住んでいた屋敷であることが後にわかる)を見つけ出す。その屋敷こそ、クリスマスの惨劇の現場があった屋敷であった。屋敷のある部屋の壁に上図の不気味な絵が描かれているのをマークが発見した。この屋敷には隠し部屋が存在し、そこがクリスマスの惨劇の舞台であり、カルロの父親の死体も残っていた。マークは、学校に蔵書されていた目的の絵をとうとう発見し、絵に記されていた署名からこの絵を描いた張本人は友人のカルロであることを知る。

マークは捜査によって、クリスマスの惨劇の現場=隠し部屋のからくりを見破った。隠し部屋には、すでに白骨化している父親の死体が残っていた。
マークは捜査によって、クリスマスの惨劇の現場=隠し部屋のからくりを見破った。隠し部屋には、すでに白骨化している父親の死体(ミイラ)が残っていた。カルロの母は精神を病んでいた。あのクリスマスの夜、精神病院に入れと勧める父に反発してカルロの母は、カルロの目の前で父を殺したのだった。

しかし、最初のヘルガ殺害事件が起きた時、カルロはマークと一緒にいたため、カルロは真犯人ではなく(真犯人をかばう)共犯者であった。屋敷でマークを殴って気を失わせて(真犯人だったらマークを殺しているだろう)、屋敷に火を放って(隠し部屋と父親の死体などの)証拠隠滅をしたのはカルロだろう。学校でジャンナを刺したのもカルロだろう。そのカルロは逃走の際に、まるでオーメンのダミアンの呪いのような交通事故で死亡する。カルロの顔面が後続の車にひかれて大破壊される壮絶な死に方だった。さすが残酷美の巨匠アルジェント。

真犯人の目がアップで映し出される印象的なシーン。犯人は、女性?もしくは女装した男性?と匂わす演出でもある。主人公マークの知人のカルロが実はゲイであり、カルロのゲイパートナーも登場している。真犯人がゲイ関係者とミスリードさせる狙いもあっただろう。
真犯人の目がアップで映し出される印象的なシーン。犯人は、女性?もしくは女装した男性(ゲイ関係)?と匂わす演出でもある。主人公マークの知人のカルロが実はゲイであり、カルロのゲイパートナーも登場している。明らかに真犯人がゲイ関係者とミスリードさせる狙いもあっただろう。
1965年のイギリスのサイコホラー映画の傑作『反撥』(はんぱつ、Repulsion)の有名な冒頭シーンのカトリーヌ・ドヌーヴの目のアップ。
1965年のイギリスのサイコホラー映画の傑作『反撥』(はんぱつ、Repulsion)の有名な冒頭シーンのカトリーヌ・ドヌーヴの目のアップ。

1965年のイギリスのサイコホラー映画の傑作『反撥』(はんぱつ、Repulsion)は、カトリーヌ・ドヌーヴの目のアップで始まり、目のアップで終わることで、有名だが、以降、サイコスリラー系作品の演出で、思わせぶりな演出として、真犯人の狂気を印象的に描く手段として流行する。

映画史に残る驚愕の映像トリック(犯人が映っていた鏡)

実は物語の序盤で大胆にも犯人が一瞬映りこんでいる。異様な絵が多く飾られた廊下にある鏡には、実は犯人が映っていた。超有名なネタとして語り継がれている。
実は物語の序盤で大胆にも犯人が一瞬映りこんでいる。異様な絵が多く飾られた廊下にある鏡には、実は犯人が映っていた。超有名なネタとして語り継がれている。物語のクライマックスにて、主人公マークの友人であるカルロの元女優の母親が真犯人だった。

カルロの元女優の母親が真犯人。彼女は精神を病んでいて、数十年前に自分の夫を殺害する。それを幼いカルロが目撃していたのです。それが冒頭で描かれたクリスマスの惨劇。

カルロの母親は、「あの子は何も罪を犯していない、私をかばおうとしただけ」と言いマークを殺そうとして、肉切り包丁を振り下ろして襲い掛かってくる。

「重要なものを見ているのにもかかわらず見過ごしている」という監督の初監督作品『歓びの毒牙』のオマージュとされる映像トリック。マークは、あの時見たのは絵ではなく、犯人が映った鏡だったことに気付く。
「重要なものを見ているのにもかかわらず見過ごしている」という監督の初監督作品『歓びの毒牙』のオマージュとされる映像トリック。序盤でのマークの台詞「入るときにはあった絵が出るときには消えていたんだ」は思い込みの勘違いであり、マークは、あの時見たのは絵ではなく、カルロの母親=犯人が映った鏡だったことに気付く。視覚的インパクトを重視するアルジェント監督の美学が反映した最高の映像トリック。一瞬の出来事の描写に細かくこだわることで、革新的な芸術をもたらす。

映画史に残る印象的な殺人方法「ネックレスで首チョンパ」

カルロの母親の映画史に残る壮絶な最期。ネックレスがエレベータにひっかかり、首が切断される。映画史に残る残酷なショックシーンとして語り草になっている。
主人公マークの友人であるカルロの母親の映画史に残る壮絶な最期。ネックレスがエレベータにひっかかり、首が切断される。映画史に残る残酷なショックシーンとして語り草になっている。ネックレスで首チョンパ。口から白い液体も吐き出していた。ミステリー史に残る酷い死に方と評される。
血生臭い残酷描写が売りのジャッロの最高傑作と言われるだけに、殺害方法も斬新であり一度見たら忘れられないスプラッター描写になっている。
『サスペリアPART2』は、血生臭い残酷描写が売りのジャッロの最高傑作と言われるだけに、ネックレスで「首チョンパ」という殺害方法も斬新であり一度見たら忘れられないスプラッター描写になっている。
ラストシーンは、首チョンパされたカルロの母親が流した血だまりに映る放心状態のマークの顔。
ラストシーンは、首チョンパされた真犯人であるカルロの母親が流した血だまりに映る放心状態のマークの顔。かなりシュールでアートな残酷美で終わる終幕。『サスペリアPART2』の原題の「Profondo Rosso」は、「赤い深淵」といった意味なので、原題通りのラストシーンとも言える。


『サスペリア2 – 赤い深淵』 – Profondo Rosso (1975年) 映画『サスペリアPART2』サントラ

ゴブリンは、初めのうちはチェリー・ファイヴと名乗っていたが、『サスペリアPART2』の映画音楽を作曲するために呼ばれ、バンド名をゴブリンに変え、ジョルジオ・ガスリーニによって書かれた有名なメイン・テーマを含むオリジナルの譜面の多くを書き直した。1975年、『サスペリアPART2』のサウンドトラック・アルバムは爆発的なヒットを記録する。

サスペリア3部作(魔女3部作)

サスペリアの「嘆きの母」、インフェルノの「暗闇の母」、テルザの「涙の母」の「三人の母」(魔女三部作)

「サスペリア」(1977年)の劇中では謎のままだった魔女の正体は、次回作の『インフェルノ』や『サスペリア・テルザ 最後の魔女』にて、エレナ・マルコスが三姉妹の魔女の一人である「溜息の母(インフェルノでは嘆きの母)」である事が明かされた。

インフェルノ(1980年)

『インフェルノ』(原題:Inferno)は、映画『サスペリア』で成功を収めたイタリアの映画監督ダリオ・アルジェントによる1980年の魔女を題材としたオカルトホラー映画。『サスペリア』に続く「魔女3部作」の2作目とされる。世界を闇から支配する恐るべき魔女「三人の母」、二人目はニューヨークにいた。

「インフェルノ」のクライマックスで突如、その正体を現す「暗闇の母」。
「インフェルノ」のクライマックスで突如、その正体を現す「暗闇の母」。その正体は、死神の姿だった。

<ストーリー>
舞台は、ニューヨーク。若い女流詩人のローズは、骨董屋で手に入れた「三母神」という古書の記述から、自分が住んでいる古いゴシック建築のアパートに強い興味を持つ。「三母神」は、何世紀か前に建築家で錬金術師のバレリが書いた日記で、彼は3人の魔女のために3つの館を建てたという。〝ため息の母〟はドイツに、〝涙の母〟はローマに、〝暗黒の母〟はニューヨークに、それぞれ館があり、ニューヨークの館に今ローズが住んでいるらしいのだ。ローズはこの事実をローマで音楽を学んでいる弟マークに手紙で知らせた。しかし、その後ローズは、何者かに首を切断されて惨殺される。急いでニューヨークに駆けつけたマークだが、本に関わった人物が彼の身辺で次々と殺されていく。やがて、彼は本の中にある「第3の鍵は君の靴底の下に」というキーワードを解き、床を掘り起こして秘密の通路を発見する。その行く手に待ち受けていたものは—–。
『サスペリア』の鬼才ダリオ・アルジェント監督が、ハリウッド資本の協力を得てフルスケールで製作したショッキング・ホラー大作。『サスペリア』、そして最新作であり完結篇の『LA TERZA MADRE』とともに“魔女三部作”としてアルジェントのライフワーク的作品として位置づけられる傑作だ。

サスペリア・テルザ 最後の魔女(2007年)

「三人の母」は、サスペリアでは高齢化したおばさん、インフェルノでは髑髏と異様な正体で視聴者を驚かしてきたが、「涙の母」は、若く美人でエロティックだった。
「三人の母」は、「サスペリア」では高齢化したおばさん、「インフェルノ」では髑髏と異様な正体で視聴者を驚かしてきたが、「サスペリア・テルザ 最後の魔女」の「涙の母」は、若く美人でエロティックだった。

『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(伊: La Terza madre、英: The Mother of Tears)は、2007年にイタリアとアメリカが製作したホラー映画。『サスペリア』、『インフェルノ』に続く、魔女3部作の完結編。

魔女の時代の到来を祝う宴は、最高潮の盛り上がり。世界中から集まった魔女たちが、祭壇を練り歩く「涙の母」に狂乱する。禍々しい「サバト」(魔女あるいは悪魔崇拝の集会)が描かれる。
魔女の時代の到来を祝う宴は、最高潮の盛り上がり。世界中から集まった魔女たちが、祭壇を練り歩く「涙の母」に狂乱する。禍々しい「サバト」シーン(魔女あるいは悪魔崇拝の集会)が描かれる。


『サスぺリア・テルザ 最後の魔女』予告編

[STORY]美しき最強・最後の魔女”涙の母”-その呪いが、世界の終わりを告げる!
イタリア北部、ヴィテルボの町。墓地脇の工事現場から土中深く埋葬された19世紀の柩と遺品入れが発見された。柩に刻まれた名は、オスカー・デ・ラ・バレー。忌まわしい伝説の幕開けだったーローマの古代美術博物館で考古学の研究を続けるサラ(アーシア・アルジェント)は、恋人でもある館長のマイケル(アダム・ジェームズ)が不在の間に、副館長のジゼルに誘われてオスカーの遺品入れを開けてしまう。そこには闇の彼方に葬られた邪悪な魔女、”涙の母”を復活させる不気味な彫像と古代文字を印した法衣が納められていた。封印を解かれ、現代に戻った魔女は手始めにジゼルを惨殺。現場に駆けつけた刑事たちに事情を説明したサラは、逆に不審がられ、異常者ではないかと疑われてしまう。一方、持ち去った法衣をまとい、完全復活を遂げた”涙の母”(モラン・アティアス)はローマに呪いを放ち、その妖力で覆われた町では次々と自殺や殺人、暴動が起きる。遺品入れの秘密を知るサラとマイケルにも魔手が伸び、魔女一味に誘拐された幼い息子ポールで必死で探し回るうち、マイケルは敵の手に落ちてしまう。サラは”涙の母”や魔物たちとの対決に立ち上がる!

サスペリアのリメイク「サスペリア」(2018年)

主人公たちが踊るダンスは、クラシックバレエからコンテンポラリー・ダンスに変更されている。
主人公たちが踊るダンスは、クラシックバレエからコンテンポラリー・ダンスに変更されている。

『サスペリア』(原題:Suspiria)は、2018年制作のアメリカ合衆国・イタリアのホラー映画。ルカ・グァダニーノ監督が巨匠、ダリオ・アルジェント監督の傑作ホラー「サスペリア」(1977年)をリメイク。1970年代のドイツを舞台に、あるバレエ舞踊団の秘密を描く。世界的に有名な舞踏団を支配する闇に、振付師、野心に満ちた若手ダンサー、悲しみを背負った心理療法士らが巻き込まれていく。悪夢にのみ込まれる者もいれば、最後に目覚める者もいる。

スージーが駅に到着すると、左の看板に「サスペリア」(Suspiria)の文字が。作品名を現すだけでなく、スージーの正体が、サスペリアであることを暗示している。
スージー・バニヨン(ダコタ・ジョンソン)が駅に到着すると、左の看板に「サスペリア」(Suspiria)の文字が。遊び心もいっぱい。作品名を現すだけでなく、「スージーの正体が、サスペリアの本質そのもの」であることを暗示している。

魔女の魂を移す器・生贄たち。生きる屍になっていく犠牲者たち(ハイセンスの残酷描写)

マダム・ブランは、ツボ・マッサージ風にスージーの手足に魔術の術式を施している。そして、スージーの殺人ダンスが始まる。
マルコス・ダンス・カンパニーを仕切るマダム・ブラン(ティルダ・スウィントン)とスージーの百合カップルに注目したい。マダム・ブランは、ツボ・マッサージ風にスージーの手足に魔術の術式を施している。そして、驚くべき身体能力を持つスージーの殺人ダンスが始まる。
オルガ(裏切者)は念力で全身をグシャグシャにされる。スージーのダンスに合わせてオルガの骨がどんどん変形し折れていく殺人描写。最大の見せ場。
オルガは念力による拷問処刑で全身をグシャグシャにされる。マダム・ブランがスージーに魔術を送り込み、スージーの激しい動きのダンスの一挙手一投足に合わせてオルガの体も追随して動き、骨がどんどん変形し折れていく超能力的な殺人・拷問処刑描写。革新的な殺害演出になっており、最大の見せ場のひとつ。スージーの殺人ダンスの術は、マダム・ブランによる呪いの藁人形(針を刺したところが痛くなる)のような仕組みの術と思われる。魔女のサディスティックな拷問のような処刑技。
パトリシア(パット)は、オリジナル同様に悲運にみまわれる。最後に、死を望んだパトリシアは、スージーに慈悲の死を与えられる。
パトリシア(パット)は、魔女のことを深く知りすぎてしまった。オリジナル版同様に悲運にみまわれる。ダンス学校の生徒たちは、(永遠に生きながらえるための)魔女の魂を移すための器・生贄であった。おぞましい儀式における生贄・器にする少女は生ける屍として地下へ監禁されていた。クライマックスのサバトのシーンでは、生きる屍となったパトリシアが登場。最後に、死を望んだパトリシアは、スージーに慈悲の死を与えられる。

衝撃のクライマックス。「エレナ・マルコス転生の儀式=サバト」で踊り狂う魔女たち。サスペリアの真の継承者=嘆きの母が現れる。

魔女たちが集う「サバト」も描かれる終盤の展開。
地下の秘密の部屋に魔女たちが集う「サバト」も描かれる終盤のクライマックスの展開。『サスペリア・テルザ 最後の魔女』をオマージュした最大の見せ場になっている。スージーの使い魔と思われる謎の殺人鬼(明らかに人間ではない怪異)による、処刑シーンは圧巻のスプラッシャー描写になっている。敵対する魔女陣営が次々とスージーに殺される血みどろの展開。

リメイク版のサスペリアは、より視覚に訴えるエロスが盛り込まれている。舞踏シーンの赤い紐衣装。スージーのノーブラのタンクトップ姿。エレナ・マルコスの転生の儀式(スージーを器に使う)であるサバトの場面に現れたスージーのシースルー衣装姿。終盤のサバトにおいて裸で踊るダンサーたちの場面など。

想像を絶する展開。新たに誕生したサスペリア=嘆きの母は、邪悪な儀式で傷ついたパトリシアやサラたちに対して、穏やかな死を施す。
想像を絶する展開。新たに誕生したサスペリアの真の継承者=嘆きの母は、邪悪な儀式で傷ついたパトリシアやサラたちに対して、穏やかな死を施す。エレナ・マルコスは、オリジナル版より不気味な姿になっている。
嘆きの母の使い魔は、マルコス派を粛正する。マスコス支持層の魔女の上半身を一人残らず吹き飛ばして処刑していく。
日本のJホラーの影響を多大に受けていると思われるマザー・サスペリオルム(嘆きの母)の使い魔は、マルコス派を粛正する。マスコス支持層の魔女の体を一人残らず吹き飛ばして処刑していく。過激なスプラッター描写になっている。
衝撃のラスト。魔女の使い魔、スージーの正体が明かされる。2018年版「サスペリア」は百合映画かもしれない。百合指数が高い。
衝撃のラスト。魔女の使い魔の姿、敵対勢力をあっという間に滅ぼすスージーの正体が明かされる。マダム・ブランとスージーの百合関係を中心に、2018年版「サスペリア」は傑作の百合映画になっているかもしれない。全編にわたって百合指数が高い。人類の敵になってしまったスージー。ただ悪い魔女ではなく、善い魔女のようです。無駄な殺生はしないのでしょうか?


【公式】『サスぺリア』2019年1月25日(金)公開/本予告
バレエ名門校にやってきたアメリカ人ヒロインが体験する、寄宿舎で起こる奇怪な現象や殺人を描いたイタリアのホラー・サスペンス映画のリメイクとなる。

クレジット後のラストシーンでスージーは何をしているのか?
クレジット後のラストシーンで手をかざしたサスペリアの真の継承者、無敵のスージーは何をしているのか?観客の記憶を消しているのか?その前に描写されたハートマークを消したのか?

【ストーリー】
1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な<マルコス舞踏団>に入団するため、スージー・バニヨンは夢と希望を胸にボストンからやってきた。初のオーディションでカリスマ振付師マダム・ブランの目に留まり、すぐに重要な演目のセンターに抜擢される。そんな中、マダム・ブラン直々のレッスンを続ける彼女のまわりで不可解な出来事が頻発、ダンサーが次々と失踪を遂げる。一方、心理療法士クレンペラー博士は、患者であった若きダンサーの行方を捜すうち、舞踏団の闇に近づいていく。やがて、舞踏団に隠された恐ろしい秘密が明らかになり、スージーの身にも危険が及んでいた―。

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