70年代にブームを巻き起こした横溝正史=金田一耕助もの。横溝正史原作の「金田一耕助シリーズ」の映画作品のトラウマシーン(猟奇的殺人シーン・死体・最恐の瞬間など)と名場面・見どころのまとめ。石坂浩二の金田一耕助シリーズ(角川映画)の「犬神家の一族(1976)」「悪魔の手毬唄(1977)」「獄門島(1977)」「女王蜂(1978)」「病院坂の首縊りの家(1979)」の5作品を中心に、1970年代以降に大ヒットした「八つ墓村(1977)」「本陣殺人事件(1975)」「悪魔が来りて笛を吹く(1979)」「悪霊島(1981)」の4作品を加えた合計9作品のご紹介。
ミステリーとホラーが絶妙に融合した昭和時代の「金田一耕助シリーズの映画作品」は、おどろおどろしい陰惨な世界観を持ち凄惨なトラウマシーンの宝庫です。トラウマ怪奇映画の代表格。
石坂浩二の金田一耕助シリーズ(角川映画) / おどろおどろしい猟奇的な連続殺人シーンが特徴のミステリー・サスペンス映画の傑作。封建的な田舎の古い因習による陰惨さ、隠された血縁関係が殺害動機に…。
横溝正史原作の俳優・石坂浩二が演じる映画版「金田一耕助シリーズ」は、以下の6作品。このまとめでは「病院坂の首縊りの家」までの昭和時代の5作品をご紹介。
- 犬神家の一族(1976年〈昭和51年〉10月16日公開) 角川映画第1作
- 悪魔の手毬唄(1977年〈昭和52年〉4月2日公開) この作品より東宝の自主制作となる(リメイク版『犬神家の一族』まで)
- 獄門島(1977年〈昭和52年〉8月27日公開)
- 女王蜂(1978年〈昭和53年〉2月11日公開)
- 病院坂の首縊りの家(1979年〈昭和54年〉5月26日公開)
- 犬神家の一族(2006年〈平成18年〉12月16日公開)
石坂浩二は金田一耕助の演技者としては劇場映画では7人目となるが、和服に袴、お釜帽にボサボサ頭という、原作の記述を忠実に再現した最初となった。
石坂浩二の金田一耕助シリーズ(角川映画)『犬神家の一族』(1976年) / 横溝正史ブームの火付け役となったミステリー映画の金字塔。佐清の白マスクや水面から突き出た足など、強烈なインパクトで社会現象を巻き起こした。おどろおどろしい陰惨な世界観を持つ伝説のトラウマ怪奇映画。
『犬神家の一族』は1976年に公開された日本映画で、横溝正史の作品を映画化したもので、角川映画の初作品であり、市川崑監督・石坂浩二主演による金田一耕助シリーズの第1作でもある。「波立つ水面から突き出た足」のシーンや、不気味な白マスク姿の佐清などの印象的な場面が多く、主題曲「愛のバラード」も有名である。
犬神家の一族(1976)予告編
信州財界のフィクサー・犬神佐兵衛が残した謎の遺言状。犬神財閥の巨額の遺産を巡って、血塗られた連続殺人が起こる。犬神家の家宝である 斧(ヨキ)・琴(コト)・菊(キク)に隠された秘密とは?名探偵・金田一耕助が解き明かす血の系譜、そして意外な真相とは!?
『犬神家の一族』は、1976年(昭和51年)10月16日に公開された日本映画。横溝正史作による同名の長編推理小説の映画化作品の一作。1970年代中頃から1980年代中頃にかけて一種のブームとなった角川映画の初作品であり、市川崑監督・石坂浩二主演による金田一耕助シリーズの第1作でもある。金田一耕助を初めて原作通りの着物姿で登場させた映画としても知られる。
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角川映画45周年を記念して、角川映画第1作『犬神家の一族』(1976年公開)がついに4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】で登場!
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・「検証! ~『犬神家の一族』はこうして作られた~(30分)」/「誕生! 金田一耕助」(16分)(ともに2006年発売のコレクターズ・エディションDVD特典)
不気味な白マスク姿の「犬神佐清(すけきよ)」は、あまりにも有名なトラウマキャラ…松子「佐清(すけきよ)、頭巾を取っておやり!」「佐清(すけきよ)、この薄情の人たちに仮面をめくっておやり!」のくだりで視聴者は2回驚かされる!グロテスクすぎる素顔に度肝を抜かれた…映画史に残る恐怖のトラウマシーン。
犬神佐兵衛の顧問弁護士の古舘恭三は、黒い頭巾をかぶっており素顔を見れない犬神佐清(すけきよ)が本人であることを確認しなくても良いのかと聞くと、竹子も梅子も佐清(すけきよ)の顔を見なければ納得しないと言い出す。
松子(高峰三枝子)「佐清(すけきよ)、頭巾を取っておやり!」
頭から黒い頭巾をかぶった異様な男である犬神佐清が黒い頭巾を取ると…なんと不気味な白いマスクで覆われた頭部が現れた。「きゃあ!」と竹子の娘の小夜子が悲鳴をあげる。一同は騒然とする。
一度見たら頭に焼き付いてしまい一生忘れないほどの、あまりにも強烈な伝説のトラウマキャラクターの誕生。不気味な白マスク姿の「犬神佐清(すけきよ)」は、一度見たら忘れられないトラウマキャラ。特に石坂浩二の金田一耕助シリーズ(角川映画)『犬神家の一族』(1976年)は、おどろおどろしい陰惨な世界観を持つ伝説の「トラウマ怪奇映画」として名高い。
白マスク姿の「犬神佐清(すけきよ)」を見て、驚きの表情を見せる野々宮珠世(島田陽子)。犬神佐兵衛の遺言が犬神家の全財産は、野々宮珠世が犬神佐清、犬神佐武、犬神佐智の中から配偶者を選べば彼女に譲られるとしていたことから、血で血を洗う莫大な遺産をめぐる争いのまっただ中に身を置くことになってしまった。
犬神佐清は徴兵されてビルマでの戦いに参戦したが、そのときに顔に酷い火傷を負ったために、白いゴムマスクをつけている。頭部全体を隠す無表情で不気味なマスクが使用され有名になった。
「佐清(すけきよ)」は戦争で顔を負傷しマスクをかぶっているため本人かどうか疑わしいと家族が言い出し争いになる。不気味な白マスク姿の佐清(すけきよ)はあまりにも有名なトラウマキャラ。
松子「佐清(すけきよ)、この薄情の人たちに仮面をめくっておやり!」…早くも本作品の「最恐の瞬間」が訪れる。
黒頭巾をかぶった異様な姿→不気味な白マスク姿→あまりにもグロテスクすぎる「佐清(すけきよ)」の素顔に視聴者は度肝を抜かれた。みんなのトラウマ。
ビルマ戦線で「どえらい傷」を負ったマスク姿の「佐清(すけきよ)」(正体は、青沼静馬)の素顔は原作では顎の辺りは無傷で鼻の代わりに赤黒い肉塊があるとされているが、本作では右側の顎の下にまで焼け爛れた傷があり、鼻も完全になくなっている。
佐武(すけたけ)(地井武男)の死体が発見される。/ 犬神家の家宝「菊」を見立てた殺人。猟奇的な連続殺人…血みどろの遺産相続の惨劇が始まった。
犬神家の家宝「斧(よき)、琴、菊」(よきこと聞く)になぞらえて起こっていく猟奇的連続殺人事件。
佐武(すけたけ)(演:地井武男)の死体が発見される。菊人形の生首と犬神佐武(すけたけ)の生首がすげ替えられていた。
恐れおののく金田一耕助「う、うわああああああああああ!ああああ!」佐武の生首がボトリと落下する。ホラー映画レベルの恐怖シーン。
佐智(すけとも)は、珠世(島田陽子)をレイプしようとするが…
「野々宮珠世」を厚遇するという佐兵衛の奇怪な遺言の影響で、佐武と佐智は、珠世を手に入れようと近づくが・・・
眠らせて珠世(たまよ)(演:島田陽子)を犯そうとする佐智(すけとも)。
謎の復員兵(実は本物の佐清(すけきよ))が助けに来て、佐智(すけとも)は復員兵にボコボコにされる。復員兵の男は、珠世を助けたのちに、犬神家に電話を入れ、猿蔵に珠世を引き取りにくるように伝えます。
翌朝、佐智(すけとも)の屋敷の屋根の上で、佐智の死体が発見される。/ 犬神家の家宝「琴」を見立てた殺人
翌朝、佐智(すけとも)の屋敷の屋根の上で、佐智の死体が発見される。佐智は琴糸で首を絞められていたが、付近に争った痕跡がないことから、別の場所で殺され、この場所に運ばれたと思われる。
佐智は琴糸で首を絞められていた。犬神家の家宝「琴」を見立てた殺人。
行方不明の佐智を探して天井裏に入り込んだ犬神小夜子が、明かり取りの窓を通して佐智を発見する。この佐智殺害の影響で彼女は正気を失ってしまう。佐智の死に様を盛り上げる小夜子の絶叫シーンは語り草になっている。ホラー映画の有名な絶叫クィーンにも負けないレベル。
佐智は「琴糸」で絞殺されるときの抵抗で松子(高峰三枝子)の指を噛み切った。
物を見ることはできない琴の師匠(岸田今日子)だが 、その分、ごく微妙な差異でさえも常人の数倍以上聴き分けてしまう。琴の師匠が佐智殺害時における松子のアリバイ崩しの証言をする。
琴の師匠は、松子婦人(高峰三枝子)の今日の演奏はいつもと、どこかが少し違うことを感じていた。佐智絞殺時に噛まれて負傷した指が演奏に影響を与えていたのだ。
青沼菊乃を痛めつけて家宝を奪い取る梅子(草笛光子)、竹子(三条美紀)、松子(高峰三枝子)の3人の娘が鬼畜すぎる。映画史に残る陰惨なトラウマシーン。
梅子(草笛光子)、竹子(三条美紀)、松子(高峰三枝子)の3人の娘は、青沼菊乃(大関優子=佳那晃子)を散々痛めつけて家宝を奪い返した。
菊乃が住む別宅に乗り込んできた激怒した佐兵衛の三人娘(松子、竹子、梅子)。三人娘は、菊乃を散々痛めつけて家宝を奪い返した。
梅子(草笛光子)、竹子(三条美紀)、松子(高峰三枝子)の3人に痛めつけられ、責め苛まれた青沼菊乃…あまりにも陰惨な虐待劇。
竹子「私たち3人は、3人とも母が違っております。 生涯父の正妻になれず、ただその時々の男の欲望を満たす道具として、父に飼われていたような3人の母でした」だが佐兵衛は、老いてから出来た愛人・青沼菊乃にだけは深い愛情を注ぎ、生まれた静馬に家宝の「斧琴菊」を与えてしまった。激怒した3人の娘たちは、ある日菊乃が住む別宅に乗り込んで行き、菊乃を散々痛めつけて家宝を奪い返した。
3人の娘たちに凄惨な仕打ちを受けた青沼菊乃・静馬の母子の復讐?
青沼菊乃は呪詛を吐く「お前たちを呪ってやる、必ず、必ず…恨みをはらす…」
竹子は、佐武(すけたけ)と佐智(すけとも)が殺害されたのは、青沼母子がその時の復讐をしているのではないかという。菊と琴糸は、「家宝を奪われた恨み」という意味ではないか、と。
佐兵衛は菊乃と産まれたばかりの静馬に家宝(犬神家の全相続権を示す家宝の斧(よき)と琴(こと)と菊(きく))を渡して、とある百姓家の離れに隠すが、居場所を知った松子たちに襲撃されてしまい、凄惨な仕打ちを受けた。そのことで菊乃は静馬を連れて佐兵衛の前からも那須地方からも姿を消した。
古館の調査で、青沼菊乃はすでに死んでいることがわかっているが、青沼静馬は戦争に行ったきりで、生きているのか死んでいるのかさえわかっていない。
早合点を繰り返す橘署長(加藤武)「よおし、わかった!犯人は青沼静馬だ!」
橘署長は、謎の復員兵が青沼静馬で、遺産を独り占めするために2人の孫を殺したに違いないと結論付ける。
その後も、犯行現場付近には、いつも珠世と猿蔵の姿があったため…「よーしわかった!犯人は、珠代だ。」「よーしわかった!犯人は、猿蔵だ。」「よーしわかった!犯人は、復員兵だ。」と犯人を間違い続けた。
加藤武は、『犬神家の一族 (1976年の映画)』『悪魔の手毬唄』を始めとする金田一耕助シリーズでは役名が毎回異なるものの、粉薬が手放せず、イチイチ大仰な身振りで「よしっ!分かった!」と手をポンと叩きながら早合点を繰りかえす警察幹部を好演した。
犬神家の一族(1976年) – 橘署長
悪魔の手毬歌(1977年) – 立花捜査主任
獄門島(1977年) – 等々力警部
女王蜂(1978年) – 等々力警部
病院坂の首縊りの家(1979年) – 等々力警部
マスク姿の佐清(すけきよ)の正体は? / 珠代(演:島田陽子)「松子おばさま、この人は佐清さんではありません」
松子「珠代さん、決心はついたわね?佐竹さんと佐智さんがあんなことになってしまった今、あなたが結婚する相手はこの佐清しかいないのよ。さあ、最後のお返事を聞かせて頂戴」
珠代(演:島田陽子)「お断りします」
松子「何ですって!?あなた自分が何を言ってるのかわかってるの?佐清との結婚を拒んだら、あなたは遺産に関するすべての権利を失ってしまうのよ?」
珠代(演:島田陽子)「松子おばさま、この人は佐清さんではありません」
マスク姿の佐清(すけきよ)の正体は、青沼静馬だった…衝撃的などんでん返し!マスク姿の偽佐清が「青沼静馬だよ…」と正体を明かすシーンは、映画史に残る恐怖のトラウマシーン。
松子「佐清、お前が私の息子じゃないなんて、そんなバカな。珠代の言ったことは嘘だよね?」
マスク姿の佐清(すけきよ)「フフフ・・・珠代の言ったことは本当だよ。あんたの大事な佐清さんは、とっくにどこかへ消えちまったよ!」
松子「お前は一体・・・」
マスク姿の佐清=青沼静馬「青沼静馬だよ。あんたとあんたの妹たちに痛めつけられ、責め苛まれた青沼菊乃の息子、静馬さ!お袋が死んだのは俺が9つの時だ。最後まであんたたちを呪っていた、この犬神一族をな。俺は自分に誓った、必ず復讐してやる、お袋の恨みを晴らしてやるってな!」
マスク姿の佐清が「青沼静馬だよ…」と正体を明かすシーンは、映画史に残る恐怖のトラウマシーン。
青沼静馬「いいヤツだったよアンタの息子は…戦争がひどくなってオレたちの部隊は離ればなれになった。ヤツの部隊は全滅した。オレも顔にどえらい傷を負って死にかけた…声も…
犬神一族への恨みだけがその時のオレを支えていたんだ‼︎オレは佐清になり代わって犬神家を乗っ取ってやろうとその時、決心したんだ‼︎ハッハハハハハハハ、アッハッハハハハハハハハ…」
偽の佐清の正体は青沼静馬だった。本物の佐清(すけきよ)の母親をかばう気持ちを利用して、母親の青沼菊乃の復讐をすると同時に犬神家を乗っ取ろうとしていたのだ。
返り血として顔面への大量の血しぶきを浴びる…松子(高峰三枝子)は、青沼静馬を斧で殺害する…映画史に残る凄惨なスプラッター演出として名高い。
勝ち誇っている青沼静馬「この家のものはひとつ残らず、俺のものだ。珠世も遺産も、何もかも!」「勝ったんだ!俺は犬神一族に勝ったんだああ!」
青沼静馬は手元に偶々あった斧で松子(高峰三枝子)に殺害された。凄まじい量の血しぶき…松子は返り血を浴びる。映画史に残るトラウマ必至の恐怖シーン。
犬神家に対して怒りと恨みを抱く青沼静馬に対して、松子夫人は逆上し、静馬の後頭部を背後から、斧で打撃した。松子(高峰三枝子)は、返り血として大量の血しぶきを顔面に浴びる。
斧による一撃の返り血…顔面への血しぶきを浴びる松子。
佐清の逆立ち死体…「波立つ水面から突き出た足」のシーン / にせスケキヨ=青沼静馬の逆立ち死体は、映画史に残る伝説の「死に様」
翌日、湖で佐清の逆立ち死体が発見される。映画史に残る伝説の死に様。一度見たら忘れられない。にせスケキヨ=青沼静馬は、足だけを突き出した奇妙な姿で発見された。
佐清の逆立ち死体を発見した犬神小夜子の名セリフ「面白いことしてるわねぇ、あたしも仲間にいれてよぉ」
佐智殺害で正気を失って徘徊していた犬神小夜子が湖上の倒立死体(にせスケキヨ=青沼静馬)を発見する。本物のウシガエルを抱える小夜子の名シーン。犬神佐清(にせスケキヨ=青沼静馬)の死に様は、足だけを突き出した奇妙な姿(逆立ち死体)。映画史に残るもっとも有名な死に様(印象的な死に方)。
これは「スケキヨ」を反転して「ヨキケス」とし、水没した頭側の二文字を消した「ヨキ」(斧(よき):犬神家の家宝「斧・琴・菊」の一つ)を表す一種の見立て殺人であった。
耕助は、佐清の指紋をもう一度取れと署長に進言する。鑑定の結果、佐清と思われた水死体の指紋は奉納手形とは一致しなかった。
水面から引き上げて、顔面に付いていた泥が洗われると、焼けただれたグロテスクな素顔が…。この顔面の損傷が激しい水死体=マスク姿の佐清の正体は、実は行方不明だった青沼静馬だった。
指紋を採取するこの時は、偽スケキヨの青沼静馬と本物の犬神佐清がすり替わっていた。
耕助「すりかわったんですよ。あの仮面を巧みに利用して、本物と偽者がすりかわっていたんですよ」
「じゃあ今朝の逆立ち死体は何者なんだ」
耕助「(青沼)静馬ということになりますね」
真相を語りだす金田一耕助 / 「佐清と珠世の結婚」という犬神 佐兵衛(いぬがみ さへえ)の望む結果になった。
金田一耕助「あなたと竹子さん、梅子さんの姉妹は遺産相続人からはずされていた。そこで、あなたは自分の息子の佐清君を珠世さんと強引に結婚させ、遺産を独り占めしようとして殺人を決行した。しかし、あなた、その珠世さんが佐兵衛翁の本当のお孫さんだということをご存じですか。」金田一耕助「僕はこう想うんです。あなたは、佐兵衛翁の望んだこと(佐清君と珠世さんが結婚して全財産を相続すること)をあなたの手で実行してしまったんですねぇ。」
佐兵衛の遺した遺言の真意…実は本当の孫である野々宮珠世に莫大な恩恵を与える遺言
佐兵衛の遺した遺言は、家族より恩人の「野々宮大弐」の孫である「野々宮珠世」を厚遇するという奇怪な内容だった。
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- 犬神家の全相続権を示す家宝『斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)』の3つを野々宮珠世(佐兵衛の恩人・野々宮大弐の孫)に与えて、珠世が佐清、佐武、佐智の佐兵衛の3人の孫息子の中から配偶者を選ぶこと。
- 珠世が結婚を拒んで相続権を失うか死んだ場合は、犬神家の財産は5等分され3人の孫息子は各5分の1ずつを相続し、残り5分の2を佐兵衛の愛人・青沼菊乃の息子の青沼静馬が相続すること。
物語の核心:隠されていた血縁関係(哀しき愛の形)…野々宮珠世の母の「野々宮祝子(のりこ)」は、実は野々宮大弐の妻「野々宮晴世」と「佐兵衛」の娘(長女)。ゆえに「野々宮珠世」は、佐兵衛翁の本当の孫であった。
佐兵衛は野々宮大弐の妻・野々宮晴世と恋に落ち、男女の関係になってしまう。大弐への申し訳なさから、佐兵衛と晴世は自殺を図るが、大弐に止められて、その後は大弐公認の仲となり密会を続け、やがて野々宮祝子(のりこ)が生まれた。つまり野々宮珠世の母の野々宮祝子(のりこ)は大弐の妻晴世と佐兵衛の娘。
佐兵衛にとって野々宮祝子(のりこ)こそ表沙汰にできぬ犬神家の長女であり、彼女は佐兵衛が最も愛した女性・野々宮晴世との子供だったが、立場上、佐兵衛は祝子を娘と呼ぶことはできなかった。
終生を日陰の花として送った野々宮晴世と佐兵衛の長女でありながら貧しい神官の妻で終わった野々宮祝子に対する佐兵衛の後悔と憐憫の情が野々宮珠世に莫大な恩恵を与える遺言につながった。
幼い頃から野々宮珠世と佐清が相思相愛であることを知っていた佐兵衛は、珠世と佐清を結婚させることで、珠世を犬神家の一族に迎え入れてその将来を安泰させ、良識的な佐清の性格からしても財産を独占しようとせず、佐武たちにも悪くはしないだろうと目論んでのことと思われる。野々宮珠世は、犬神家の家宝「斧(よき)、琴、菊」(よきこと聞く)を犬神佐清に渡した。犬神佐清が後継者に決まる。佐兵衛の目論見通りとなった。
自分勝手な性格のクズ人間が多い犬神家の中で「佐清」(すけきよ)は、唯一、優しくて良識的な好青年であり、犬神家への復讐に燃える闇落ちした青沼静馬が「いいヤツだったよアンタの息子は」と例外的に言うほどの好青年である。また母親の松子の罪を全部被ろうとするほど親思いでもある。
佐兵衛の本当の孫である「珠世」とはとてもお似合いのカップルであり、これで犬神家は安泰だろう。陰惨な遺産相続の事件だったが、善人中の善人である「佐清」と「珠世」の結婚という希望で終わるため、後味は悪くない作品となっている。比べると悪魔の手毬唄の方が悲劇性は高い。
三親等内の結婚が禁止されているだけで、四親等以降の傍系血族とは、結婚可能なので、佐兵衛の孫同士の結婚(いとこ同士)は、可能となっている。
3人の妾たちにとっては操と尊厳を蔑ろにされ、妾たちも佐兵衛の愛情はいらないが我が子に遺産がいくことを心の拠り所にするしかなく、松子、竹子、梅子の娘たちも母親たちの恨みを受け継ぐことになり、結果的に血で血を洗う遺産相続の惨劇を巻き起こすこととなった。
「スケキヨ…、珠世さんを父の怨念から…、解いておやり!」
珠世が佐清に家宝を贈り、佐清が犬神家の後継者に決まったことを見て安心した松子は、すべての罪を清算すべく、若林を殺した毒を仕込んだタバコを吸って自殺。
犯人と看破した金田一耕助は「しまったぁぁぁ!!…煙草だ…若林さんを殺したのと同じ毒がこの煙草に仕込んであった!」と松子の死を止められなかったことを悔やむように叫んでいる。
1976年公開の角川映画第1作『犬神家の一族』のテーマ曲「愛のバラード」は、この時代特有の感傷深い思いを感じる哀愁漂う旋律によって、鮮烈なオープニング映像の気品を、映画全体の格調を、ひいては物語の核心である哀しき愛の形を、的確に表現していた。この曲を聴くだけで、あっという間にトラウマ怪奇映画「犬神家一族」の世界観に浸れる怪しげで儚げなメロディが素晴らしい。物語の冒頭で流れた時は怖さを引き立てられ、ラストに流れた時には物語の悲哀さを引き立てる‥‥「犬神家の一族」に恐ろしいほどマッチした傑作。
悪魔の手毬唄(1977) / 映画史に残るミステリー映画の金字塔。ミステリー映画としてもホラー映画としても最高峰の傑作映画として名高い。
『悪魔の手毬唄』は1977年に公開された日本映画で、横溝正史の作品を映画化したものであり、製作は東宝映画、配給は東宝である。
物語は、由良家と仁礼家の二大勢力に分かれた鬼首村で発生した殺人事件に焦点を当て、金田一耕助が真犯人を探るというものであり、石坂浩二の金田一耕助シリーズ第二弾である。
悪魔の手毬唄 予告篇
恨みが積って二十年。青い沼に悪魔の数え唄が流れて、美しい死体がまたひとつ・・・名探偵金田一耕助が、岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村で起こった奇妙な殺人事件に巻き込まれていく…。
『悪魔の手毬唄』(あくまのてまりうた)は、1977年(昭和52年)4月2日に公開された日本映画。横溝正史作の同名長編推理小説の映画化作品。
映画史に残るミステリー映画の金字塔。ミステリー映画としてもホラー映画としても最高峰の傑作映画として名高い。
20年前に迷宮入りした「青池 源治郎殺害事件」…青池リカ(岸恵子)の旦那の青池 源治郎は、顔の判別も不能な状態で殺された…青池 源治郎と恩田幾三との関係は?
恩田幾三を詐欺師だと見抜いた青池 源治郎は、恩田が鬼首村での下宿先にしていた放庵の離れへ単身乗り込んでいき、逆に頭を殴られて殺されてしまった。発見したのは、夫の帰りが遅いのを心配したリカと、リカから事情を聞いた放庵。
金田一「死体は奥さんが確認したんでしょ」青池リカ(岸恵子)の旦那の青池 源治郎は、顔の判別も不能な状態で殺された…映画史に残るあまりにもグロテスクな顔の死体。視聴者にトラウマを刻み込んだ。
磯川「それがね、死体とゆうものがな…顔全体が焼けただれ、見分けがつかん状態だったんです」
青池 源治郎の顔は囲炉裏の火で焼けただれて判別がつかない状態だったが、着衣と体つきから、リカと放庵が青池 源治郎に間違いないと証言した。
磯川警部(若山富三郎)は、20年前に迷宮入りした「青池 源治郎殺害事件」の真相を調べるよう、金田一耕助に依頼する。
原作では「青池」は「アオイケ」と読むが、この1977年の劇場版は「アオチ」と読む。
腰が曲がった謎の老婆 / この老婆の本当の正体は誰か?
金田一耕助が亀の湯に滞在して2週間ほど経った8月10日。用事で山向こうの総社の町に向かう途中の耕助は、放庵の5番目の妻、「おはん」(原作では「おりん」)と名のる老婆と峠道ですれ違う。
おはん「ごめんくださりやせ。おはんでござりやす。お庄屋さんのところへ、戻ってまいりました。なにぶん、可愛がってやってつかあさい」
金田一は磯川の勧めで総社へ調査に行き、その途上で老婆に遭遇する。総社の井筒でおはん(原作のおりん)の死亡を聞いた金田一は磯川に電話して放庵宅へ先行してもらい、自分も急行する。
金田一「じゃあ僕が仙人峠で会ったあの老婆は いったい誰なんだ…。」
由良泰子の見立て殺人。あまりにも猟奇的な死に様。手毬唄の「枡屋の娘」になぞらえて殺害されている。
夜を徹した山狩りの末、翌朝、村はずれの滝つぼで、由良泰子(高橋洋子)の死体が発見される。
県警の立花警部補(加藤武)達が犯行現場に到着する。
泰子のあまりにも猟奇的な死に様を見て驚いている立花警部は絶句する「あっ、犯行現場…」
由良泰子の死因は首をひも状のもので絞められたことによる窒息死だが、口にはなぜか、漏斗を咥えさせられていた。
手毬唄の「枡屋の娘」になぞらえて殺害されている。
うちの裏の前栽に雀が三羽とまって
一羽の雀が言う事にゃ言う事にゃ
おらが在所の陣屋の殿様 狩好き酒好き女好き
わけても好きなが女でござる
女だれが良い升屋の娘 升屋器量よし
蟒蛇娘 升で量って漏斗で飲んで
日なが一日酒びたり酒びたり
それでも足りぬと返された
村出身の人気歌手・別所千恵(仁科明子)は、壁に映った老婆の影を見て叫び声を上げる。
不気味な腰の曲がった老婆の影。一体何者なのか?
この老婆の影は、金田一耕助が仙人峠で会った腰が曲がった謎の老婆と同じ人物である。壁に映った老婆の影
見事な絶叫クイーンの別所千恵「キャー!」
泰子の通夜が行われた晩、今度は仁礼家の娘の文子(永野裕紀子)が行方不明となり、文子の姿を探して屋敷の外に出た別所千恵(仁科明子)は、壁に映った老婆の影を見て叫び声を上げる。
アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作『サイコ』に出演した元祖絶叫クイーンのジャネット・リー並みの絶叫。1970年代から80年代は絶叫シーンが1つの恐怖演出方法として確立された時期だった。
本作の絶叫シーンはいずれも見事な迫真の演技であり、視聴者にリアルな恐怖感を大いに伝搬した。
この直後、青池里子(永島暎子)は老婆に扮した母親のリカを目撃してしまい驚きの表情を見せる。すべての犯行を悟り、翌日に文子の通夜に出かけるときから高祖頭巾の着用をやめた。
青池里子は、老婆に扮した母親の青池リカを見てしまい、すべての真相を悟る。
仁礼文子の見立て殺人。手毬唄の「秤屋の娘」になぞらえて殺害されている。本物の幽霊のような文子の死に様は、ミステリー映画史に残る恐怖のトラウマシーンとして名高い。最恐の瞬間。
昨夜、通夜の席から忽然と姿を消した仁礼文子が、仁礼家のぶどう酒工場で発見される。葡萄酒の樽に漬けられるという猟奇的なシーン。本物の幽霊のような恐ろしさ。1977年版『悪魔の手毬唄』の本物の幽霊のような文子の死に様はミステリー映画史に残る伝説のトラウマシーン。
辰蔵は仁礼文子の死体にまだ気づいていない…。辰蔵は何気なく後ろを振り返ると…「ああああああ…」と絶叫し気絶してぶっ倒れた。確かに気を失うレベルの恐怖。
仁礼文子の遺体を発見した辰蔵の叫び顔もなかなか怖い。気を失うレベルの絶叫シーンなので迫力がある。本物の死体を見たような真に迫っている。絶叫顔は、ホラー映画の醍醐味。ミステリー映画のレベルをはるかに超えた演技・演出。
文子の死体は醸造用の樽の中に漬けられ、上に大判小判が吊るされていた。
手毬唄の「秤屋の娘」になぞらえて殺害されている。
うちの裏の前栽に雀が三羽とまって
二番目の雀が言う事にゃ言う事にゃ
おらが在所の陣屋の殿様 狩好き酒好き女好き
わけても好きなが女でござる
女だれが良い秤屋の娘 秤屋器量よし爪長娘
大判小判を秤に掛けて
日なし勘定に夜も更けて夜も更けて
寝る間も無いとて返された
青池里子の見立て殺人。想定外の悲劇的な殺人…
金田一は、手毬唄の3番の詞を想定し、別所千恵の危険を察知するが、殺されたのは、別所千恵ではなく、青池里子だった…。
村はずれの峠道で青池里子の死体が発見される。 傍らには錠前と鍵が落ちていた。里子を殺した凶器は、砂を詰めた一升瓶。
背後から近づいた青池リカは、それが自分の娘の里子であるとは気付かずに撲殺してしまった。別所千恵ではなく、実の子の青池里子を殺してしまったリカ…。
手毬唄の3番の歌詞『女誰がいい 錠前屋の娘』になぞらえて殺害されている。
うちの裏の前栽に雀が三羽とまって
三番目の雀が言う事にゃ言う事にゃ
おらが在所の陣屋の殿様 狩好き酒好き女好き
わけても好きなが女でござる
女だれが良い錠前屋の娘 錠前屋器量よし小町でござる
小町娘の錠前が狂うた
錠前狂えば鍵合わぬ鍵合わぬ
鍵が合わぬと返された
20年前の「青池源治郎殺害事件」の被害者は一体誰なのか…恩田 幾三?青池源治郎?
恩田幾三と青池源次郎二人の写真がない!これは何を意味するのか?
2つの見立て殺人とは別に、迷宮入りした20年前の事件の調査を進めていた耕助は、加害者・恩田の写真も、被害者・源次郎の写真も、捜査資料の中に残されていないことに気付く。
恩田の場合は、本名がわからなかったために、正式な身元調査ができなかったこと、源次郎の場合は、鬼首村に戻るにあたり、弁士時代の思い出の品はすべて焼き捨ててしまったことが原因だった。
20年前の被害者が確かに青池源次郎であることを確かめるには、身体的特徴を調べるのが一番だと耕助に指摘された磯川は、恩田と一番親しかった人物、別所春江(渡辺美佐子)に会いに行く。
磯川「恩田の何か肉体的な特徴ちゅうものはなかったっすかの?」
別所千恵の母・春江に恩田 幾三(おんだ いくぞう)の身体的特徴を聞くと「足の中指が人よりも長かった」と答えます。
別所春江は、恩田の写真は持っていなかったが、身体的特徴ははっきりと覚えていた。恩田の足の指がとても変わっており、左右ともに中指が異常に長かったと言う。
磯川常次郎(演:若山富三郎)は、20年前の事件で死体を検案した地元医師・権藤(大滝秀治)に、「青池源治郎殺害事件」の死体の写真(スクラップブック)を見せてもらう(グロい死体写真だらけ)。
目的の写真を見つけた磯川「これだ!」…確かに、死体の両足の中指がかなり長い。
磯川「この死体の足の中指は、普通の人間より長いと思いませんか?」
権藤「ああ、異常に長かったのをはっきり覚えとるわ」
磯川「しかし検死調書には、そのことは書かれていなかった!」
権藤「ふん!そんなことは死因に関係ねえだろ!」
そこに金田一が来た。
磯川「金田一さん、殺されたのはやっぱり恩田だった。」
金田一は磯川が髭剃りに使った鏡に写った蜜柑を別の1個と錯覚したことをヒントに「一人二役」に気づく。金田一は「青池源治郎=恩田 幾三」(一人二役)という証拠(物的証拠となる源治郎の写真)を手に入れるために、神戸へ向かう。
野呂「大河内伝次郎傑作時代劇三本立てのお前これ、特別興行の案内状じゃないか。馬鹿だねーあいつぁー。この方が探してるのは写真だよ。青柳洋次郎の。おっ、ここにいるのは青柳だよ」
金田一「ヘっ!?」
野呂「4人ほど弁士の顔写真が印刷されてあるだろう。その一番右のがそうだよ」
野呂「この興行はな、有名な弁士を集めて共演させるのが呼び物のひとつでもあったんだな」
金田一は、神戸で無声映画の弁士時代の芸名:青柳洋次郎(青池源治郎)の写真をとうとう手に入れて、村へ戻る。
恩田幾三と青池 源治郎は同一人物(一人二役)…犯人が分かる伝説の見せ場の「写真鑑定シーン」
磯川常次郎(演:若山富三郎)は金田一の依頼で、恩田幾三と関係があった由良敦子・別所春江・仁礼(鳥取に嫁に出て性が変わり「司」)咲江の3人を権堂医院に集め、狙われた娘たちがすべて恩田のタネであったことや手毬唄の内容を説明しているところへ金田一が写真を持って到着し、恩田と源治郎が同一人物であることを確認する。
金田一が神戸で入手した無声映画の弁士だった青柳洋次郎、つまり青池源治郎の写真。
恩田幾三は偽名であり、青池源治郎の一人二役。この写真は、恩田と源治郎が同一人物である証拠の品。
金田一耕助は、「小さくて恐縮なんですが、3人で回してご覧になってください。右の人です。写真の主はひげを生やしておりませんが、一つ鼻の下にひげがあるものとして鑑定していただきたいんです」と言って、神戸で手に入れてきた1枚の写真を3人に見せる。
写真を見た仁礼(司)咲江は悶絶…びっくりする…。伝説の名シーン。写真を見た3人の奥様ともびっくり。迫真の名演技。
由良敦子「あんた、どこでこがいな物手に入れんさった!?これは恩田幾三の写真ですがな!」
由良敦子奥さんから、金田一が求めていた回答が早速出て来た。
びっくりする磯川「恩田の写真じゃと?」
金田一耕助「咲江奥さん、あなたはあの写真の主を誰だとお思いですか?」
仁礼(司)咲江「確かに、今敦子さんがお言いんさった人じゃと」
金田一耕助「春江奥さん、あなたのご意見は?」
涙を流す別所春江「はい…千恵の父です。決して間違いございません」
3人の奥さんの対応が三者三様なのも見どころになっている。
金田一耕助「皆さん、この写真は恩田ではなく、無声映画の弁士だった青柳洋次郎、つまり青池源治郎の写真なんです」
驚きを隠せない磯川「そ、そ、それじゃあ、恩田幾三と源治郎とは同一人じゃったんですか?」
金田一耕助「ええ」
恩田幾三の正体は、かつて神戸で人気を博した活弁士「青柳洋次郎」、すなわち殺害された「亀の湯」の主人・「青池源治郎」本人であった。
詐欺師・殺人犯の容疑をかけられ指名手配された恩田幾三が、警察の必死の捜索にも関わらず行方知れずになったのは、被害者・青池源治郎として既に死亡していたからであった。
物語の核心(トリック):恩田幾三は偽名であり、青池源治郎の一人二役であった。真犯人は、「青池リカ」だった。哀しき殺人者…青池リカが悪魔になってしまった理由…「恩田幾三=青池 源治郎」の血を引く3人の娘「泰子」「文子」「千恵」を全員殺してしまおうと思い立つ。
なんと恩田幾三と青池 源治郎は同一人物だった。恩田幾三は偽名であり、青池源治郎の一人二役であった。
事件の真相を理解した磯川「金田一さん…犯人は…リカさんか…」
無言でうなずく金田一。驚愕の真相…犯人は「青池リカ」だった。
20年前に迷宮入りした「青池 源治郎殺害事件」の真相:恩田幾三こと青池源治郎を殺害した犯人は、彼の妻である「青池リカ(岸 惠子)」であった。そして「泰子」「文子」「里子」の3人を殺したのもリカであった。
仲良し4人組は、皆、恩田幾三(=青池源次郎)の子。歌名雄(かなお)が、腹違いの妹である泰子と結婚したいと言い出したのだ。それは不可能なこと。近親相姦だ。本当の理由は説明できないリカがいくら反対しても説得力がない。いくら反対しても歌名雄は結婚をあきらめようとしない。そして今度は、もう1人の妹である文子までが結婚を申し込んできた。そんな時、千恵が村に帰ってくるという知らせが入る。
里子の異母妹への妬みも積もっていた。文子、泰子、千恵子らが幸福な人生を謳歌しているにもかかわらず、源治郎の正妻であるはずの自分の娘・里子が生まれながらの赤痣をコンプレックスにして人目を避けながら不遇な日々を過ごしているという現実が、精神的鬱屈としてリカを苦しめた。特に、国民的スターとして一世を風靡する別所千惠は、かつて三味線奏者として芸能界に身を置いていた彼女にとって、苛立ちと嫉妬心をより一層かきたてる存在であった。
青池リカは、これを機会に、「恩田幾三=青池 源治郎」の血を引く3人の娘「泰子」「文子」「千恵」を全員殺してしまおうと思い立つ。
リカは、泰子と文子を手毬唄の「枡屋の娘」「秤屋の娘」になぞらえて殺した。あとは、千恵を殺せば、目的は達成できるはずだった。ところが、泰子の通夜の晩、里子が老婆に化けた母を目撃してしまった。
翌日文子も殺され、里子は母が連続殺人の犯人であることを確信し、それを、体が弱いのを理由にいつまでも蔵に閉じこもってばかりいる自分を不憫がってのことだと勘違いした。頭巾を取って外出したのは、「自分はもう母や兄には頼らないから心配するな」というメッセージのつもりであった。そして密かに母を観察し、母がこっそりと千恵のバッグに手紙をしのばせるのを目撃した。千恵と自分のバッグをすり替えて、中の手紙を読んだ里子は、待ち合わせの場所へ行って母を止めようとした。
だが、背後から近づいたリカは、それが自分の娘であるとは気付かずに撲殺し、手毬唄の3番の歌詞『女誰がいい 錠前屋の娘』になぞらえて、別所家の屋号である錠前をその場に残して立ち去ったのだった。
20年前の「青池源治郎殺害事件」の真相…逆上した青池リカは我を忘れ、その場にあった薪で青池源治郎の頭を殴りつけて殺してしまった。
20年前、トーキー映画が始まって失業してしまった青池源治郎は、恩田幾三という偽名を使って月に1度鬼首村に現れ、モール作りの売り込みを始めた。その後、亀の湯の次男として村に戻ってきた源治郎は、井筒屋や放庵の離れを利用して1人2役を演じ続け、由良敦子、別所春江、仁礼咲江との逢引を重ねた。
そんな源治郎の企みに気付いた人物がいた。離を貸していた庄屋の末裔・多々羅放庵だ。
リカ「夫が恩田の化けの皮を剥がすと言って出ていった後、お庄屋(放庵)が入って来たんです。お庄屋は、夫のからくり(一人二役)を世間にバラされたくなかったら、自分の言うことを聞けと私に言い寄りました。」
放庵から事実を聞かされたリカは、恩田幾三の鬼首村での住処である放庵の離れに乗り込んでいった。すると、青池源治郎はリカに詫びるどころか、身重のリカと歌名雄を亀の湯に残して、別所春江とともに満州へ行くつもりだとぬけぬけと言い放った。
散々裏切られた夫の源治郎への愛憎によって徐々に精神を蝕んでいった身重のリカは、とうとう爆発してしまった。源治郎を衝動的に殺してしまった。発作的に行われた無計画な殺害であったが、放庵の協力もあり迷宮入りさせることに成功した。
逆上したリカは我を忘れ、その場にあった薪で源治郎の頭を殴りつけて殺してしまった。前に倒れた源治郎は、囲炉裏の炎に顔を突っ込んだ…。
源治郎の顔面が囲炉裏の炎で焼かれ、ひどく損傷していく…。あまりにもグロテスクなトラウマシーン。
一部始終を陰で見ていた放庵は、殺害現場に乗り込んできて、返り血に染まっているリカを無理やり手込めにしてしまった。
以降、放庵は、すべてを秘密にする代わりに、リカの体と生活の面倒を要求した。
リカは、犯行を自供後、沼に入って自殺を測る。人食い沼で見つかった水死体=真犯人(リカ)の顔を見て驚愕する歌名雄。
青池リカは人食い沼に身投げをして自殺していた。犯人の死体が沼から引き上げられたと聞いて、駆けつける歌名雄。磯川は歌名雄を止めようとする。
歌名雄「放してくれ!殺した奴の顔を見たいんだよ!」
金田一が近づいて言う、「磯川さん、歌名雄君の好きなようにしてあげたらどうでしょうか。」
恋人を殺された歌名雄は犯人の顔を見ようとする。真犯人の顔(母親のリカ)を見て驚愕する歌名雄。母親のリカであることを知って号泣する。「嘘やー!!母さん、母さん!」。絶叫が響き渡る「母さん…母さん…」。
獄門島(1977年) / 犯人を原作とは変えた事が話題となった…
獄門島 予告篇
本鬼頭と分鬼頭が対立する獄門島へ来た、金田一耕助が、連続殺人事件にまきこまれる姿を描いた作品。
終戦直後の引き上げ船で死んだ男・鬼頭千万太。彼は戦友に「俺が島に戻らなければ妹たちが殺される!」という臨終の言葉を残していた。彼の遺書を預かった金田一は、その戦友に代わって獄門島と呼ばれる島を訪れるが、果たして、俳句の言葉に見立てた奇怪な殺人事件が起こってしまう……。
『獄門島』(ごくもんとう)は、1977年(昭和52年)8月27日に公開された日本映画。横溝正史作による同名の長編推理小説の映画化作品の一作であり、市川崑監督・石坂浩二主演による金田一耕助シリーズの3作目にあたる。
本作における事件の謎を解くのに極めて重要な鍵として、俳句用語である「季違い」と「気違い」の聞き間違いというものがあるが、最近のテレビ放送においては過度の表現の自主規制が行われているために問題が生じる場合がある。
例えば、1977年版の映画が後年テレビ放送された際、「キチガイ」という音声が消されたり「ピー音」がかぶせられたりするなどの処理がなされ、原作未読の視聴者にとってはなぜ金田一が謎を解けたのか理解できない状況となってしまったことがあった。しかし、近年におけるBS放送での放映では、「現代からすれば不適切な用語・表現などが含まれるが、作品のオリジナリティーを尊重してそのまま放送した」などの断り書きを表示して、音声処理を施さないオリジナルで放送されることも多々みられる。
鬼頭花子(一ノ瀬康子)の見立て殺人
鬼頭花子(一ノ瀬康子)は、寺の庭では花子が足を帯で縛られ梅の古木から逆さまにぶら下げられて死んでいた。
鶯の身をさかさまに初音かな (宝井其角)
金田一は了然和尚が念仏を唱える中「きちがいじゃが仕方がない」とつぶやくのを耳にし、和尚は発狂した千万太の父を犯人と思っているようだが、それなら「きちがいだから」であるべきはずで、なぜ「きちがいじゃが」なのかといぶかる。
重要トリック:俳句用語である「季違い」と「気違い」の聞き間違いだった。3つの殺人事件は、3つの俳句に見立てた殺人だった。
鬼頭雪枝(中村七枝子)の見立て殺人
鬼頭雪枝(中村七枝子)は、3姉妹の次女の雪枝が首を絞められて釣鐘の中に押し込まれていたのであった。テコの原理で棒を使って釣鐘を持ち上げる。
むざんやな冑(かぶと)の下のきりぎりす(松尾芭蕉)テコの原理で釣鐘を持ち上げていた棒が外れて、釣鐘が落下し、なんと、鬼頭雪枝の首が切断され、首チョンパに。
鬼頭雪枝の首が切断されて、首チョンパに。転がっていく生首を見て、周囲から悲鳴が上がった。
かなり悪趣味な演出だが、当時は、残酷描写の手法として、首チョンパが流行っていた。
鬼頭月代(浅野ゆう子)の見立て殺人
屏風の俳句が全てだったんですと了然に言う金田一。鬼頭嘉右衛門の意志(三人娘を殺す殺害動機・理由)を継いだ了然和尚と勝野(司葉子)が実行犯。
「あなたが花子さんの死体のそばで呟いた言葉をあの時理解できたら、僕は雪枝さんや月代さんを殺さずに済んだかもしれません」
「わしが何を言った」
「きちがいじゃが仕方がない。僕は和尚さんが犯人を与三松さんだと思われたので、そう呟いたのだと思いました。ところが和尚さんの言われたきちがいの「き」は気ではなく、季節の季だったんです」
「……」
「花子さんを殺し、梅の古木に逆さづりにしたのはあなたです。あなたは花子さんの死体で「鴬の身を逆さまに初音かな」を見立てられた。しかし句は春なのに今は夏。それを「季ちがいじゃが仕方ない」と嘆いていたわけです」
「わしがどうして本鬼頭の娘を殺さなくてはいけない」と言う了然。「それは和尚さんの意志ではない」と言う金田一。「なら誰だ」と言う等々力に「鬼頭嘉右衛門さんです」と言う金田一。「馬鹿なことを言うな。嘉右衛門はすでに死んでる」
「嘉右衛門さんにはお小夜さんへの激しい憎悪があった。嘉右衛門さんは本鬼頭を千万太さんに継がせたかった。もし千万太さんが帰還しない場合は分家に一(ひとし)さんに継がせようと思った。それにはお小夜さんの三人娘が邪魔になる。その始末を和尚さんに頼んだ。俳句に託して」
雪枝と月代の死因は絞殺だと言う金田一。「和尚さんはリューマチだ。片手だけで絞めるのは不可能だ。そして勝野さんにはアリバイがありません」
嘉右衛門の臨終に立ち会い、そこで千万太が死に、一が帰ってきたら、一を本鬼頭の跡取りにして、三人娘を俳句仕立てに殺してくれと頼まれたことを思い出す了然。
勝野が雪枝と月代を殺したのかと呟く等々力に「わしは勝野を巻き込みたくなかった」と言う了然。
嘉右衛門が了然に頼んでいるのを聞いてしまったと早苗に言う勝野(司葉子)。
鬼頭早苗(大原麗子)「じゃあ、戦地の千万太さんに知らせたのもお母さんだったんですか」
勝野(司葉子)「千万太さんが帰ってくると恐ろしいことが起きずにすむ。そう思って便りしたんや。でも千万太さんは帰らず、和尚さんが嘉右衛門さんとの約束を果たそうと花子さんを殺した。私は和尚さんの身代わりになりたかった」
鬼頭早苗「私はお母さんが和尚さんを誰より頼りにしてることを知っていた。そして和尚さんもお母さんに優しかった」
勝野「だから私は雪枝さんと月代さんを殺したの」
鬼頭早苗「言わないで」
この作品のヒロイン鬼頭早苗(大原麗子)は、金田一耕助が生涯愛した女性の1人として知られる。金田一は獄門島を離れる際、早苗に「島を出て一緒に東京へ行きませんか」とプロポーズとも取れる言葉を掛けている。しかし、早苗は「島で生まれたものは島で死ぬ。それがさだめられた掟なのです。もうこれきりお眼にかかりません。」と島に残る決意を固めており、金田一は振られてしまうという結果に終わっている。
勝野「でも昔の苦しみに比べれば。私の家は貧しい農家でした。早くに父を亡くし、母とともに四国路の旅に出ました。その途中で母は死に、私は和尚さんに拾われたんです」
勝野の幼少期を荻野目洋子と荻野目慶子が演じ分けていた。小さい少女時代に荻野目洋子、大きい少女時代に荻野目慶子が起用されていた。
「わしらは目に見えん大きな力に動かされてきた」と勝野に言う了然。
「嘉右衛門さんかもしれん。そうでないかもしれん」
「早苗と親子の名乗ができて、こんな嬉しいことはありません」
了然和尚は、勝野の手をとる…天狗鼻から身を投げる了然と勝野。
女王蜂(1978年) / 東小路家への復讐と大道寺智子への愛の狭間で…
女王蜂 予告篇
伊豆天城の月琴の里にある大道寺家の美しい娘・智子の求婚者が次々と惨殺された奇妙な事件の謎に挑戦する金田一耕助の姿を描いた怪奇ミステリー。出演は石坂浩二、岸恵子、高峰三枝子ほか。
『女王蜂』(じょおうばち)は、1978年(昭和53年)2月11日に公開された日本映画。横溝正史作の同名の長編推理小説の映画化作品の一つである。製作は東宝映画、配給は東宝。監督は市川崑、主演は石坂浩二。
市川・石坂による金田一シリーズの過去3作の犯人役である『犬神家の一族』の高峰三枝子、『悪魔の手毬唄』の岸惠子、『獄門島』の司葉子を共演させることとなり、話題となった。
「大道寺智子…彼女は女王蜂である。慕いよる男どもをかたっぱしから死にいたらしめる運命にある。…」
大道寺智子(演:中井貴恵)の求婚者が次々と殺された。
昭和二十七年、伊豆天城の月琴の里にある大道寺家の大時計で、大道寺智子の求婚者の一人、遊佐三郎が廻る歯車に体を引き裂かれ死んでいた。
劇場版では、原作と同様に、大道寺琴絵(演:萩尾みどり)と、その娘で大道寺智子(演:中井貴恵)が、女王蜂であるという設定。
大道寺智子がたてた茶を飲んだ赤根崎が突然その場で死亡
東小路隆子主催の茶会が開かれる。その茶会で、智子がたてた茶を飲んだ赤根崎が突然その場で死亡する。解剖の結果、胃から多量の青酸カリが検出された。智子(演:中井貴恵)「私の祖母がお茶の先生をしていましたので。」
赤根崎から智子がたてたお茶をいただくが…口から血を垂らす…お茶に毒が入っていた為に赤根崎は絶命してしまった。
等々力警部から赤根崎の胃の中から多量の青酸カリが検出されたと聞く。どうやらお茶や湯の中では無く、すり替えられた茶筅に毒が付着していた模様。
大道寺智子を暴行しようとした九十九龍馬は太刀で刺殺される。
九十九龍馬は、智子が実父の死亡の秘密をさぐっているのを利用し、自宅の密室に誘いこみ暴行しようとしたが、何者かに太刀で刺殺される。九十九龍馬が智子の隣で目的を果たす前に殺される。
九十九龍馬は、智子に父親(仁志)の死の秘密を教えるという口実で、上手く誘い出した。
「お前が欲しかった」と欲望を剥き出しの九十九龍馬。
大道寺智子を振り回して気絶させ、服を脱がしていき、これから犯そうとしている最中に、天井から3本も短刀が投げ込まれ背中に命中し絶命した。
大道寺銀造の東小路家への怨みが爆発し、東小路仁志=日下部仁志を殺害
大道寺琴絵(演:萩尾みどり)に心を奪われる大道寺銀蔵だが、「日下部仁志=東小路仁志」と琴絵は愛し合っていた。
父を奪ったという銀造の東小路家への怨みは、琴絵も東小路家の仁志に奪われたことで、東小路家を滅亡させるという殺意となって爆発し、仁志を殺害した。
狂気にとらわれた銀蔵は、「君は…琴絵さんを…幸せにはできなぁぁぁい!」と叫んで、仁志の頭を強打してかち割って殺害する。血しぶきが舞い上がる。部屋に入ってきて、仁志の死体を見て驚く琴絵。
琴絵「ギャァァァァア!!」
大道寺智子(演:中井貴恵)を愛し始めていた大道寺銀造は次々と許婚者を殺した。
大道寺智子(演:中井貴恵)を愛し始めていた大道寺銀造は次々と許婚者を殺した。
智子(演:中井貴恵)は憎き東小路家(仁志)の血が流れる子であるが、それ以上に愛した大道寺琴絵(演:萩尾みどり)の子であり、琴絵にますます似てきた智子を銀造は愛し始めていた。
東小路家の主人は、仙波の止めるのも聞かず、馬を走らせ女の子を跳ね殺した。仙波はその罪をなすりつけられて投獄される。東小路家から僅かな金を与えられただけで、仙波は獄死してしまう。
そんな仙波には、男の子があった。それが大道寺銀造である。まだ少年であった彼の心に東小路の名がやきついた。成長し、高等学生となった銀造は、頼朝伝説にひかれて月琴の里を訪れた。そして、琴絵に会い、恋情を激しくかきたてられる。しかし、不幸なことに、仁志と琴絵は愛し合っていた。父を奪ったという銀造の東小路家への怨みは、東小路家を滅亡させるという殺意となって爆発した。仁志を殺し、琴絵が残した智子をも殺そうとした時、許婚者が現れたのだ。しかし、許婚者二人を殺したものの、智子を愛し始めていた銀造は、彼女を殺そうとした九十九龍馬をも殺してしまう。
銀造がすべての罪を認めた時、神尾秀子が彼に近づき、自分が犯人であると絶叫する。彼女の話を止めようとした銀造に、秀子は編み物袋に隠しもっていた銃を発砲する。
銀造を愛するが故に、罪をかぶろうとした秀子は、自ら胸を射ち銀造の死体の上に折り重なる。
病院坂の首縊りの家(1979年) / 哀しき悪役…悲劇的な結末。法眼由香利と山内小雪役は桜田淳子が一人二役で演じている。
病院坂の首縊りの家 予告編
「病院坂の首縊りの家」と呼ばれる廃屋での連続殺人事件を解決する。金田一耕助の最後にして最大の事件を描いた作品。出演は、石坂浩二、佐久間良子、桜田淳子ほか。
『病院坂の首縊りの家』(びょういんざかのくびくくりのいえ)は、1979年(昭和54年)5月26日に公開された日本映画。市川・石坂の映画版シリーズ第5作。
花婿だった男(山内敏男)の生首が風鈴のように吊り下げられていた。
「病院坂の首縊りの家」と呼ばれる古い館に、人間の生首が風鈴のように吊るされるという猟奇事件がぼっ発…
写真館を訪れた金田一にその写真館の主人・本條徳兵衛(小沢栄太郎)は、殺されそうになったので調査して欲しいと依頼する。金田一が写真を撮ったその日、女性(桜田淳子)が写真館を訪れる。その女性は「結婚写真を撮りたいのである場所に夜来て欲しい」と告げ、消えて行った。そのある場所とは、他に正式な名前がありながら、ある時から「病院坂」と呼ばれるようになった場所にある、誰もが空き家と考えていた家であった。その日の夜、男(あおい輝彦)が写真館を訪れ、その廃屋とも呼べる場所で写真を撮る。そして写真が出来上がる日、廃屋を再び訪れた写真屋の若主人・直吉(清水綋治)は、風鈴のように吊り下げられたその男の生首を発見することとなる。
警察では捜査本部が設けられ、等々力警部(加藤武)の指揮のもと捜査が開始される。写真に写り、殺されていた男は山内敏男で、ジャズバンドのメンバーであった。そのバンドメンバーとして妹の小雪(桜田淳子)、吉沢(ピーター)などの名前が浮かんでくる。等々力警部の捜査が続く中、写真館の主人本條、バンドメンバーの吉沢などが殺されていく。自分に調査を依頼していた本條の死を聞いた金田一は呆然とする。
写真館で下働きをしていた黙太郎(草刈正雄)の協力の下に、金田一は調査を行っていく。そこで浮かんできたのは、昔ながらの風習と人の業によって苦しめられた、様々な人たちの悲しい人生であった。殺された法眼家の娘・由香利と山内敏男の妹・小雪が瓜二つというトリックや、その2人の出生の秘密などの謎が絡み合い、物語は悲劇的結末へと向かっていく。
諸悪の根源・元凶の五十嵐猛蔵は、15歳の時の法眼弥生(佐久間良子)を犯し、弱みを握り、法眼病院を思うままにする。
五十嵐猛蔵は恐ろしいと言う金田一に猛蔵はとっくに死にましたと言う法眼弥生(佐久間良子)。
金田一「いや。あなたはまだ猛蔵の支配から抜けていない。それはたった一枚の写真があるからです」
弥生「何のことです」
金田一「その写真をめぐって殺人が行われたんです。犯人はあなたです」小さな箱を見せる金田一。
金田一「この箱の中にその乾板が入っています」弥生を本條写真館の徳兵衛が、写真の乾板を以って金銭的に脅迫していた。
弥生「あなたはそれを見たんですか」
金田一「ええ。あなたが猛蔵に犯されている写真です」
弥生「……」
15歳の時、五十嵐猛蔵によって犯された弥生は、その姿を猛蔵の命令によって当時の本條写真館の主(徳兵衛の親父)によって写された上妊娠し、翌年女児を出産したが、それが、5年前病院坂にある法眼屋敷で首を縊った山内冬子だった。
金田一「この乾板は僕以外に見てません。乾板の渕には大正2年1月14日、本条紋十郎と書かれていました。あなたが15歳の時です。あなたは妊娠して女の子を出産した。それが冬子さんです」
弥生「それをどうして」
金田一「あなたも気づいたはずだ。小雪さんの持っていた冬子さんの遺品の風鈴を見た時に」
弥生「……」
金田一「そのことは小雪さんから聞きました」
金田一は水沢で冬子を取り上げた産婆の家でそれを確認してきたのだ。その事実をネタに猛蔵の言うままに、イトコである法眼琢也に嫁いだ弥生だったが、その弥生を本條写真館の徳兵衛が、写真の乾板を以って金銭的に脅迫し、そして、徳兵衛なきあとは直吉が後を継いだのだった。徳兵衛を殺害し、空き屋敷に直吉をおびき出した上で殺そうとしたのは、弥生だった。
山内小雪と山内敏男は母親・山内冬子の復讐をするために法眼由香里を誘拐したが、誤まって殺してしまう。
山内冬子は、法眼弥生が15歳の時に、義父(母・千鶴の再婚相手)の五十嵐猛蔵に犯されて妊娠し、産み落とした子。
弥生の子である山内冬子が弥生の夫の琢也の愛人をやっているという恐ろしい偶然。
気の強い由香利は、母の弥生を尋ねにきた山内冬子を門前払いした。
由香利「父(法眼琢也)の愛人の冬子を母に会わせるわけがない、乞食…金が無くなったからせびりにきたんでしょう・・」
そして弥生と再会できなかった冬子は病院坂にある法眼屋敷で自殺した。
金田一「冬子さんには子供がいたんじゃないですか」
五年前の事件の担当だった加納刑事「そう。男の子と女の子。男の子は敏男。女の子は小雪。ぶらさがった死体の下に二人の子がいましてねえ」 母親・山内冬子の復讐をするために小雪と敏男は由香里を誘拐したが、誤まって殺してしまう。
ショックを受けた敏男は硝子の破片で自分の首を切る。
小雪「兄さん」
敏男「小雪。俺の最後の願いを聞いてくれ。俺の首を切れ。それをあの家に吊るすんだ」
小雪「兄さん。何言ってるの」
敏男「俺の気持ちを貫きたいんだ。俺のかあさんやお前に対する思いを」
事切れる敏男。
思い余った小雪は由香利が死んだと弥生に電話する。
急いでガレージに行った弥生は由香利の死に悲しみ、小雪が由香利そっくりなのに驚く。そして小雪の話を聞いた弥生は小雪の境遇に同情し、心を鬼にして敏男の首を切断し、法眼屋敷に吊るす。
麻薬からさめかけた由香利は逃げ出そうとしたが、敏男ともみ合ううちに、頭を強打して死んでしまう。
そっくりの山内小雪(桜田淳子)と法眼由香里(桜田淳子)は入れ替わっている
法眼由香里と入れ替わっている「山内小雪」に気を付けてと言う弥生。弥生は、法眼家の行く末を小雪に託す。
弥生「誰が何を言っても由香利でいるのよ」
小雪「私には耐えられそうもありません」
弥生「私は由香利の代わりにあなたに法眼家を継いでもらうつもりです。あなたが由香利そっくりだと言うのが私のたった一つのよりどころなんです」
小雪「……」
弥生「でも敏男さんは冬子さんの実の子でないのによく」
小雪「ええ。兄は私以上に母に尽くしていました。風鈴の鳴る日は必ず父が訪ねて来ると信じ、冬でも風鈴を軒下に飾ってました」
弥生「敏男さんのことを忘れられる?」
小雪「兄と一緒にバンドを組んでドサ周りをしました。つらかったけど楽しかったです」
山内小雪(桜田淳子)は、法眼弥生の夫である琢也と山内冬子(実は弥生の子)の子供なので、弥生と琢也の子である法眼由香里(桜田淳子)に瓜二つなのだった。弥生が犯人であることを証明する証拠品である忌まわしい乾板を叩き割る金田一。弥生をかばい、証拠隠滅を図ったが…。
弥生(佐久間良子)は自害していた。舌を噛んでうっすらと血を流す弥生の姿があった…。
弥生「(娘の山内)冬子が待っている・・・」
三之助「奥様。着きました」
その他の70年代以降の「金田一耕助シリーズ」の映画作品(4作品)
このまとめでは、本陣殺人事件(1975)、八つ墓村(1977)、悪魔が来りて笛を吹く(1979)、悪霊島(1981)の4作品の名場面・トラウマシーンをご紹介。
本陣殺人事件(1975年) / 猟奇的な密室殺人事件の謎。70年代にブームを巻き起こした横溝正史=金田一耕助ものの先駆となった伝奇推理ロマン。
鈴子の葬列に遭遇した金田一が1年前の事件を回想する構成になっており、回想は婚礼当日の花嫁到着待ちから始まるが、内容は概ね原作に忠実。金田一耕助が挑む、猟奇的な密室殺人事件の謎! 70年代にブームを巻き起こした横溝正史=金田一耕助ものの先駆となった伝奇推理ロマン。
『本陣殺人事件』は1975年9月27日に公開された。ATG、たかばやしよういちプロダクション、映像京都、監督は高林陽一。出演:中尾彬/田村高廣/新田章/高沢順子/東竜子/伴勇太郎/山本織江/水原ゆう紀。一柳家の屋敷では、長男・一柳賢蔵(いちやなぎ けんぞう)と小作農の出である久保克子(くぼ かつこ)の結婚式が執り行われていた。式と披露宴は、賢蔵の妹・鈴子が琴を披露するなどして何事もなく午前2時前にお開きとなった。
その2時間ほどのち、明け方に近くなった頃、新郎新婦の寝屋である離れ家から悲鳴と琴をかき鳴らす音が聞こえてきた。父代わりに克子を育てた叔父の久保銀造らが雨戸を壊して中に入ると、賢蔵と克子が布団の上で血まみれになって死んでいた。久保克子(くぼ かつこ)は、女学校の教師。ある集会で講演をしていた一柳賢蔵(いちやなぎ けんぞう)と出会い、結婚するが、離れ家で賢蔵と共に死んでいるのが発見された。
磯川警部(東野孝彦、後の東野英心)は婚礼の前日、一柳家を尋ねて来た三本指の男(常田富士男)に疑いをかける。
猟奇的な密室殺人事件の謎
現場は完全な密室であり、凶器の日本刀は庭に刺さっていた。
金田一は一同を事件現場に集め、事件のトリックを再現してみせた。水車に結びつけてあった糸に引かれて、凶器の刀は雨戸上部の欄間より外に出、幹に刺さった鎌で糸を切られ、地面に刺さるという仕掛けなのであった。事件のたびに琴が鳴らされたのは、琴糸をその通過経路上にある叢竹が弾いて音を鳴らしてしまうことをカムフラージュするためであった。久保克子が寝ているところを一柳賢蔵が刺し殺す。
一柳賢蔵は、久保克子が処女でないことを知って婚約を破棄したかったが、小作農の娘がゆえの周囲の猛反対を押し切っての結婚だったので、「それ見たことか」と笑われるようなこともプライドが許さないことから、自分に苦悩をもたらした克子を殺し、自らも死ぬ計画を立てたのであった。しかし、自殺したというのもまた自己の敗北を認めることになるため、自分も殺されたと装えるトリックを考えたのであった。
猟奇的な密室殺人事件の真相は、地方の古めかしい『家柄』と自身のプライドに囚われ執着した一柳賢蔵の自作自演だった。
八つ墓村(1977年) / 400年前の落ち武者の怨念で事件が起きた推理劇風のオカルト映画。最大のヒット作品。
『八つ墓村』は1977年に公開された日本映画で、監督は野村芳太郎、原作は横溝正史の同名小説。松竹が製作を決定した1975年に、陣営には脚本の橋本忍、撮影の川又昂、音楽の芥川也寸志などが起用された。2年3箇月の製作期間と7億円の制作費をかけて東宝作品などと競って封切られ、大ヒット作となる。
主役・金田一耕助の役には渥美清が配されました。推理物でありながら、祟りに見せかけた犯罪ではなく本当の祟りを描いています。終局は恐怖描写に差し替えられ、推理劇風のオカルト映画に改変された異色作です。
八つ墓村 予告篇【1977年 松竹版】
東京に住む辰弥(萩原健一)は、自分を探していた祖父が目の前で毒殺死したことを機に、故郷の八つ墓村を訪れた。そこは戦国時代の落武者惨殺の伝説に彩られた地であり、やがてそこで謎の連続殺人事件が勃発する…。
『八つ墓村』(やつはかむら)は、1977年に公開された、野村芳太郎監督の日本映画。原作は横溝正史の同名小説。主演は萩原健一、金田一役は渥美清。
寺田辰弥(萩原健一)は航空機誘導員であったが、ある日の新聞尋ね人欄から、大阪の弁護士事務所に訪れることになり、そこでは祖父である井川丑松が突然死んでしまった。父方の親戚筋の未亡人である森美也子(演:小川真由美)の案内で、辰弥は生れ故郷の八つ墓村に向かうことになった。多治見家と八つ墓村は、戦国時代にまで遡り、1566年に8人の武将が落ち延びて村人たちに惨殺され、呪詛を吐いて死んでいったという由来がある。辰弥の父である多治見要蔵(演:山崎努)も28年前に恐ろしい事件を起しており、美也子によって辰弥が多治見家の後継者であることが告げられた。
探偵・金田一耕助の役には渥美清を配するなど、同時期の東宝配給による石坂浩二のシリーズとは作風が大幅に異なる。事件を「祟りに見せかけた犯罪」ではなく「本当の祟り」として描き、主要登場人物を大幅に削減して人物関係を簡略化し、推理物でありながら金田一による謎解きのくだりが短縮され、終局は背景を鍾乳洞洞窟とした迫力ある恐怖描写に差し替える等、推理劇風のオカルト映画へと改変した異色作となった。
濃茶の尼(こいちゃのあま)のセリフ「祟りじゃ?っ!」が流行語に
この映画のキャッチコピーに使用された濃茶の尼(こいちゃのあま)のセリフ「祟りじゃ?っ! 八つ墓の祟りじゃ?っ!」が流行語になったことでも有名。
多治見要蔵(演:山崎努)の村人32人殺し / 多治見家に対する尼子義孝ら8人の落ち武者の呪い・怨念が原因…映画史に残るあまりにも残虐なトラウマシーンとして語り継がれている。
多治見要蔵(演:山崎努)は発狂して妻を斬殺、村人32人を日本刀と猟銃で虐殺し、失踪した。
多治見要蔵が発狂したのは、多治見家に対する尼子義孝ら8人の落ち武者の呪い・怨念が原因と考えられる。幼い子供や老婆も容赦なく殺す「多治見要蔵の村人32人殺し」は、映画史に残るあまりにも残虐なトラウマシーンとなった。
八つ墓村の殺戮シーン集
尼子義孝ら8人の落ち武者の惨殺シーン / 「八つ墓村」の命名の由来となる欲にくらんだ残忍すぎる残虐事件
戦国時代の1566年、毛利に敗れた尼子義孝という武将が、同胞と共に8人で今の八つ墓村の地に落ち延び、村外れに住みついた。しかし落ち武者たちは、毛利からの褒賞に目の眩んだ村人たちの欺し討ちに合って惨殺される。落ち武者たちは「この恨みは末代まで祟ってやる」と呪詛を吐きながら死んでいった。
特に大将の尼子義孝(演:夏八木勲)の抵抗は凄まじく、二本の竹槍を体に刺されながらも、喉を貫いた竹槍を自らで引き抜き、「おのれ…卑怯な。騙し討ちを…祟って…祟ってやる…」と呪詛を吐きながら死んでいった。
【八つ墓村】村人による尼子落人惨殺
落武者の祟りにより、落ち武者殺しの首謀者である多治見庄左衛門は自分の首を斬り飛ばすという壮絶な最期を迎える
この落ち武者殺しの首謀者である村総代の多治見庄左衛門は褒賞として莫大な山林の権利を与えられ、多治見家の財の基礎を築いた。だが、庄左衛門はあるとき突如として発狂、村人7人を斬殺した後、自分の首を斬り飛ばすという壮絶な死に方をする。村人は、このことにより落武者の祟りを恐れ、尼子義孝ら8人の屍骸を改めて丁重に葬り祠をたてたことから、村は「八つ墓村」と呼ばれるようになったというものだった。
落武者の祟りにより、落ち武者殺しの首謀者である多治見庄左衛門は自分の首を斬り飛ばすという壮絶な死に方をする。
森美也子(演:小川真由美)は、般若面の形相になって寺田辰弥(演:萩原健一)を追い回して殺そうとする / オカルトホラー映画のような恐怖演出
犯人であることを寺田辰弥(演:萩原健一)に知られた森美也子(演:小川真由美)は、般若面の形相になって辰弥を追い回して殺そうとするが、辰弥の悲鳴で落盤が起き、埋もれて死ぬ。
オカルトホラー映画のような恐怖演出の般若面の形相の怖すぎる森美也子(演:小川真由美)は、トラウマキャラとして語り草になっている。
落ち武者の怨念、怨恨の炎が多治見家を燃やし尽くす…。400年前の落ち武者の怨念・祟りが原因で事件が起きたという結末。
多治見家は、落ち武者たちの怨恨の炎で燃えていく。
落ち武者たちは、その光景を見下ろして見ている。400年にわたる怨恨…。多治見家は崩壊し、とうとう復讐は成就した。満足した笑みを浮かべる尼子義孝(演:夏八木勲)。
悪魔が来りて笛を吹く(1979年) / 横溝が得意とした田舎の因習とはまた異なった陰惨さ。近親相姦を題材とした復讐劇。
戦前まで栄華を誇った貴族の没落、さらに近親相姦というインモラルかつタブー視される性関係を濃厚に描写し、そこに生じた悲劇と愛憎劇を密に描いたミステリー作品。
悪魔が来りて笛を吹く 予告篇
「父はこれ以上の屈辱に耐えていくことができない。ああ、悪魔が来りて笛を吹く」謎の遺書を残して失踪する椿英輔子爵。以後、椿邸では、悪魔の吹くフルートの音とともに、次々と怪奇な殺人事件が発生する・・・。
元子爵、椿家の乱れた人間関係によって生まれた兄妹の起こす連続殺人事件を解決する金田一耕肋の活躍を描く。
『悪魔が来りて笛を吹く』(あくまがきたりてふえをふく)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。1979年1月20日に公開された。製作・配給、東映。監督は斎藤光正、音楽は山本邦山・今井裕。主演は西田敏行。とにかく美しい美禰子(演:斉藤とも子)
母・椿秌子(つばき あきこ)と、その兄の新宮利彦の近親相姦を目撃してしまった美禰子(演:斉藤とも子)
女中のお種さんが、美禰子が部屋に入るのを、やんわりと阻止しようとするが、美禰子は、強引に部屋に入る。女中のお種をふりきって中を覗いた美禰子の見たものは…なんと、新宮利彦と椿秌子(つばき あきこ)の、実の兄と妹による近親相姦であった。
とんでもない秘密を知り、部屋でブルブル震える美禰子。
近親相姦しているところを娘の美禰子(演:斉藤とも子)に見られた椿秌子(演:鰐淵晴子)
美禰子(演:斉藤とも子)「出てらして! お願い、出てらして!」
椿秌子(演:鰐淵晴子)「あなたには分からないでしょうけど、私の体の中には蟲(ムシ)がいるの…」
さらに、美禰子の父・椿英輔のセックス・チンコがいまいちだったなどと述べる。さすがに美禰子がたまりかねて遮る。
美禰子「やめて……やめて! あたくしお母様のこと折角、好きになろうって努力してたの……やめてぇーっ」美禰子に別れの挨拶に来た椿秌子(演:鰐淵晴子)は、フルートの音が鳴りだし取り乱す。
その後、椿邸で新たな事件が発生した。新宮利彦が殺されたのだ。
近親相姦によって生まれた子…三島東太郎とお種による自分たちを産んだ新宮利彦や椿秌子に対する復讐
女中のお種の正体は、新宮利彦(兄)と椿秌子(妹)の近親相姦によって生まれた子である小夜子。すなわち、美禰子とお種は実は異父姉妹ということになる。また三島東太郎(演:宮内淳)の正体は、新宮利彦と尼さんの妙子の子であり、三島東太郎とお種は異母兄妹ということになる。三島東太郎とお種は異母兄妹であることを知らず、出会って恋に落ちたが、後に兄と妹であると知った東太郎とお種(小夜子)は、椿家を憎み、復讐を誓った。
三島東太郎とお種は結託して、椿家に乗り込み、自分たちを産んだ利彦や秌子に復讐した。兄妹から初めて聞かされた恐ろしい真実と悲しい愛の物語に、秌子は自分自身を呪い、体内に流れる血を憎み、窓から飛び降りるのだった。
復讐を遂げた翌朝、毒を仰ぎ、フルートで「悪魔が来りて笛を吹く」を吹いてから死んでいく…。三島東太郎とお種の二人は浜辺で心中した。
悪霊島(1981年) / 岩下志麻の妖艶な演技が強烈な印象を残す。恐怖の惨劇が起こるトリガー「鵺の鳴く夜は恐ろしい…」
男が謎めいた言葉を残して逝った。そして恐怖の惨劇の幕があいた・・・。アメリカ帰りの億万長者から尋ね人の依頼を受けて岡山を訪れた金田一耕助、旧知の磯川警部と出会い、目的の人物らしい男が怪死したことを知る。真相を究明すべく、謎を秘めた刑部島に渡る金田一。
そこで出会ったのは、神々しいばかりに美しい女性、巴御寮人。そして蝶のように美しさを競う双子の姉妹、真帆に片帆だった。その金田一の前で繰り広げられる第二、第三の惨劇・・・。瀬戸内海・刑部島で起きる奇怪な連続殺人に挑む名探偵・金田一耕助。東宝の石坂浩二に対して鹿賀丈史が金田一に扮し、若々しいイメージの金田一像を作り上げた。
『悪霊島』(あくりょうとう)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。『野性時代』に1979年から1980年まで連載された。
1981年10月3日に公開された。角川映画、監督は篠田正浩。
公開時キャッチコピーは「鵺の鳴く夜は恐ろしい…」。
腕をくわえた犬
腕をくわえた犬というビジュアルインパクトの強さ。金田一耕助シリーズに特有のオドロオドロしいシュールでグロテスクなキービジュアルが冴えわたる。悪霊が取り憑いているという噂から“悪霊島”と称される不気味な小島で巻き起こる連続殺人事件。
「巴御寮人(演: 岩下志麻)」と「ふぶき」は実は二重人格の同一人物。「巴御寮人」の男狂いの人格が「ふぶき」
清楚で美しく控えめな女性「巴御寮人」の男狂いの人格「ふぶき」が出現し、オナニーにふける。
巴御寮人(演: 岩下志麻)が一見すると神々しいが実は性的に無軌道という二面性は原作通りだが、恋人と引き裂かれたショックで発症した二重人格という形でそれを明確化しており、無軌道な方の人格を表向きはふぶきということにしたという設定になっている。
「鵺の鳴く夜は恐ろしい」理由…鵺の鳴く夜に、淫乱化した巴御寮人(岩下志麻)は契った男を殺しまくったから。
強引に分かれさせられた竜平と巴は「鵺の鳴き声」を合図に逢瀬を重ねていたので、巴御寮人にとって鵺の鳴き声は特別に強い意味を持つようになり、淫乱・凶暴化する発作が起こるトリガーになったのだろう。鵺の鳴き声の合図と共に巴御寮人は発狂し出す。見境のつかなくなる巴御寮人は身内、娘も構わず殺してしまう。
鵺の鳴く夜に、淫乱化した巴御寮人(岩下志麻)は契った男を殺しまくった。洞窟にゴロゴロ転がっている白骨が殺された男たち。
腰と腰がくっついた双子(シャム双生児)の太郎丸・次郎丸
1967年(昭和42年)。金田一耕助(加賀丈史)は、瀬戸内海に浮かぶ刑部(おさかべ)島にレジャーランド開発計画を持ち込んでいる島出身の億万長者・越智竜平(伊丹十三)の依頼を受けて人捜しをするため、島がある岡山県にやって来ていた。
しかし、捜していた男は海で瀕死の状態となって発見される。金田一は友人である岡山県警の磯川警部から、男の最期の言葉を録音したテープを聴かされる。そこには「あの島には恐ろしい悪霊が取り憑いている…腰と腰がくっついた双子…鵼の鳴く夜は気をつけろ……」という不気味なダイイング・メッセージが録音されていた。
洞窟内の真の刑部神社には巴御寮人(岩下志麻)がいる。巴御寮人 / ふぶき(演: 岩下志麻)「太郎丸と次郎丸。私らの子供よぉ♪」
島に戻った金田一は磯川にふぶきは存在せず、犯人は巴であると話す。巴は越智竜平と別れたショックで、刑部神社を継ぐ女と、ひたすら男を求める狂った女の二重人格となった。そして、責任を感じた刑部大膳は死んだふぶきを復活させ、巴が狂うと、ふぶきに仕立て離れにかくまったのだ。
大膳を本当の刑部神社のある洞窟に追い込んだ金田一は、そこで、腰の繋がった双生児の骸骨を見た。それこそ、巴が産んだ竜平の子だ。
そして、狂った巴が抱き、秘密がバレるのを恐れて殺された男たちのいくつもの骨。竜平に依頼され金田一が探していた男もその一人だ。そして、守衛を殺したのは、彼が竜平にレジャーランド用地として神社の土地を売ってしまったのを正気の巴がつきとめて殺したこと。片帆は父を探しに島に来ていた兄弟の一人との逢引きを巴に見つかり、嫉妬に狂った彼女に殺されたことをつきとめた。
そこへ、狂った巴が竜平を連れて現れた。また、二人を追って、巴を守ってきた吉太郎もやってきた。吉太郎が太郎丸と次郎丸の死骸を撃ったことから状況は急展開し、蝋燭の消えた闇の中、もつれる音がして再び火が灯ると、竜平ともみあった吉太郎の死体。巴御寮人 / ふぶき(演: 岩下志麻)は深い穴の中に落下していく・・・
そして、巴は双子の骨のところへ走りよろうとして深い穴に落ちて死んでしまった。暗闇の中で金田一と誤って吉太郎を刺した刑部大膳は吉太郎の銃で自殺する。