ホラー映画の人気ジャンルである「オカルト映画」の古典的な名作や原点から、70年代のオカルト映画の金字塔「エクソシスト」や「サスペリア」に「オーメン」、「死霊館シリーズ」や「アナベルシリーズ」など最新の話題作まで、幽霊・心霊現象や悪魔・魔女などを題材とするオカルト映画の歴史を振り返る年代記(クロニクル)。子供の頃に見たトラウマ映画、オカルト映画の名作が勢揃いの大百科。

オカルト映画の原点、古典作品が生まれた1920年代から1960年代

魔女(原題「HAXAN」、1922年)

ホラー映画、オカルト映画の原点「魔女」(原題「HAXAN」、1922年)
世界最古のホラー映画、オカルト映画の原点「魔女」(原題「HAXAN」、1922年)

魔女(原題「HAXAN」)は、1922年の悪魔、魔女の歴史を解説しながら、再現ドラマで当時の状況を表現するセミ・ドキュメンタリー作品。サイレント映画 。ホラー映画、オカルト映画の原点と評される。またナンスプロイテーション(尼僧や女子修道院を主題とするエクスプロイテーション映画のサブジャンル)の先駆とみなされている。

再現映像は、魔女裁判、魔女と悪魔のサバト、悪魔の怪物誕生、魔女への拷問や処刑などが当時としては最高の特撮技術とメイクアップにより、非常にリアルに出来あがっている。ストーリー性をもつこの映像部分は、現代のホラー映画にも多大な影響を与えている。

オカルト映画の原点・古典的な作品

幽霊表現に変革をもたらした記念碑的な名作「回転」(1961年)


『回転』(原題:The Innocents)は、ジャック・クレイトン監督、デボラ・カー主演による1961年のイギリスのホラー映画。ヘンリー・ジェームズによる古典怪奇小説「ねじの回転」の映画化。「ねじの回転」は、これまで何度も舞台化、映像化されてきた名作。

『回転』に登場する有名な幽霊シーン「湖の向こう岸にただ立っているだけの幽霊」
『回転』に登場する有名な幽霊シーン「湖の向こう岸にただ立っているだけの幽霊」
史上もっともこわい幽霊映画と評される『回転』に登場する有名な幽霊シーン「屋敷の屋上にたたずむ幽霊」
史上もっともこわい幽霊映画と評される『回転』に登場する有名な幽霊シーン「屋敷の屋上にたたずむ幽霊」

「屋敷ホラー」(お化け屋敷)の元祖ともいえる「幽霊映画」の傑作の1つ。未練を残して死んだ男女が幼い兄妹に憑依する幽霊物語。ニコール・キッドマン主演の「アザーズ」の元ネタと言われている映画。ギレルモ・デル・トロ監督のダークミステリー「クリムゾン・ピーク」(2015)に大きな影響を与えたと言われている。


『回転』(原題:The Innocents)の恐怖映像:ガラスにふっと浮かぶ不気味な男の顔のシーン

遠くからじっとこちらを見つめる人影、ガラスにふっと浮かぶ不気味な男の顔など作品内に登場する恐怖描写は後のJホラーへ多大なる影響を与えたとされる。

本作は、ギデンスの見る幽霊(他には誰も見ていない)が、本当の幽霊(屋敷オカルトホラー)なのか、それとも彼女の妄想(サイコサスペンス)なのか、という部分で見解が分かれている作品。妄想と現実の境目が分かりにくい。

たたり(1963年)

幽霊屋敷ものの「たたり」(1963年)
幽霊屋敷ものの「たたり」(1963年)

『たたり』(The Haunting)は、シャーリイ・ジャクスンの『山荘綺談』(The Haunting of Hill House)をもとにネルソン・ギディングが脚本を書き、ロバート・ワイズが監督した1963年公開のホラー映画。ニューイングランドの郊外にたたずむ巨大な屋敷“丘の家”で次々と起こる惨劇を斬新な映像で描く。日本のホラー映画作家たちに多大な影響を与えた心霊ものの名作。幽霊を科学的に究明しようとする設定など幽霊屋敷ものの「ヘルハウス」(1973年)の原点ともいえる作品。幽霊を全く登場させず、効果音や画面の雰囲気だけで存在感を示し恐怖感を煽っていく演出など、後のJホラーブームを牽引する作家たちに多大な影響を与えた。

ニューイングランドの郊外にたたずむ巨大な館。”丘の家”と呼ばれるその館は、呪われた不吉の象徴であった。ここに目をつけた超常現象の研究家マークウェイ博士は、超感覚を持つ2人の女性エレナーとセオドーラを伴い屋敷に乗り込む。やがて不可思議な現象が館を包み始めた—。

幻のホラー映画『シェラ・デ・コブレの幽霊』(1964年に公開予定だったホラー映画)

『シェラ・デ・コブレの幽霊』に登場する幽霊。60年代にこの幽霊のビジュアルは素晴らしい。Jホラーに影響を与えた霊の描写は、今観ても斬新で気持ち悪い。
『シェラ・デ・コブレの幽霊』に登場する幽霊。60年代にこの幽霊のビジュアルは素晴らしい。Jホラーに影響を与えた霊の描写は、今観ても斬新で気持ち悪い。

『シェラ・デ・コブレの幽霊』(原題:The Ghost of Sierra de Cobre、別題:The Haunted )は、1964年に公開予定だったアメリカ合衆国のホラー映画。日本では1967年にNETテレビ(現:テレビ朝日)の『日曜洋画劇場』で放送されている。

心霊調査員を主人公とした、当時のアメリカ映画としては珍しい「足の無い幽霊」が登場するホラー映画である。元々はアメリカの放送局CBSによるテレビシリーズ『The Haunted 』のパイロット版として製作された54分の中編作品「The Haunted」であった。その後、この54分版「The Haunted」に未採用となったエピソードシーンを追加し、1時間21分版の「シェラ・デ・コブレの幽霊」として完成を見たが、お蔵入りとなり、上映および放送されることはなかった。上映中止となった理由については、あまりに恐ろしい映像描写ゆえに試写会で体調を悪化させる者が続出したためであるとも伝えられている。

日本ではテレビ放映を観た視聴者たちの間で話題となり、長きに渡って視聴する術を失っていたこともあって作品はSF・ホラー映画愛好家達の口伝えで伝説と化していった。

引用元: シエラ・デ・コブレの幽霊(1967(1964))‐魔人館

日本の脚本家・映画監督の高橋洋は、子供の頃に本作の予告編をテレビ放送で見た経験をモチーフとして、後の1996年に日本で公開されたホラー映画『女優霊』の脚本を書いたという。さらには高橋がその後に関わった1998年の映画『リング』にも本作からの影響が反映されており、『女優霊』に登場した未公開映画の中の幽霊の描写は、『リング』の登場人物、山村貞子の映画版における描写に影響を与えている。

呪いの館(1966年)

マリオ・バーヴァ監督のオカルト映画「呪いの館」に登場する「メリッサの幽霊」。
マリオ・バーヴァ監督のオカルト映画「呪いの館」に登場する「メリッサの幽霊」。

呪いの館(原題:KILL BABY KILL)は、マリオ・バーヴァ監督による1966年のイタリアのゴシック・ホラー映画。日本での劇場公開は20世紀フォックス映画配給による1973年5月26日公開。

「呪われた少女の怨霊が一人、また一人死へと誘い込む。」

イタリアの片田舎で起きる奇怪な連続怪死事件。その謎を追う検屍官は事件の背後に、白い毬を持った少女メリッサの亡霊の存在を知る……。

メリッサというグラプス家の7歳の少女が馬車で轢き殺されて、その成仏できない霊が悪霊となって村を彷徨い続け、その姿を見た村人は死に至るというものだった。

Jホラーの代表格『リング』の「貞子」の源流・始祖的な存在の作品と言ってもいいだろう。

実は霊媒師だった男爵夫人(メリッサの母親)が真の黒幕でありメリッサの霊を操って村人を殺害していた。クライマックスにて、占い師(魔女)のルースと男爵夫人は相討ちとなり双方息絶え、ヒロインのモニカもあわやという時にエズウェイに命を助けられる。こうしてメリッサの呪いは消滅して村に平和が訪れる。

ローズマリーの赤ちゃん(1968年)

ローズマリーの赤ちゃん(1968年)
ローズマリーの赤ちゃん(1968年)

『ローズマリーの赤ちゃん』(Rosemary’s Baby)は、アイラ・レヴィンの小説、およびこれを原作とした1968年制作のアメリカ映画。巨匠ロマン・ポランスキーが悪魔崇拝者たちに狙われたある主婦の恐怖を描いたオカルト・サイコ・ホラー。オカルト映画の古典的な名作として名高い。

悪魔崇拝者の老人たちに輪姦されたローズが子供を身ごもり、子供の悪魔化を阻止しようと必死に抵抗する。悪魔の誕生と身近に潜んでいるカルトな悪魔崇拝の恐怖が描かれる。
悪魔崇拝者の老人たちに輪姦されたローズが子供を身ごもり、子供の悪魔化を阻止しようと必死に抵抗する。悪魔の誕生と身近に潜んでいるカルトな悪魔崇拝の恐怖が描かれる。

マンハッタンの古いアパートに、若い夫婦者が越してきた。やがて妻のローズマリーは身篭もり、隣人の奇妙な心遣いに感謝しながらも、妊娠期特有の情緒不安定に陥っていく。彼女は、アパートで何か不気味なことが進行している、という幻想にとり憑かれていた……。

オカルト映画ブームが訪れた1970年代

悪魔のワルツ(1971年)

悪魔のワルツ(1971年)
悪魔のワルツ(1971年)

『悪魔のワルツ』(あくまのワルツ、原題:The Mephisto Waltz)は、1971年4月9日にアメリカ合衆国より公開されたホラー映画作品。悪魔崇拝主義者たちの恐怖を描いた作品。現代の文明社会において悪魔や悪魔崇拝者が存在していることをリアルに描いた。

<ストーリー>
ある日突然、魂だけが別人になっていたら……。悪魔と取引をし、他人の肉体だけを手に入れる悪魔崇拝主義者たち。略奪、裏切り、倒錯した愛……。美しい人妻ポーラは夫の魂を悪魔に奪われ、ついには自ら恐ろしい取引をするのだった……。

オカルト映画の金字塔「エクソシスト」(1973年)

リーガンがブリッジをしたまま階段を下りていく通称「スパイダーウォーク」はホラー映画史に残る伝説の恐怖シーン。オカルト映画の名場面中の名場面。
リーガンがブリッジをしたまま階段を下りていく通称「スパイダーウォーク」はホラー映画史に残る伝説の恐怖シーン。オカルト映画の名場面中の名場面。

『エクソシスト』(The Exorcist)は、1973年のアメリカのホラー映画。少女に憑依した悪魔と神父の戦い(悪魔祓い)を描いた世界中で大ヒットしたオカルト映画の代表作。悪魔が取り憑いてグロテスクな姿に豹変した史上もっともこわい幽霊映画、という評価がある。公開から40年以上たった現在でも多くのファンを魅了し続けている不朽の名作となった。

世界を震撼させたオカルト映画の金字塔「エクソシスト」が描いた少女リーガンが悪魔パズズに憑依される恐怖。あまりにも迫真に迫る悪魔憑きとエクソシストの死闘は徹底的にリアルであり、観客は完全に打ちのめされた。上映中に観客は大いに震え上がり、悲鳴を上げ、嘔吐したり、キリスト教国家では失神する観客が続出したと言われる。

少女リーガンが悪魔パズズに憑依されおぞましい姿に変貌する

悪魔に取り憑かれ恐ろしい顔に変貌してしまったリーガンが緑色の体液を口から吐き出すおぞましい恐怖シーンもホラー映画史に残る伝説の名場面として名高い。
悪魔パズズに取り憑かれ恐ろしい顔に変貌してしまったリーガンが緑色の体液を口から吐き出すおぞましい恐怖シーンもホラー映画史に残る伝説の名場面として名高い。
ディレクターズカット版では、悪魔パズズの白い顔がサブリミナル効果風に挿入されている。
ディレクターズカット版では、悪魔パズズの白い顔がサブリミナル効果風に挿入されている。
映画「エクソシスト」の冒頭のイラクの古代遺跡の発掘現場で、悪魔パズズの像を発見したメリン神父は、不吉な予兆を感じる。
映画「エクソシスト」の冒頭のイラクの古代遺跡の発掘現場で、悪魔パズズの像を発見したメリン神父は、不吉な予兆を感じる。
悪魔に憑依された少女リーガンの腹に現れた「help me」の文字。独創的な特殊メイクの演出として話題になった。
悪魔に憑依された少女リーガンの腹に現れた「help me」の文字。独創的な特殊メイクの演出として話題になった。

『エクソシスト』の悪名高い「十字架オナニー」

少女リーガン(演:リンダ・ブレア)が悪魔に取り憑かれて悪魔のような形相に変貌し、卑猥な言葉を口走り、180度回転するリーガンの首という演出も当時話題を呼んだ。実にリアルに見える。

悪魔に取り憑かれたリーガン(演:リンダ・ブレア)が股間に何度も十字架を突き刺す自慰シーンは、問題視され物議を醸し出した。
悪魔に取り憑かれたリーガン(演:リンダ・ブレア)が股間に何度も十字架を突き刺す自慰シーンは、問題視され物議を醸し出した。

リーガンに憑依した悪魔は、暴れながら「fuck me ! 」(ファックミー)、「lick me !」(母親を股間におしやり、舐めろ!)、「Let Jesus fuck you !(キリストにファックさせてやれ!)」といったとんでもない言葉を繰り返し絶叫し、リーガンの股間に何度も十字架を突き刺す(想像を絶する血みどろの自慰シーン)。悪魔の仕業で部屋の中はモノが飛び散り、ポルターガイスト現象も起きている。

ポルターガイスト現象が起きて、家具などが襲い掛かってくる中で、リーガンの首が180度回転するというおぞましい展開に。ホラー史に残る伝説の恐怖演出として語り継がれている。
ポルターガイスト現象が起きて、家具などが襲い掛かってくる中で、リーガンの首が180度回転するというおぞましい展開に。ホラー史に残る伝説の恐怖演出として語り継がれている。

緑色のおぞましい反吐を吐き、十字架を陰部に突き立てて神を冒涜する恐ろしい(悪魔が憑依した)リーガンの姿に、当時の観客たちは度肝を抜かれた。特にキリスト教圏の観客に失神者や嘔吐客が続出した。


『エクソシスト』テーマ曲「チューブラー・ベルズ」

エクソシストは、ワシントンのジョージタウンに住む少女リーガン(演:リンダ・ブレア)が「悪魔パズズ」に憑依された現象を、特殊効果および特殊メイクを駆使してリアルに描写し、世界の観客にトラウマを刻み込み、震え上がらせた。日本でもエクソシスト(日本での公開は1974年)は公開され大ヒットし、70年代の日本を席巻した「オカルトブーム」を牽引した。

あまりにもリアルで迫真に迫る悪魔祓い(悪魔憑きと神父たちの死闘)のため観客はパニックに…衝撃のラストには世界が震撼した

ランカスター・メリン神父は心臓の病気をおして悪魔祓いの儀式にのぞむ。
ランカスター・メリン神父は心臓の病気をおして悪魔祓いの儀式にのぞむ。

「ザ・パワー・オブ・クライスト・コンペルス・ユー」
「ザ・パワー・オブ・クライスト・コンペルス・ユー」
神父の呪文が響く中、リーガンの体が宙に浮く。
「ザ・パワー・オブ・クライスト・コンペルス・ユー」(神の力が汝を滅ぼす!)と二人の神父は叫び続ける。

メリンとカラスの両神父は、少女リーガンから悪霊を追い払う儀式を行う。リーガンの体が宙に浮く。
メリンとカラスの両神父は、少女リーガンから悪霊を追い払う儀式を行う。神父たちが呪文を唱えると、リーガンの体が宙に浮く。リアリティが徹底的に追及された迫真の演技。悪魔の邪悪さも際立っていた。

「キリストの力によって貴様に命ずる。悪霊よ、この少女の身体から出ていくのだ!」
まるでドキュメントのような迫真に迫るリアリティ。全編にみなぎる異常な緊張感・緊迫感。

今度は、リーガンの首が360度回転する。
今度は、リーガンの首が360度回転する。

恐るべき衝撃のラスト:悪魔と刺し違えるカラス神父の壮絶な最期。

少女リーガンの首を絞める激怒したカラス神父
少女リーガンの首を絞める激怒したカラス神父

悪魔祓い師のメリン神父は力尽きて倒れる。助士のカラス神父は激怒して少女リーガンの首を絞めて叫ぶ。「卑怯者の悪魔め!俺に取り憑いてみろ!」(Take me!)と悪魔パズズを挑発し、悪魔を自分に乗り移らせたカラス神父は窓から身を投げて、悪魔もろとも死亡する。神父たちの壮絶な自己犠牲によってリーガンはとうとう救われた。自己犠牲でカラス神父が突入する窓ガラスに一瞬、幽霊に見える顔が写り込む。

悪魔に取り憑かせたカラス神父は、窓から身を投げて自殺を図る。
悪魔に取り憑かせたカラス神父は、窓から身を投げて自殺を図る。窓から飛び降りたカラス神父は、階段を転げ落ちて絶命する。悪魔と刺し違える壮絶なカラス神父の最期。階段を落ちるシーンもあまりにもリアルな演出。
メリンは持病の心臓病が悪化して息を引き取る。カラス神父は格闘の末、悪霊をわが身に乗り移らせると窓から身を投げ、階段を転げ落ちて絶命する。想像を絶する壮絶な衝撃的な結末に。
メリンは持病の心臓病が悪化して息を引き取る。カラス神父は格闘の末、悪霊をわが身に乗り移らせると窓から身を投げ、階段を転げ落ちて絶命する。想像を絶する壮絶な衝撃的な結末に。観客の多くは打ちのめされ、一生忘れられないトラウマを植え付けられた。

ラストシーンで、(自己犠牲で悪魔に憑依された)カラス神父が転げ落ちた階段は、エクソシスト・ステップス(Exorcist steps)として有名になり、呪われた場所と感じる人もいる。

エクソシスト2(1977年)

1作目から4年、再びリーガンを襲った恐るべき異変に、新たなエクソシストが立ち向う姿を描く「エクソシスト」の続篇。
1作目から4年、再びリーガンを襲った恐るべき異変に、新たなエクソシストが立ち向う姿を描く「エクソシスト」の続篇。

『エクソシスト2』(Exorcist II: The Heretic)は、1977年制作のアメリカ映画。1973年の『エクソシスト』の続編。壮絶な悪魔祓いの一件から4年後、リーガンに再び悪魔が憑く。後任のラモント神父と悪魔パズスとの最後の戦いが始まる。内容はSF(サイエンスファンタジー)が入り混じった内容となっている。

教会から派遣され前作の事件を調査するラモント神父は、リーガンの中にまだ悪魔が取りついている事を知る。命を落したメリン神父の悪魔払いが成功していなかったのか? ラモントはメリンが40年前に悪霊パズズとの戦いを繰り広げたアフリカに飛ぶ……。

エクソシスト3(1990年)

ジョージタウンを舞台に次々と起こる猟奇殺人を捜査する刑事が遭遇する悪魔憑き現象を描くオカルト・サスペンスの第3作。
ジョージタウンを舞台に次々と起こる猟奇殺人を捜査する刑事が遭遇する悪魔憑き現象を描くオカルト・サスペンスの第3作。

『エクソシスト3』(The Exorcist III)は、1990年制作のアメリカ映画。
『エクソシスト』の原作者であるウィリアム・ピーター・ブラッティが、最も気に入っていたキャラクターのキンダーマン警部を主人公にした物語を構想し、続編として『Legion』を書き上げ、自ら映画化した作品。『エクソシスト2』の出来に不満を持ったブラッティが1作目『エクソシスト』の正当続編として作ったものである。

エクソシストの原点「ルーダンの悪魔憑き事件」の映像化作品

1630年のフランス王国中西部で「ルーダンの悪魔憑き」 (Loudun possessions) と呼ばれる事件が女子修道院で発生し、修道女がエクソシズム(悪霊祓い)を受けた結果、悪魔としてイエズス会士のグランディエ教区司祭を名指ししたため、彼は火刑に処された。しかし、その後も悪魔憑きが続き、エクソシズムがなされていった。この事件を元にオルダス・ハクスリーは『ルーダンの悪魔』 (The Devils of Loudun) を書いている。

肉体の悪魔 (1971年)

イギリスの文豪オルダス・ハクスレーの「ルーダンの悪魔」をケン・ラッセル監督が独特の幻想的世界観で映像化したオカルト作品。
イギリスの文豪オルダス・ハクスレーの「ルーダンの悪魔」をケン・ラッセル監督が独特の幻想的世界観で映像化したオカルト作品。

『肉体の悪魔』(原題:The Devils)は、ケン・ラッセル監督による1971年のイギリス映画。オルダス・ハクスリーの歴史研究書『ルーダンの悪魔』が原作となっており、17世紀のフランスで起きた「ルーダンの悪魔憑き事件」をモチーフとしている。カトリックの尼僧が出てくる映画ジャンルであるナンスプロイテーション映画の先駆作のひとつと言われている。

中世フランスの辺境の村ルーダン。国内統一の野望に燃える宰相リシリューは、ルーダンに隠れなき権力を有する司祭グランディエの失脚を画策していた。村の女性たちをことごとくモノにするグランディエに対し、リシリューは異端審問官を派遣する。魔女として告発された女たちの証言で、グランディエの所行が明らかになっていく……。


The Devils (1971) – Trailer

17世紀のフランス。ルーダンの町には好色な司祭グランディエがいた。戒律の厳しい尼僧院の院長ジャンヌはグランディエを愛しているにもかかわらず、強い嫉妬から彼を妖術使いだと訴え、悪魔払いの式が行われることになる……。

尼僧ヨアンナ(1961年)

尼僧院での悪魔払いを描いた「尼僧ヨアンナ」(1961年)。スリン神父はヨアンナと面会して神の道を説くが、彼女は悪魔の言動に豹変して挑発する。尼僧全員を集めて悪魔払いをすると、多くが聖水から逃げ惑う。
尼僧院での悪魔払いを描いた「尼僧ヨアンナ」(1961年)。スリン神父はヨアンナと面会して神の道を説くが、彼女は悪魔の言動に豹変して挑発する。尼僧全員を集めて悪魔払いをすると、多くが聖水から逃げ惑う。

尼僧ヨアンナ(原題:Mother Joanna of the Angels)は、1961年制作のポーランドのオカルト・ホラー映画。

辺境の修道院で尼僧たちが悪魔に取り憑かれたという噂が流れ、悪魔祓いにスリン神父が派遣される。彼の前任者は、悪魔に憑かれた尼僧・ヨアンナにたぶらかされ、姦淫の罪で火刑に処されたのだが…。

「エクソシスト」の通称「スパイダーウォーク」の元ネタ

尼僧ヨアンナ(演:ルツィーナ・ヴィンニツカ)は、自分には八つの悪魔が取り憑いていると告げる。やがて彼女の表情と声の調子が急変し、悪魔に憑依されたかのごとくスーリンに挑みかかる。“悪魔に憑かれた”尼僧ヨアンナを演じるルツィーナ・ヴィンニツカの迫真に満ちた演技は、観る者を震撼させずにはおかない。
尼僧ヨアンナ(演:ルツィーナ・ヴィンニツカ)は、自分には八つの悪魔が取り憑いていると告げる。やがて彼女の表情と声の調子が急変し、悪魔に憑依されたかのごとくスーリンに挑みかかる。『ルーダンの悪魔』のジャンヌのブリッジは、「尼僧ヨアンナ」のブリッジシーンとして再現された。これらが「エクソシスト」の「スパイダーウォーク」の元ネタ。

『ルーダンの悪魔』によると、ジャンヌは悪魔祓いの儀式中に、後ろに反り返ってブリッジしたりするアクロバットまで披露したという。このブリッジは、「尼僧ヨアンナ」でも描かれ、「エクソシスト」でも通称「スパイダーウォーク」として(ディレクターズ・カット版にて)描かれた。

エクソシスト(題材:悪魔に憑依される・悪魔祓い)の類似映画例

1970年代、『エクソシスト』が大ヒットした影響で、悪魔払いを描いたオカルト映画がいくつも製作された。

デアボリカ(1973年)

エクソシストの類似映画のひとつ「デアボリカ」(1973年)
エクソシストの類似映画のひとつ「デアボリカ」(1973年)

デアボリカは、1973年のイタリアのオカルトホラー映画。美しい人妻の胎児に悪魔がとり憑いた。その悪魔とエクソシストの壮絶な戦いを描いたイタリア製オカルトホラー。

ジェシカは、夫ロバートと2人の子供たちに囲まれ、平穏で幸せな日々を過ごしていた。だが、3人目の子供を妊娠した時から、その生活は一変した。その胎児は異様な速さで成長し、同時にジェシカの形相にも著しい変化が現れ始めた。緑色の粘液を吐き散らし、その口からは、恫喝的な声色で悪魔の言葉を次々と発するようになったのだった…。

ヘルスネーク(1974年)

邪悪な黒蛇「ヘルスネーク」にとり憑かれたマグダレーナ
邪悪な黒蛇「ヘルスネーク」にとり憑かれたマグダレーナ

ヘルスネーク(原題:Magdalena And The Dvil/DEVIL’S FEMALE/MAGDALENA, POSSESSED BY THE DEVIL)は、1974年の西ドイツ製ホラー映画。エログロ残酷映画。邪悪な黒蛇にとり憑かれた十七歳の少女の奇行を描く。

マグダレーナは、何かに憑かれているかのように人々に暴力をふるい、ところかまわず発狂する。
マグダレーナは、何かに憑かれているかのように人々に暴力をふるい、ところかまわず発狂する。

17歳の美少女マグダレーナは、ある日突然発作に襲われ別人のようになってしまう。口汚い言葉でののしり、挙句に人の面前でオナニーをする有り様だった。精神科医フォーク教授は、彼女の体内に悪魔の黒蛇が宿っているとして悪魔払いを決行する……。「エクソシスト」(73)の世界的大ヒットに便乗して製作されたオカルト作品。

教授の指示に従い、マグダレーナが小さい頃したお祈りをすると、彼女の口から邪悪な黒蛇“ヘルスネーク”が出た。悪魔をはき出したのだ。すると彼女は元のように愛らしい少女に戻り、疲れ切ったその身体をショルツに寄りそえるのだった。
教授の指示に従い、マグダレーナが小さい頃したお祈りをすると、彼女の口から邪悪な黒蛇“ヘルスネーク”が出た。悪魔をはき出したのだ。すると彼女は元のように愛らしい少女に戻り、疲れ切ったその身体をショルツに寄りそえるのだった。

レディ・イポリタの恋人/夢魔(1975年)

エクソシストの類似映画のひとつ「レディ・イポリタの恋人/夢魔」(1975年)
エクソシストの類似映画のひとつ「レディ・イポリタの恋人/夢魔」(1975年)

レディ・イポリタの恋人/夢魔は、1975年のイタリアのオカルトミステリー映画。中世の頃の魔女が現代に甦り美しい娘にとり憑いた。その悪魔と人間の対決を描く。400年前に処刑された魔女が孤独な美女に憑依して巻き起こす恐るべき超常現象を描く。オカルト映画の金字塔「エクソシスト」ブームに便乗した企画。

復活祭の日に不気味な修道僧と出会って以来、足の不自由な娘イポリタの周囲で淫らな怪奇現象が続出した。全ては悪霊の仕業だったのだ。やがて悪霊は、イポリタ自身にも影響を及ぼし始める……。

悪魔の性キャサリン(1976年)

清純な少女を悪魔に捧げようとする邪教の神父と、その少女を救い出そうとするオカルト研究家の息詰まる対決。主演のナスターシャ・キンスキーが初々しいヌードを披露していることで有名な作品。
清純な少女を悪魔に捧げようとする邪教の神父と、その少女を救い出そうとするオカルト研究家の息詰まる対決。主演のナスターシャ・キンスキーが初々しいヌードを披露していることで有名な作品。

悪魔の性キャサリン(原題:TO THE DEVIL-A DAUGHTER/CHILD OF SATAN)は、1976年のイギリスのオカルト映画。

キャサリン(演:ナスターシャ・キンスキー)という美少女が、教会から破門された神父に売り渡された。その神父は子供たちを集め、悪魔復活の儀式を行なっていたのだ。彼女の父親はそれを知り、激しく後悔する。彼はオカルトに詳しい作家と共に、キャサリンを奪い返そうとするが……。

マニトウ(1978年)

オカルトとSFが融合したカルトムービー。平凡な女性にインディアンの悪霊ミスカマカスが宿った。
『マニトウ』は、オカルトとSFが融合したカルトムービー。平凡な女性にインディアンの悪霊ミスカマカスが宿った。

『マニトウ』(原題: The Manitou)は、1978年制作のアメリカ合衆国のオカルト・ホラー映画。

万物に宿る精霊<マニトウ>と古代インディアンの悪霊、そしてもはやSF映画の域に達しているクライマックスが話題になった。
万物に宿る精霊<マニトウ>と古代インディアンの悪霊、そしてもはやSF映画の域に達しているクライマックスが話題になった。

1970年代、『エクソシスト』が大ヒットした影響で、悪魔払いを描いたオカルト映画がいくつも製作された。この作品もその一つだが、後半部分はSF映画的な展開となる個性的な作風であった。あまりにも奇想天外なストーリーのため、「『エクソシスト』のような話だがクライマックスは『スター・ウォーズ』だ」と失笑されるなどしたが、B級映画ファンにはカルト的人気を誇っている。

風からコンピュータまで全ての物に宿っているという精霊(マニトウ)を総動員して最強最大の悪霊に立ち向かう。
風からコンピュータまで全ての物に宿っているという精霊(マニトウ)を総動員して最強最大の悪霊のミスカマカスに立ち向かう。

【ストーリー】
サンフランシスコのある病院にカレンという女性が入院してくる。首の後ろに出来た腫瘍が時々動くという不思議な現象が起こるというのである。医師は外科手術でこの腫瘍を切除しようとするが、見えざる不思議な力によって妨げられる。カレンの元恋人で心霊研究家のハリーは、祈祷師や専門家の協力を得て調査した結果、この腫瘍は400年前のインディアンの祈祷師の霊であり、対話は同じインディアンの祈祷師にしか出来ないという事が分かる。

ハリーが何とか説得して連れて来たインディアンの祈祷師ジョンにより、その霊はインディアンに伝わる悪霊の中でも最恐の悪霊“ミスカマカス”であることが判明する。ハリーとジョンはインディアンに伝わる精霊“マニトウ”の力を総結集させて、ミスカマカスとの対決に挑む。

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