日本のホラー映画の名作を年代順・ジャンル別にまとめた一覧(年代記)。戦前から70年代の怪談ブームからはじまり、90年代から2000年代のJホラーブームを経た現在までのホラー映画の系譜と流れを振り返る。
戦前から1950年代の日本のホラー映画
戦前のホラー映画は、ほとんどが怪談映画、怪奇要素を含む時代劇だった。戦後の日本映画の復興とともにホラー映画も数多く作られるようになった。古典怪談などの時代劇が中心のホラー映画時代だった。怪談などホラー時代劇は、忠臣蔵など本格時代劇と人気を分かつジャンルであった。
怪談 / お化け映画
日本のホラー映画の原型を作ったのは怪談である。中でも、四谷怪談・皿屋敷・牡丹燈籠の三話は「日本三大怪談」に数えられることが多い。怪談(怪奇ジャンルの作品)は日本国内では通常「夏の風物詩」にあげられる。
雨月物語(1953年)
『雨月物語』(うげつものがたり)は、1953年(昭和28年)3月26日公開の日本映画である。大映製作・配給。監督は溝口健二、主演は森雅之、京マチ子。幽玄な映像美に息を呑む、映画史に今なお輝き続ける傑作。戦乱の到来を契機に、一攫千金を狙い大商いを目論む陶器の名工と、侍として立身出世を夢見る義弟、息子と3人でささやかな幸せを望む妻の命運を描く。死霊を演じる京マチ子の妖艶な美しさも話題になった。衝撃のラストにも驚いた。
- 『雨月物語』(1953年)予告編
- 戦乱の到来を契機に大商いを目論む陶器の名工源十郎と、息子と家族3人で貧しくともささやかな幸せを望む妻の宮木。そして、侍として立身出世を夢見る源十郎の弟・藤兵衛とその妻。やがて源十郎と藤兵衛はそれぞれの妻を故郷に残して都に出るが、源十郎はそこで怪しい美女に出会う。
東海道四谷怪談(1959年)

『東海道四谷怪談』(とうかいどうよつやかいだん)は、1959年(昭和34年)7月14日に封切り公開された時代劇日本映画である。中川信夫監督、新東宝製作・配給、総天然色映画(フジカラー)、9巻 / 2,088メートル(1時間16分)。怪談映画の最高傑作として知られている。本作は四谷怪談ものとしては初のカラー映画である。「戸板返し」や、怪談映画屈指の不気味な恐怖演出(特殊メイク)であるお岩が醜く腫れ上がった顔の髪を梳く場面、など、原作の見せ場も忠実に映像化された。
「恨めしや伊右衛門、この恨みはらさずにおくものか・・・」
- 東海道四谷怪談 (1959年の映画)予告編
- 返える戸板に釘打ちの怨霊! 怨みに燃える鬼火の戦慄!
元禄時代に四谷で起きた事件を元に鶴屋南北が創作した、あまりにも有名な怪談話を映像化した中川信夫の代表作。冒頭の移動ワンカット撮影、怪談史上に残る「戸板返し」「髪梳き」、夕日に染まった畳敷きの部屋が隠亡堀に一転する斬殺シーン等、原作を意識しながらも独特の美学、美意識で表現された、日本怪談映画の最高峰。<ストーリー>
浪人の伊右衛門は、お岩との仲を引き裂かれたことを恨んでお岩の父を斬殺する。しかしその所業を直助に目撃され、弱味につけこまれていく。他の罪人に罪を擦り付けた伊右衛門は、その仇討ちを口実にお岩たちを連れて江戸へと向う。しかしお岩と念願の所帯を持ち子供も生まれたものの、仕官の口も無く日々の生活にも困窮するのだった。次第に伊右衛門の焦りは、お岩への虐待へと変質していく。そして、遂には立身と金の誘惑、そして直助の謀計によりお岩の殺害を決意する。
SFホラー映画
東宝変身人間シリーズ
東宝レコード『SF映画の世界』や東宝が出版した書籍『東宝特撮映画全史』では変身人間シリーズは『美女と液体人間』、『電送人間』、『ガス人間第一号』の3作を指す。同じ東宝の『マタンゴ』は番外編的扱いであり、『透明人間』は先駆的作品ということで、関連は深いもののシリーズには含まれていない。
美女と液体人間(1958年)
『美女と液体人間』(びじょとえきたいにんげん)は、1958年6月24日に公開された日本の特撮映画。液体人間とは、核実験の死の灰を浴びたことにより、肉体が変質して全細胞が液体化した人間のこと。アダルトな雰囲気をも盛り込んだSFサスペンス映画。核実験による放射能の影響で液体化した人間が東京に出現し、人間を襲って同化する。
美女と液体人間 予告篇
電送人間(1960年)
『電送人間』(でんそうにんげん)は、1960年に東宝が製作した特撮スリラー映画。『美女と液体人間』に続く変身人間シリーズの第2作。科学が生んだ悪魔・電送人間が、敗戦時の怨みを晴らそうと怪電波に乗って計画犯罪を重ねていく。
ガス人間第一号(1960年)
『ガス人間㐧1号』(ガスにんげんだいいちごう)は、1960年12月11日に公開された、東宝製作の特撮映画。姿なきギャングの完全犯罪。警察をあざ笑う犯人の正体は、脅威のガス人間だった。
1960年代の日本のホラー映画
怪談
地獄 (1960年の映画)

『地獄』(じごく)は、1960年(昭和35年)7月30日公開の日本映画。中川信夫監督、新東宝製作・配給。新東宝の夏興業で定番となっていた怪談ものに「地獄の責め苦の映像化」を持ってきた作品。仏教の八大地獄の映像化がテーマとなっているが、西洋思想における悪魔や地獄のイメージも盛り込まれている。
『地獄』(1960年)予告編
怪談(1964年のオムニバス映画)

『怪談』は、小泉八雲原作の『怪談』に収録されている「黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中」の4つの怪談話を映画化したオムニバス作品。文芸プロダクションにんじんくらぶ製作、東宝配給。1964年(昭和39年)12月29日に東京・有楽座で先行公開され、1965年(昭和40年)1月から一般公開された。
怪談(1964年のオムニバス映画)予告編
牡丹燈籠(1968年)

牡丹灯籠(ぼたん どうろう)、怪談牡丹灯籠は、明治の三遊亭圓朝25歳の時の作品。現代では「四谷怪談」や「皿屋敷」と並び日本三大怪談と称せられる。お露の亡霊に取り憑かれた新三郎の悲劇、亡霊と人間との恋愛を描く。日本の幽霊には足が無いのが一般的であるのに対して、牡丹灯籠のお露は、カランコロンと駒下駄の音を響かせて夜道を歩いて来る。
牡丹灯籠の映画化作品一覧
- 『怪談牡丹燈籠』(1955年7月12日公開、監督:野淵昶、主演:東千代之介)
- 『牡丹燈籠』(1968年6月15日公開、監督:山本薩夫、主演:本郷功次郎、赤座美代子、西村晃、小川真由美、志村喬)
- 『性談 牡丹燈籠』(1972年6月28日公開、監督:曽根中生、主演:小川節子)
- 『青春牡丹燈籠』(1993年8月21日公開、監督:三枝健起、主演:宮沢りえ、豊川悦司)
- 『怪談 牡丹燈籠 もっともっと愛されたかった』(2007年8月11日公開、監督:吉田剛也、主演:大沢樹生)
- シネマ歌舞伎『怪談 牡丹燈籠』(2009年7月11日、脚本:大西信行、出演:仁左衛門、三津五郎、玉三郎)
テレビドラマ「令和元年版 怪談牡丹燈籠」(2019年10月6日から放送予定)
『令和元年版 怪談牡丹燈籠』は、NHK BSプレミアムの「プレミアムドラマ」枠(毎週日曜22時台に放送されているテレビドラマのシリーズ枠)にて2019年10月6日から放送予定の日本のテレビドラマ。全4話(予定)。初代三遊亭圓朝による傑作怪談噺「怪談牡丹灯籠」を、ワイヤーアクション、特殊メイク、チャンバラなども織り交ぜつつ、令和元年の新たな視点と演出により映像化する。
SFホラー映画
マタンゴ(1963年)

『マタンゴ』は、1963年8月11日に公開された日本の特撮ホラー映画。変身人間シリーズの番外編的作品。今日でもSFやホラー映画マニアの間で語り継がれる作品である。また、カルト映画の1つとしても知られている。
マタンゴ 予告編
無人島で展開するエゴと憎悪、そして欲望!怪キノコ“マタンゴ’の恐怖!!極限状況下のエゴを怪キノコの誘惑の中に描いた傑作サスペンスホラー。7人の若者たちが漂着した孤島。飢餓に襲われた彼らはキノコを口にしてしまう。だが、それは…。
吸血鬼ゴケミドロ(1968年)

『吸血鬼ゴケミドロ』(きゅうけつきゴケミドロ)は、1968年8月14日に公開された、松竹製作の怪奇特撮映画第1弾。地球外生命体の吸血生物ゴケミドロの想像を絶する恐怖を描いた傑作SFホラー。侵略テーマ、人類破滅テーマの本格的なSF映画であり、緊迫した人間関係を描く全編を悲観的な雰囲気が覆う。ノストラダムスの予言による世紀末思想をいちはやく映画に導入した斬新さと、ゴケミドロが人間に寄生する際の描写など、シンプルな特撮ながらも実に不気味で効果的。
羽田を飛び立ったジェット機が空中でまばゆい光を放つ謎の飛行体と遭遇し、山中に不時着。奇跡的に生き残った乗客は岩陰に着陸しているUFOを発見するが…。
妖怪映画
妖怪百物語(1968年)
『妖怪百物語』(ようかいひゃくものがたり)は、1968年3月20日に公開された大映京都撮影所製作の時代劇・特撮映画。この年(1968年)1月からテレビで放映開始された『ゲゲゲの鬼太郎(白黒版)』(東映動画、フジテレビ)は、子供たちの間で「妖怪ブーム」と呼ばれる社会現象を起こしていた。本作も観客の子供たちの反応が非常に良かった。大映側はこの新しい「妖怪もの」を同年暮れの冬休み興行に組み込み、次回作『妖怪大戦争』(1968年)へとシリーズ化することとなった。
妖怪百物語 予告篇
或る人間が、憑き物落としのまじないを怠ったために妖怪は怒り、人間界に現われ計らずも悪人退治するという、日本古来の妖怪を総動員した鬼気迫る中にユーモアが滲む怪奇時代劇。
妖怪大戦争(1968年)
『妖怪大戦争』(ようかいだいせんそう)は、大映が製作配給し、1968年(昭和43年)12月14日に封切り公開した時代劇・特撮映画作品。本作は『妖怪百物語』と『東海道お化け道中』と併せて、大映の妖怪三部作または「妖怪シリーズ」とも称される。
東海道お化け道中(1969年)
『東海道お化け道中』(とうかいどうおばけどうちゅう)は、1969年(昭和44年)3月21日に大映配給で公開された大映京都撮影所製作の時代劇、特撮映画。瞼の父を訪ねて東海道を下るお美代を勘造一家がつけ狙う。亡き母の骨で作ったサイコロが招くのか、百太郎、新太、妖怪群に助けられ、無事父娘の対面を果す妖怪路線第三弾。
カルト映画・猟奇ミステリー映画
江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969年)

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』は、1969年公開の日本のホラー映画。石井輝男監督による怪奇色の強いミステリー映画。『恐怖奇形人間』というタイトルの凄まじさ。日本に於けるカルト映画の先駆けとなり、石井輝男の再評価及び復活の起爆剤となった。内容の過激さから、セックスシーンや流血シーンは少ないにもかかわらず、公開当時は成人映画に指定された。
ラストシーンの人間花火オチは有名。人見広介と秀子は、“兄妹と判っても離れられない”とメモを残すと、花火の筒から、火花と共に、空中に四散してしまった。「おかーさーん」と叫びながら…。


1970年代の日本のホラー映画
1970年代の怪談ブーム
戦後は、新倉イワオが1968年に日本初の心霊番組を企画制作。後に日本テレビ「お昼のワイドショー」内で放映された『あなたの知らない世界』などによって1970年代の怪談ブームをリードした。恐怖映像需要が高まり、70年代は恐怖・怪奇番組や映画が急増化した。
怪談累が渕(1970年)

『怪談累が渕』(かいだんかさねがふち)は、1970年(昭和45年)製作・公開、安田公義監督による日本の長篇劇映画、時代劇である。ドロリ淀んだ魔の渕で、夜毎女が手を招く! 奇しき宿命に呪われた怪奇時代劇。酒と博打で身を持ち崩し、皆川宗悦に金を借りていた貧乏旗本・深見新左ェ門。しつこい催促に腹を立てた彼は宗悦を斬り殺し死体を累が渕へ捨てる。
明治期の落語家・三遊亭圓朝(さんゆうてい えんちょう)によって創作された『真景累ヶ淵』(しんけいかさねがふち)を原作とする映画が、無声映画時代からたびたび制作されている。
- 累ヶ淵 (1924年、長尾史録監督)
- 怪談累ヶ淵(1930年、二川文太郎監督)
- 怪談累ヶ渕(1937年、小倉八郎監督)
- 怪談かさねが渕(1957年、中川信夫監督)
- 怪談累が淵(1960年、安田公義監督)
- 怪談累が渕(1970年、安田公義監督)
- 怪談(2007年、中田秀夫監督)
1970年代のホラードラマ / 怪談シリーズ(民放放送のテレビドラマ)
70年代は、オカルト・心霊ブーム、怪談ブームにより、ホラー系(恐怖・怪奇)ドラマを各局が競って作っていた流れがあった。恐怖映像の需要が高まり続けていた。60年代後半から70年代にかけてワンクール13本程度のホラーや怪談シリーズの恐怖番組・テレビドラマが数多く作られた。
怪奇ロマン劇場(1969年、NET・東映制作)

『怪奇ロマン劇場』(かいきロマンげきじょう)は、1969年7月5日から同年12月27日までNET(現:テレビ朝日)系で話が毎週土曜日22:30 – 23:26に放送された、怪談、恐怖話、ホラー話を扱ったテレビドラマ。全24話。
日本怪談劇場(1970年、東京12チャンネル)

『日本怪談劇場』(にほんかいだんげきじょう)は1970年、東京12チャンネル(現テレビ東京)で放映された時代劇。全13話。放送時間(JST)は土曜21時00分 – 21時56分。歌舞伎座テレビ室制作。
身も凍る恐怖、心惹かれる魔の世界。あなたを心地よい恐怖の旅へ誘いましょう・・・。牡丹燈籠、番町皿屋敷、四谷怪談、耳なし芳一など、日本が世界に誇る怪談11編(13話)を網羅。
怪奇十三夜(1971年、日本テレビ・ユニオン映画制作)
『怪奇十三夜』(かいきじゅうさんや)は、1971年7月4日から9月26日まで日本テレビ系列にて毎週日曜日夜9時30分から10時26分に放送されていた時代劇のテレビ映画である。全13話。現在、第7話「怪談悲恋の舞扇」がビデオグラム化されていないが、CSでは放映されている。
「怪談」シリーズ(1972年のテレビドラマ)

『怪談』(かいだん)は、毎日放送と歌舞伎座テレビ室が共同で制作し、NETテレビ系列(現在とは系列が異なる)他にて1972年7月21日から同年9月29日に掛けて放送された、1話完結のオムニバス形式によるテレビ時代劇である。全10話。
「四谷怪談」や「牡丹燈籠」、「累ヶ淵」や「雪女」と言った古典的な作品はもちろん、新撰組を題材に取った「新選組 呪いの血しぶき」と言ったオリジナル作品も織り混ぜながら、それぞれがとことん怖さを追求した作品に仕上がっている。
2007年にエムスリイエンタテインメントからDVD-BOXが、2008年には同社から全10話をテーマ別に分類した『男の巻』『女の巻』の各BOXがそれぞれ発売された。さらに2013年には、全10話を1巻辺り各2話ずつ収録した、全5巻の単品DVDがスバックから発売された。
恐怖劇場アンバランス(1973年)
『恐怖劇場アンバランス』(きょうふげきじょうアンバランス)は、フジテレビ系列で1973年1月8日から4月2日まで毎週月曜日23:15 – 翌00:10(JST)に放送された日本のテレビドラマ。円谷プロダクション制作。全13話。円谷プロが『怪奇大作戦』に続いて製作した、本格オムニバスホラーの大人向け1時間ドラマである。
『怪奇大作戦』では科学技術に内包する暗黒とそれを利用する犯罪者の恐怖が描かれたが、本作では日常や常識のバランスが崩れた不可解で理不尽な恐怖が題材とされた。
日本名作怪談劇場(1979年、東京12チャンネル・歌舞伎座テレビ室制作)
1979年にテレビ東京で放映された怪談時代劇。三遊亭円朝、鶴屋南北らの古典怪談を中心にした怨念と情念渦巻く怪奇譚。
日曜恐怖シリーズ(1978年)

『日曜恐怖シリーズ』(にちようきょうふシリーズ)は、1978年から1979年まで関西テレビと大映映画により制作され、フジテレビ系で放送されていた1話完結のホラードラマシリーズ。放送時間は毎週日曜日21:00-21:54。ただし、西郷輝彦主演のドラマ『刑事鉄平』などによる中断時期を含む。
土曜ワイド劇場(1977年)
『土曜ワイド劇場』は、テレビ朝日系列にて、1977年7月2日から2017年4月8日まで放送されていた2時間ドラマ番組。番組初期から1980年代半ばまで、裏番組のテレビ三面記事 ウィークエンダー対策として、22:00前後の20分間にはCMを入れず濡れ場やレイプシーンを入れていた。また、サブタイトルを視聴率獲得のための武器としており、「全裸」「人妻」など扇情的なフレーズが盛り込まれた長いサブタイトルを新聞欄に載せたり、予告映像にも濡れ場や扇情的なシーンを入れていた。
天知茂主演の『江戸川乱歩の美女シリーズ』(1977年)

『江戸川乱歩の美女シリーズ』は、1977年から1994年までテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で17年間放送されたテレビドラマシリーズ。『土曜ワイド劇場』の初期の代表作。トップ女優の官能的な演技とヌード、中盤でのカーチェイス、物語終盤に死亡したかと思われていた名探偵・明智小五郎が、別人物に成りすまして登場し、犯人の前で変装を解く場面、悲劇的なラストシーンが恒例となっている。現代のテレビ放送では考えられないほど、官能的なヌードシーンと血みどろな残酷・スプラッター描写が多い。

ゴシックホラー映画
東宝の特撮恐怖映画「血を吸うシリーズ」(血を吸う3部作)
山本迪夫監督による恐怖映画シリーズ3作。呪われた運命の美女を『日本一のヤクザ男』の小林夕岐子が演じた『血を吸う人形』の他、岸田森が本格的な吸血鬼役を演じ話題となった『血を吸う眼』『血を吸う薔薇』の全3作品。日本を代表する本格的なバンパイア映画の「血を吸うシリーズ」3部作。
東宝の特撮恐怖映画「血を吸うシリーズ」(幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形~呪いの館 血を吸う眼~血を吸う薔薇) 予告篇
幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形(1970年)

『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』(ゆうれいやしきのきょうふ ちをすうにんぎょう)は、1970年(昭和45年)7月4日に公開された東宝製作の日本の特撮恐怖映画。「“血を吸う”シリーズ」の第1弾。林の中の洋館に起きる惨劇の謎に迫るサスペンス的要素が強い作品になっている。本作は公開されるや、女性層を中心に支持を集めてヒットとなり、続く『呪いの館 血を吸う眼』、『血を吸う薔薇』と、「血を吸うシリーズ」が連作されることとなった。
恋人の野々村夕子(演:小林夕岐子)に会いに行ったきり音沙汰のない兄を捜し、妹の佐川圭子は蓼科山中の野々村家を訪れる。ところが、兄は4日前に帰り、夕子はすでに亡くなっていた。
呪いの館 血を吸う眼(1971年)

『呪いの館 血を吸う眼 』(のろいのやかた ちをすうめ)は、1971年(昭和46年)6月16日に公開された東宝製作の日本の特撮怪奇映画。劇中で岸田森が演じる「吸血鬼」は、小説や映画の「ドラキュラ」をモチーフにしている。ハマー・プロの人気シリーズだったクリストファー・リーの「ドラキュラ映画」の日本版を狙った作劇が行われた。前作に引き続く不気味な洋館を舞台にしたゴシック・ホラー風味も、プロデューサーの田中文雄が狙った演出である。
血を吸う薔薇(1974年)
『血を吸う薔薇』(ちをすうばら)は、1974年(昭和49年)7月20日に公開された東宝製作の日本の特撮恐怖映画。夫婦の吸血鬼が登場し、彼らの夫婦愛が描かれているのが特徴。
怪奇色が濃厚な横溝正史のミステリー映画がブームに
70年代の後半は、空前の横溝正史ブームが訪れる。『犬神家の一族』を筆頭に金田一耕助シリーズの映画化が数多くなされた。この時期は「オカルト・ブーム」が日本を席巻していた。
犬神家の一族(1976年)

『犬神家の一族』(いぬがみけのいちぞく)は、1976年(昭和51年)10月16日に公開された日本映画。横溝正史作による同名の長編推理小説の映画化作品の一作。製作は角川春樹事務所、配給は東宝。市川崑監督・石坂浩二主演による金田一耕助シリーズの第1作。「波立つ水面から突き出た足」のシーンや不気味なマスク姿の佐清などの印象的な場面が多く、後に何度もパロディにされている。




- 犬神家の一族(1976)予告編
- 名探偵・金田一耕助 登場。華麗なる連続殺人事件。日本の製薬王が残した莫大な遺産と謎の遺言状。呪われた一族の抗争を予期した顧問弁護士は名探偵・金田一耕助を呼び出すが、彼と会う前に何者かに殺害されてしまう。それを契機に、一族が次々と手の込んだ殺され方で命を落としていく。湖に突き出た逆さの足、菊人形につけられた生首…。犬神家の家宝である斧(ヨキ)・琴(コト)・菊(キク)に隠された秘密とは?