動物(生物)パニック映画の代表作を、60年代から2000年代まで年代順に総括する年代記(クロニクル)。ジョーズ(1975年)の大ヒットにより、動物パニック映画がブームになり増産され、根強いファンに支えられて現在もコンスタントに作られ続けています。
動物パニック映画の原点、60年代から70年代の古典的名作

50年代の動物パニック映画では、凶暴な殺人蟻・マラブンタの大群と農場主の戦いを描いたSFパニック『黒い絨氈』(1954年)などがあったが、動物が人間を襲う映画は撮影に困難が伴うため、50年代まではあまり作られなかったようである。
動物パニック映画の原点であるヒッチコックの「鳥」(1963年)

『鳥』(原題:The Birds)は、1963年のアメリカ合衆国の映画。ジャンルは生物パニックもののサスペンス。アルフレッド・ヒッチコック作品。原作はダフニ・デュ・モーリエによる同タイトルの短編小説。1970年代に量産された動物パニック映画の原点でもある。鳥が襲撃する理由を明確にせず、不気味な現象としておびただしい数の鳥を登場させた。鳥の恐怖を徹底的に表現した生物パニックホラーのお手本となる恐怖映像が詰まっている。

「鳥」の大ヒット後の60年代の動物パニック映画の動向は、盛り上がりに欠けていた。蜂の大群が人間を襲う「恐怖の昆虫殺人」(1966年)、突然変異した昆虫が暴れる「昆虫大戦争」(1968年)などごくわずかしか作られていない。
70年代には「災害パニックもの」(パニック映画(ディザスター・フィルム))がブームに

『タワーリング・インフェルノ』(1974年)など自然災害を扱ったパニック映画がブームとなり、「ジョーズ」(1975年)以降の動物パニック映画ブームを下支えした(拍車をかけた)。
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- 『大空港』(1970年)
- パニック映画の元祖と言われる
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- 『エアポート’75』(Airport 1975)
- 1970年代のパニック映画ブームを形作った作品の一つとなった
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- 『ポセイドン・アドベンチャー(The Poseidon Adventure)』1972年
- パニック映画(Disaster film)の傑作として知られる。この作品で当時パニック映画(ディザスター・フィルム)と呼ばれるジャンルが確立。
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- 『タワーリング・インフェルノ』(原題: The Towering Inferno )1974年
- 超高層ビル火災を描いたパニック映画の極めつけの作品。本作品は1970年代中盤期のいわゆる、「パニック映画ブーム」の中でも最高傑作と評されている。
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- 『大地震』(1974年)
- 1970年代のパニック映画ブームを代表する作品の一つ。
「ウイラード」(1971年)と続編『ベン』(1972年)
『ウイラード』(Willard)は、1971年のアメリカ合衆国のサスペンス映画及び動物を扱ったパニック映画。数百匹のネズミが人々を襲うサスペンスホラー。『いちご白書』で人気スターとなったブルース・デイヴィソンが主演した。1972年には続編『ベン』が公開された。
「ベン」(BEN)は、前作「ウイラード」の大ヒットで製作されたねずみパニック映画の続編。病弱な少年とねずみとの哀しい友情物語が胸を打つ。マイケル・ジャクソンの主題歌『ベンのテーマ』が全米シングルチャート1位を獲得。
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ネズミの大群が登場する「ウイラード」(1971年)が大ヒットし、続編「ベン」(1972年)も作られた。
友だちのいない青年・ウイラードは、復讐のためソクラテスとベンと名付けたネズミに職場の人々を襲わせる。
動物パニック映画の金字塔、スピルバーグの出世作「ジョーズ」(1975年)

『ジョーズ』(Jaws)は、スティーヴン・スピルバーグ監督による1975年のアメリカのパニック映画。平和なビーチを襲う巨大人食い鮫(ホオジロザメ)の恐怖(人喰い鮫パニック映画)と、それに立ち向う人々を描いた「海洋冒険活劇」の傑作である。海辺の群衆が逃げ惑う場面のリアリティが秀逸な「海洋パニック映画」の金字塔。スリラー映画、ホラー映画、パニック映画など様々なジャンル分けがなされる。動物パニック映画ブームが訪れる。「ジョーズ」の空前のヒットで、「人喰い鮫」ネタは引っ張りだこになる。

ジョーズ(1975年)において、直接的に描写されたサメが人を噛み殺す唯一のシーン。その餌食になるのは、最も頼りになる男のはずだった漁師サム・クイント。船に乗り上げてきた鮫に噛み付かれ、血を吐きながら派手に喰い殺されるという最期を迎える。

70年代には、動物パニック映画がブームになり増産される
1975年の映画『ジョーズ』の大ヒット後、その影響で多数製作された動物パニック映画。『JAWS/ジョーズ』や『ピラニア』といった名作・ヒット作、『キラー・ビー』『グリズリー』『スクワーム』『テンタクルズ』…といった快作・珍作まで、1970年代を中心に世界中で量産された動物パニック映画。
吸血の群れ(1971年)

大自然からの警告か――ある日突然、カエルが、ヘビが、クモが、ヒルが、ワニが、人間を襲い始めた! 70年代を代表するカルト動物パニック映画。70年代アニマル・パニック・ムービーの極北!
自然を愛するフリーカメラマンのピケットは、ひょんなことからクリントとカレン兄妹と知り合い、2人の家に招かれる。兄妹の祖父で気難し屋のジェイソンを主とするその豪華な屋敷では、大量発生したカエルに悩まされていた。ジェイソンは、カエルの生態調査と、今朝がた農薬散布に行ったきり姿を見せないグローヴァーの捜索をピケットに依頼。それを承諾したピケット、早速1人で森の奥へと分け入っていくのだった。すると、沼に飲みこまれるようにしてうつぶせに倒れている男が。首に巻きつくヘビを追い払って助け起こしてみると、男の顔の皮膚は無残にも食い破られ…。
燃える昆虫軍団(1975年)

恐怖の殺人昆虫が群がり人間に襲い掛かるSFホラー。恐怖の殺人昆虫の大群が人類に襲いかかり、壮絶な戦いが繰り広げられる。地震によって地表に現れた、あらゆるものを燃やす未知の昆虫を研究するジム。異種交配の実験を繰り返すうちに、その昆虫は進化を重ねていく。遂には知能を持ち始めて…。
スクワーム(1976年) ゴカイが人間の皮膚下を食い破っていく様は圧巻。

『スクワーム』(原題:Squirm)は、1976年にアメリカのエドガー・ランズベリー=ジョーゼフ・ペラー・プロが製作したアニマル・ホラー映画。見ているだけで嫌悪感でいっぱいになるミミズやゴカイが沸いて登場する。見ているだけで嫌悪感いっぱいのゴカイの群れが人間を襲い生理的嫌悪感を増長させるトラウマな恐怖映画。



グリズリー(1976年)

『グリズリー』(原題:Grizzly)は、『ジョーズ』の大ヒットを受けて製作された1976年のアメリカ映画。国立公園に出現した巨大なハイイログマの恐怖を描く。監督のウィリアム・ガードラーは、さらに『エクソシスト』に影響された『マニトウ』を作り、大ヒット作品のエピゴーネン作品を二つも作った人物として記憶されている。
キラー・ビー(1976年)
キラー・ビー(原題:THE SAVAGE BEES)現在まで語り継がれる殺人蜂軍団襲来を描いたバグズ・パニックの最高峰!そのあまりの恐怖から未だに本作を超えるような蜂パニック映画は無いと云われ続ける傑作。
ニューオリンズに上陸した貨物船は殺人蜂を運んで来てしまった。検死官ジェフと女性昆虫学者ジャニーンは事件の真相を追う。そんな中で、こともあろうか、彼女自身が殺人蜂軍団に襲われるのだった…。
アニマル大戦争(1977年)
オゾン層に異変がおこり、動物達が人間を襲い出すさまを描く。オゾン層の変異で、ある高度以上に棲息する生物が凶暴化しキャンパーたちを襲い始める。
オルカ(1977年)
『オルカ』(Orca)は、1977年のマイケル・アンダーソン監督によるアメリカ・イタリア合作のパニック映画。オルカ(シャチ)を「本能で行動する獰猛な野生動物」ではなく「高い知能を持ち、家族愛から復讐する」と設定するなど、他の動物パニック映画とは趣が異なる。
テンタクルズ(1977年)
『テンタクルズ』(原題:Tentacles / Tentacoli)は、1977年制作のイタリア・アメリカ合衆国合作のパニック・ホラー映画。タイトルの意味はタコ・イカなどの触手を意味するもので、当時人食いサメによる大混乱と恐怖を描いた映画『ジョーズ』の大ヒットにより、いろいろな動物が人間を襲う「動物パニック映画」が量産されていた(大ハイイログマが森林公園で暴れる『グリズリー』など)。本作はこの流れに乗る形で製作された。
吸血こうもり/ナイトウィング(1979年)
アーサー・ヒラー監督が手掛けた異色のサスペンス・ショッカー映画「吸血こうもり/ナイトウィング」(1979年製作)。吸血蝙蝠を題材にした動物パニック物にネイティヴ・アメリカンの伝説や、彼等の聖地での油田開発を巡る業者との確執を描いた人間ドラマ、そして現代版ヴァンパイア・ハンターの活躍ぶりを物語に織り込ませた作品。