昭和時代の懐かしい「ホラー漫画・恐怖漫画」の第一人者である手塚治虫、つのだじろう、楳図かずお、古賀新一、日野日出志、水木しげる、伊藤潤二、美内すずえ、わたなべまさこ、山岸凉子、高橋葉介、諸星 大二郎、御茶漬海苔、藤子不二雄Ⓐ、曽祢まさこ…など有名な作家別のホラー漫画・恐怖マンガの傑作選。
楳図かずお
『赤んぼ少女』 / 伝説のトラウマ傑作漫画。タマミの悲哀。醜いタマミが葉子の美に嫉妬した結果あらゆる手を尽くしてイジめにイジめ抜く。
『赤んぼ少女』は、週刊少女フレンド(講談社) 1967年30号から39号まで連載された楳図かずおの恐怖漫画。実写映画版は、2007年製作、2008年8月2日公開。R-15指定。赤子のような姿の怪物に襲われる少女の物語という骨子は変わらないが、設定や展開が大きく変えられている。
生まれた時から離ればなれとなっていた両親の元へ、晴れて引き取られることになった少女・葉子。孤独な施設での生活から一転、親と暮らせることに加え新居は瀟洒な洋館で、葉子は感激しきり。だが、手放しで歓待してくれた父とは違い、母は彼女を見るなり「タマミ」という別人の名を呼びかけて…?
主人公の美少女「南条 葉子(なんじょう ようこ)」は、南条家の娘として生まれたが、出生時の取り違えが原因で孤児として育った。そして、12歳になったある日、父によって見つけ出され、ようやく実家で暮らせるようになったが、南条タマミの執拗な暴力に苦しめられる。
赤ん坊の姿のまま成長しない「南条 タマミ」は、楳図かずお作品屈指の名トラウマキャラクター。葉子の義姉。どこの馬の骨ともわからない女性が生んだ子どもだが、取り違えによって南条家の娘として育つ。残忍な性格の持ち主で、葉子の美貌に対する嫉妬心と養父に対する復讐心から二人を苦しめるが、養母の夕子にだけは心を許していた。
タマミの年頃の少女らしい美しさへの憧れ。己の醜さ故にそれが叶わぬ事をも知っている彼女は哀しきダークヒロイン(悪役)。健気で哀れ。
タマミ「死ぬのよ…死ぬ前に足と手を短くして、わたしと同じ姿にしてやるわ…そうしたら、わたしの苦しみがわかるわ」
タマミの名言「お前はわたしがいじめてばかりいたと思っていただろうけど…本当はお前がわたしをいじめていたのよ」
タマミが鏡の前で1人寂しくお化粧をする有名なシーン。タマミは本当は年頃の女の子でもあり、口紅を塗った自分の顔を鏡で見て涙を流す(自分の醜さに絶望するタマミ)。
酷く傷ついたタマミ「わたしのことをかわいいなんていったのはうそね…高也がくると思って一生懸命…こんなにお化粧したのに…」
恋心を抱く葉子の彼氏の高也が「なんか顔中におしろいかなんかぬってたみたいだったけど 抱いてるのがやっとだったよ 気味わるくって」と言っているのを聞いて、酷く傷ついたタマミ。
母の腕の中で亡くなるタマミ「タマミは悪い子でした…心で思っていてもいつのまにか悪いことばかりするのです…葉子さんにひどいことばかりしたので、ばちがあたったのです…わたしがいなくなっても葉子さんが…タマミのかわりに…」(このセリフはコミック発行時期により更新・変更されているため注意)
最期は葉子と心中するために用意した濃硫酸を浴びてしまい、そのまま息絶えた。
恐怖 / 楳図かずおの短編ホラー・オムニバス。高校生記者シリーズ。有名なトラウマエピソード『うばわれた心臓』。
1966年から1970年にかけて『月刊平凡』で連載された、高校生記者を主人公としたオムニバスシリーズ。みやこ高校の新聞部に所属する荒井エミ子と夏彦が体験する、背筋も凍る恐怖の数々とは…!?
「平凡」に掲載された「高校生記者シリーズ」は秋田書店のサンデーコミックスに纏められた際に「恐怖」というタイトルが与えられ、繰り返し発行され、現在では楳図かずおの人気の代表作品となっている。
トラウマエピソード『うばわれた心臓』 / 百物語の最中自らの胸を開き『多加子』であることを告白する伝説の名シーン
5月のある夜、ミステリークラブの面々が集まり「百物語」をするというニュースを聞きつけた荒井エミ子は、高校新聞の取材のため自分も参加することに。夜ふけとともに次々と話は進み、99話めを瞳という少女が語る番となる。そこで彼女が渋々語り始めたのは、親友・多加子との間に実際に起こった、ある恐ろしい偶然についてだった…ノイローゼとなってしまった多香子は、不慮の事故によって脳死状態となってしまい、約束通りに多香子の心臓は瞳に移植される。
しかし、多加子は、なんら意思表示こそできないが、なんと「意識」は生きていた…。いま手術室で、世にも恐るべき、心臓移植手術が行われようとしていた…。
「多加子さんは殺されたのよ…そうして多加子さんの心臓の移植で瞳さんは助かった…でも多加子さんは心臓をうばわれたのよ」
「あたしは多加子なのよ」…百物語の最中自らの胸を開き『多加子』であることを告白する伝説の名シーン。
うばわれた心臓…(亡霊となった)多香子の(心臓がうばわれ)空洞になっている胸があらわになる衝撃的なクライマックスシーン。
亡霊となった多香子が現れ「私はむりやり心臓をうばわれたの 私の心臓をかえして!!」と、瞳から自身の心臓を奪い返そうと襲いかかってくる…。
『ねがい』 / 切なくも恐ろしい楳図かずおの恐怖マンガ。人気のトラウマキャラ「モクメ」。
主人公のヒトシ少年が手作りし、その“ねがい”からついに動き出した人形「モクメ」…。
友達とあまり遊ばず、ひとりでいることが好きな少年・等(ひとし)。ある日、ゴミ捨て場で頭の大きさくらいの木の切れ端を拾ってきた等(ひとし)は、そこから自分だけの「ロボット」を作り上げる。何本ものクギを打ち付けた歯、縫い跡の目立つ髪や眼など、はた目には不気味な人形に“モクメ”と名付けた等は、やがて「本当に動いたらなあ」と思うようになり、宇宙のエネルギーに念力をかけて願いごとを叶えようとするが…
ある日転入生がきて仲良くなり、環境にも馴染んでくると、モクメが邪魔になり最後は泣きながら叩き壊す。
「ゆるしてモクメ!!」
「だますつもりじゃなかったんだっ!!」
「ほんとなんだっ!!おまえのこと好きだった!!」
「でも、もうおまえとは友だちにはなれないんだっ!!」
「おまえがいるとほかの人と友だちになれないのだっ!!」
そして、子どものころのこのすばらしいねがいは、もう二度と奇跡を呼び起こすことはないだろう。
おろち / 人間誰もが心に持つ恐ろしい部分を描き出した心理ホラーの代表作。ラストでのどんでん返しも多い。
『おろち』は、楳図かずおの恐怖漫画。またそれを原作とした実写映画。『週刊少年サンデー』1969年25号から1970年35号に連載された。人間の醜さと愚かさを徹底的に描く。謎の美少女「おろち」が、悲壮な運命に翻弄される人々の人生を見つめていくオムニバス形式の作品。サイコホラー漫画の殿堂。
「姉妹」…妹のルミと姉のエミ。18歳になると同時に容姿が崩れるという特異な家系に生まれ育った美人姉妹。最後にはどんでん返しが。
第1話/姉妹…激しい嵐をさけるため、おろちが立ち寄ったお屋敷。そこには美しい姉妹がふたりきりで住んでいた。姉・エミ17歳、妹・ルミ16歳。だが奇妙なことに、ふたりとも18歳になることを異常なくらい恐れていた。身の毛もよだつような、恐ろしい血筋の家に秘められたナゾとは…?18歳になると同時に容姿が崩れるという特異な家系に生まれ育った美人姉妹。
洗礼 / 心理ホラーの代表作。女性の美・若さへの妄執を描いた名作。
『洗礼』(せんれい)は楳図かずおの漫画。『週刊少女コミック』(小学館)に昭和49年(1974年)50号から昭和51年(1976年)16号まで連載された。神をも畏れぬ所業、母娘の“生”の交換を描いた、楳図かずお戦慄の大傑作「洗礼」。
幼い頃からその美貌でスター街道を歩み、永遠の聖美女と呼ばれる女優・若草いずみ。だが、人知れぬ彼女の素顔には、残酷な老いの痕がはっきりと広がっていた。
美しさを失うことを異常なまでに恐れるいずみは、ある夜絶望から半狂乱となり、幼いころからの主治医であるひとりの男を自宅へ呼ぶ。そしてその夜から、“永遠の聖美女”は突然自分の子供を欲しがり始め…?
実の娘・上原さくらに自らの脳を移植し、若く美しい肉体を手に入れるという若草いずみの狂気に満ちた恐ろしい計画。
若さと美貌をとりもどすため、主治医の村上によるアドバイス、「女児を出産し、その娘に自身の脳を移植をする」という計画を企てる。
おぞましい脳移植手術は強行される。実の娘・さくらに自らの脳を移植し、若く美しい肉体を手に入れるという恐ろしい手術…。母娘の脳移植手術は、有名なトラウマシーン。
実の娘・さくらに自らの脳を移植し、若く美しい肉体を手に入れるという恐ろしい手術は成功し、元女優・若草いずみは目覚めた。醜く老いた体は隣に横たわり、鏡に映るのは我がものとなった美しい体。彼女は死体を庭に埋め、今までの自分に別れを告げる。そして、娘の通っていた学校へ、娘がしていたように通学するのだった…。
娘・さくらの体に乗り移った女優・いずみ「あなたの一番大切なところを焼きつぶしてやる!」…いずみは、谷川先生の妻・和代の女性器を熱したアイロンで焼きつぶそうとする…。
自らの脳を娘さくらに移植し、その人生を奪い取った母いずみ。いずみは策を講じて谷川先生の家にうまく乗り込むと、谷川の妻・和代を陰湿の限りを尽くしていじめぬき、谷川を小学生の体で不気味に色っぽく誘惑する。
娘・さくらの体に乗り移った女優・いずみは、自分の幸せ(娘の担任・谷川先生との結婚)を叶えるため、邪魔者を次々と消して行こうとする…。
担任の谷川先生に抱きつくさくらの体を乗っ取ったいずみ。入れ替わり後のさくら(いずみ)は子供らしい無邪気な表情をすることがない…中身が入れ替わっているという事実を知っている読者から見ると、子供の表情に見えない。
最後にどんでん返しがある…脳移植手術は本当に行われたのか…「母のいずみと娘のさくらの脳移植手術」の衝撃的な真実(真相)、悪魔のような母親よりも、優しく見えた娘・上原さくらの方が実際には恐ろしい存在であった…。
神の左手悪魔の右手 / 楳図かずおの本格スプラッターホラー漫画
ホラー漫画の第一人者、楳図かずおが描く、究極のホラーコミック。戦慄のスプラッターシーンからスタートする『錆びたハサミ』をはじめ、生理的な痛みから、不条理な恐怖、不穏な空気を孕みつつ進行する夢と現実の混濁など、ありとあらゆる恐ろしさを内包した恐怖の作品集。1986年から1989年にかけて、「錆びたハサミ」「消えた消しゴム」「女王蜘蛛の舌」「黒い絵本」「影亡者」の5つのエピソードが、青年漫画誌に連載された。
「神の左手悪魔の右手」HORROR1「錆びたハサミ」 / 姉の目から飛び出る呪いのハサミ。
戦慄のスプラッターシーンからスタートする『錆びたハサミ』。両目からハサミが飛び出してくる強烈なグロシーンは、「神の左手悪魔の右手」HORROR1「錆びたハサミ」における伝説のトラウマシーンとして語り継がれている。
「神の左手悪魔の右手」HORROR/1『錆びたハサミ』は、呪いの錆びたハサミを拾ったことから始まる、山の辺想(やまのべそう)の姉「山の辺泉」(やまのべいずみ)を襲うスプラッター恐怖劇場。病院や周辺地域を舞台とする都市伝説的なストーリー。 物語の冒頭から山の辺泉(やまのべいずみ)の両目からハサミが飛び出してくるという衝撃的なショッキングなグロシーン。
姉の目から飛び出る呪いのハサミ。楳図かずお作品中でも、最も過激でスプラッター要素が強いのが「神の左手悪魔の右手」。
主人公の山の辺想(そう)は、いつも悪夢ばかり見て、周囲から弱虫と思われている。夢の中で恐ろしい出来事を解決するのだが、誰にも信じてもらえない。「神の左手悪魔の右手」のストーリーは、どこまでが夢でどこまでが現実なのか、容易な線引きを許さない構成をとっている。
口から大量の泥
口から大量の蜘蛛
「神の左手悪魔の右手」HORROR5「影亡者」
みよ子に憑依した怖ろしい霊「影亡者」を引き剥がすために、友人の「山の辺泉」とその弟の「山の辺想」が、両親や霊能者の協力を得て奮闘するというもの。
山の辺泉(やまのべいずみ)の同級生のみよ子は地味な少女。しかし守護霊には恐ろしいものが。これは影亡者といい、本来のみよ子の守護霊ではありません。影亡者が憑いたためか、みよ子は芸能事務所の人に誘われタレントになります。影亡者は共演タレントたちの守護霊を食い殺します。そのおかげか、みよ子はどんどんスターになります。
恐怖の背後霊『影亡者』が、他人の守護霊を食い尽くす。影亡者に守られた者は怖ろしい強運をつかむが、守護霊が食われてしまうと、守る者を失った人間には……。
『影亡者』のエピソードでは、人が死ぬと霊になるだけでなく、霊もまた死ぬという。あの世の向こうに、もうひとつのあの世があり、影亡者は、もうひとつのあの世の住人らしい。
漂流教室 / 楳図かずおのSFホラー漫画。サバイバルホラー漫画の原点であり金字塔。トラウマの宝庫。
『漂流教室』(ひょうりゅうきょうしつ)は、楳図かずおの漫画。『週刊少年サンデー』(小学館)にて1972年から1974年にかけて連載された。荒廃した未来世界に校舎ごと送られてしまった主人公の少年・高松翔ら、小学校児童たちの生存競争を描いた作品。サバイバルホラー漫画の原点であり金字塔。トラウマの宝庫。
医者の息子の小学生が麻酔なしでカッターを使って盲腸の手術を行う
主人公の高松くんが突然盲腸になる。大人がいないので医者の息子という理由で小学生の柳瀬くんが手術をやらされることに。
学校には手術道具は当然ないので、メスの代わりに鉛筆けずり(カッター)を使う。
もちろん麻酔もないので痛さで暴れる主人公・高松翔の体を押さえつけながら強引に外科手術を行う。
『漂流教室』における悪役「関谷久作」 / 性根の腐り果てた人間の屑。
「いつも給食のおっさん、給食のおっさんと馬鹿にしくさって!! 先生どもにバカにされ、きさまらのようなガキにまでバカにされながら給食を毎日運んでいたんだっ!」「きょうからおれが学校の支配者だっ‼ 関谷さまといってみろ‼」
関谷久作(せきや きゅうさく)は、「長吉製パン」というパン屋、及び学校給食全般の納入をしている。年齢は38歳。学校給食を卸しに来たところ漂流に巻き込まれる。漂流以前は優しい人物を装っていたが、漂流後は残忍醜悪な本性を現し、学校を支配しようと目論む。
「きさまらガキは、まだ人間になってない動物よ‼おとなは人間でガキは動物よ! だからおとながガキを生かすも殺すもかってよ‼」
残酷な性格を剥き出しにして食料を独占し、学校を支配しようとする。生徒達を暴力で支配し、自分の身を守る為ならば生徒達を未来生物と戦うための特攻隊に仕立て上げて平然と捨て駒にする等、これ以上にない程に性根の腐り果てた人間の屑。最後の“大人”であった若原がいなくなってからは事実上作中における唯一の大人になる。
怪虫に襲われたショックで幼児退行する関谷久作
関谷久作 は、中盤では未来生物に襲われて一時的に幼児退行したものの、あるキッカケで正気に戻った。
「ダアダア!」「ブウブウ!」「ガターンガターン!」気が変になって、赤ん坊みたいになってしまった関谷久作。
「若原先生が く、狂っている‼」若原(わかはら)先生は、大和小学校6年3組担任教師。漂流前は普通の教師で、漂流後も当初は指導力を見せていたが、状況の変化に耐え切れなくなって殺人狂と化し、他の教師や生徒達を次々と手にかけていく。最後はホテルケイヨーで、翔が苦し紛れに刺したナイフ(このナイフは西あゆみの超能力によって翔が未来にいると知った恵美子が彼に追われている翔を救うため、壁に埋めたものである)により転落した。生死不明。
未来に生きる怪虫(かいちゅう)と未来人類(みらいじんるい) / 漂流教室のみんなのトラウマ。虫をやり過ごすために椅子になりきる高松翔。
怪虫(かいちゅう)は子供たちのトラウマキャラ。漂流教室のみんなのトラウマ。大和小学校が飛ばされた世界に突如出現した巨大なサソリのような虫。
主人公・翔が心を無にして怪虫を回避しようとするシーン。心を無にする方法として主人公が発案した「イスになる」。虫をやり過ごすために椅子になりきる高松翔。
未来人類(みらいじんるい)は、大和小学校が飛ばされた世界に闊歩する人類。カマドウマのような形態で、四足歩行をし、背中に大きな目玉が一つある。指は三本で、鉤爪のような爪を持つ。テレパシー能力を有しており、思っている事は喋らなくとも相手に伝わる。実は現生人類が新しい癌の薬を服用した事によって突然変異したもので、あまりの奇怪な姿から現生人類から迫害されたため、現生人類に強い恨みを持つ。
未来人類(みらいじんるい)は、口から糸を吐いて捕らえるなど怪物じみているが、その知能は非常に高い。
富士大レジャーランド・天国 / 壊れたロボット達が襲いかかって子供たちを苦しめた。
未来の娯楽施設の「富士大レジャーランド・天国」では、壊れたロボット達・「マリリン・モンローのロボット」が襲いかかって子供たちを苦しめた。
グロテスクなマリリン・モンローのロボットが、ひたすらに「どうぞ…こちらへ…」と連呼しながら追いかけてくるシーンはみんなのトラウマとして名高い。
楳図かずおの長編SFディストピア漫画『14歳』(フォーティーン) / 宇宙人(エイリアン)が男女の見境なく人類をレイプするシーンは、まさに地獄絵図。
「14歳」は突然変異から生まれた生物チキン・ジョージが地球の滅亡を知り、とある計画を立てるところから始まるSF作品。
人類の破滅をテーマとし、楳図の代表作『漂流教室』の続編ともいえる作品。人類と同じ滅亡の危機を迎えた宇宙人たちが飛来し、遺伝子交換による生き残りの望みを賭けて、人類を男女問わずに集団レイプするが、宇宙人たちは地球人の遺伝子には未来が無い事を悟り、地球の霊的エネルギーを奪って去っていく。
宇宙人(エイリアン)が男女の見境なく人類をレイプするシーンは、まさに地獄絵図。彼らは人類との交配によって自分たちの遺伝子を変えるために宇宙からやってきた…。
「地球人のみなさん、あなたたちの遺伝子はわたしたちの遺伝子を変えることができなかった!!」 人類が恐怖に怯え何人もの死者が出たというのに、エイリアンたちはこの一言であっさりと去って行く。結局、エイリアンたちの遺伝子を変えるという計画は失敗に終わったが、読者には強烈なインパクトと深いトラウマを残した。
藤子不二雄Ⓐブラックユーモア短編 / ホラー漫画『魔太郎がくる!!』『黒ベエ』
いわゆる「黒い藤子不二雄」であり、氏が単独で手掛けた作品には少なからずブラックユーモアや人間社会の不条理などを盛り込んでいる。特に読切短編にその黒さが表れており、土人・食人・拷問・虐殺・人種差別・衝動殺人・精神分裂症などなんでもありであった。
あまりにもこれら描写がガロすぎたため、後に短編集として収録する際にこれら描写が徹底的に削除されたほどである(例えばジュニア~ヤングアダルト層にヒットした『魔太郎がくる!!』は「藤子不二雄ランド」収録時には全133話のうち約1/4が展開・セリフ等に大小の修正が行われ、1/5弱が欠番扱いの未収録になった)。これの黒さは氏が手掛けた漫画のそこかしこに現れており、氏独特の「感情の薄い顔」とあわさって黒い底流をなしているといえる。
引用元: 藤子不二雄Ⓐとは (フジコフジオエーとは) [単語記事] – ニコニコ大百科
『明日は日曜日そしてまた明後日も……』 / 引きこもりを描いた先駆け。人間精神の暗部を描いた作品。
時代を超える衝撃作『明日は日曜日そしてまた明後日も……』は、引きこもりを描いた先駆け。時代を先取りしている。主人公は会社が怖くて出社できないで初日からばっくれる…。
「藤子不二雄Aブラックユーモア短編」の「人間」のあらゆる欲と業が描かれたドラマの闇に、読者は知らず知らず引き込まれてゆく。
田宮坊一郎は一度も出社できないまま、病院で「勤めにでることができない病気」と診断された。そして坊一郎は、二階の自室から一歩も出なくなってしまう。作中での坊一郎の特徴は現在の引きこもりの概念に、ほぼ当てはまる。ただし作品発表時には「引きこもり」の概念は一般化しておらず、作中で引きこもりの用語も使われていない。しかし、平成年間(1989年 -2019年 )に引きこもりが社会問題化すると、引きこもりを描いた先駆作品として脚光を浴びるようになった。
週刊少年「」( しゅうかんしょうねんかぎかっこ)において船越英一郎が、『明日は日曜日そしてまた明後日も……』を「引きこもりを描いた先駆け」と語っている。こうした人間精神の暗部を描いた作品は、『内気な色事師』におけるストーカー、『なにもしない課』における社内失業など、後年社会問題化した事象を取り扱っているものもある。
引用元: ウィキペディア(Wikipedia)『藤子不二雄Ⓐブラックユーモア短編』
【封印作品】『わが分裂の花咲ける時』 / 受験ノイローゼ(精神分裂病)によって自我が崩壊していく浪人生。単行本未収録の欠番作品。
『わが分裂の花咲ける時』は、藤子不二雄Ⓐによる日本の読切漫画作品。ブラックユーモア短編の1作。『COM』(虫プロ商事)1971年2月号に掲載。
物語らしい物語はほとんどなく、受験ノイローゼによって自我が崩壊していく主人公の妄想の描写が作品の主幹を成している。こうした描写が原因となってか、初出以来単行本などには一切収録されていない。
2浪して精神をすり減らした学生が重度の妄想症(精神分裂病)にかかり、自身の脳内で繰り広げられる花火祭りを幻視していく…。
浪人生の喜一は受験のプレッシャーから現実逃避を繰り返し、やがてパラノイア(偏執病)になる。その妄想の中では祭りが行われていた。現実とのせめぎあいの中で妄想はその強度を増し、重度の分裂病(統合失調症)に達した喜一。祭りはいつまでも終わらない……
『内気な色事師』 / 後年社会問題化する「ストーカー」の狂気を描いた心理ホラーの先駆け。
「ストーカー」という言葉が日本で定着したのは1990年代。1972年(昭和47年)に描かれた「内気な色事師」は、90年代になって社会問題化して、一般的に認知されるようになった「ストーカー行為」(ストーカー殺人にまで至る「ストーカーの狂気」)が描かれた心理ホラーの先駆け。
丹野は電車内で見つけた冴島時子に異様なまでの執着を見せる。主人公のつきまとい行為、まさに典型的と思われるストーカー行為が描かれる。
彼女には男がいると思い尾行したところ、着いたのは「連れ込み宿」(連れ込み旅館・ラブホテル)。絶望する丹野はその後…。
ストーカー殺人の凶器になったのが、主人公が尾行(待機)しているときに飲んでいたコカコーラの瓶。まさに1970年代。
藤子不二雄Ⓐのホラー漫画『魔太郎がくる!!』 / 連載初期の魔太郎の恨みの晴らし方にかなり過激なものが多い(大抵の場合、相手を殺してしまう)。
主人公・浦見魔太郎(うらみ またろう)「うらみ はらさで おくべきか‼」
見た目も性格もパッとしない典型的「いじめられっ子」である主人公・浦見魔太郎(うらみ またろう)。毎回様々な人物からいじめを受けるが、どうしても許せない行き過ぎたいじめや悪行に対しては自身の持つ超能力「うらみ念法」やオカルトアイテム、残虐な手段をもってして夜な夜な復讐しにまわる。
藤子不二雄Ⓐは本作について『自分がいじめられっ子だったこともあるのですが、いじめられっ子が実は凄く強くて、やられた相手に大逆襲するような作品なら面白いだろうと思ったのが本作の出発点です』と語っているように、全国のいじめられっ子のうっぷんを代弁し、それを豪快に晴らしていくカタルシスに満ちた作品である。
引用元: ウィキペディア(Wikipedia)『魔太郎がくる!!』
浦見魔太郎(うらみ またろう)の名台詞「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」は有名。
ひ弱な中学生、浦見魔太郎(うらみ またろう)は毎回同級生や傍若無人な連中から激しいいじめなど理不尽な目に遭う。しかしオカルトの知識に長けた彼は得意の「うらみ念法」を駆使して壮絶な復讐を行う。彼は我慢の限界を超えた屈辱を受けた時、決め台詞「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」と呟き(宣言して)行動を開始する。
魔太郎の恨みの晴らしかたが過激すぎて「改編」・「欠番」(封印作品)となっているエピソード
少年事件の凶悪化・深刻化などの社会情勢を考慮し、後年発刊された作品全集『藤子不二雄ランド』刊行にあたってエピソード全133話のうち大幅に描き直された話が34話、欠番扱いとなった話が25話ほど存在する。
単行本化時に、オチが改編されたエピソード:『魔太郎がくる!!』うらみの2番「鉄のキバがひきさいた夜」 / パワーショベルで引き裂いて殺し、その遺体を生コンクリートで埋める。
「いじめっ子をパワーショベルで引き裂いた上に遺体を生コンクリートで埋める」…魔太郎の恨みの晴らしかたが過激すぎてオチが大幅に改編されたエピソード。 怒る二人を問答無用でショベルカーで引き裂いて殺す魔太郎。
次の日の工事現場には、コンクリートが流され二人の死体が永久に埋められたことを確認する魔太郎の姿があった。
本作は発表当初(特に初期エピソード)、魔太郎の恨みの晴らしかたの一部が過激で、ほとんどの場合自分をいじめた者を「うらみ念法」を使わず、現実的にも可能な手段で明確に殺害または重体・心身共に廃人にまで追い込んだ。
「いじめっ子をパワーショベルで引き裂いた上に遺体を生コンクリートで埋める」、「恐喝してきたチンピラをゴミ袋に詰めて執拗にバットで殴り、そのまま遺体をゴミに出す」、「過剰なしごきをしたコーチを水中で虎バサミに掛けた挙句に溺死させる」等々、その手口も凄惨さを極めた。
引用元: ウィキペディア(Wikipedia)『魔太郎がくる!!』
封印作品・欠番扱いのエピソード:『魔太郎がくる!!』うらみの3番「ゴミはふくろにしまつしよう」 / バットで殴り殺して、そのまま遺体をゴミに出す。
「恐喝してきたチンピラをゴミ袋に詰めて執拗にバットで殴り、そのまま遺体をゴミに出す」…魔太郎の恨みの晴らしかたが過激すぎて欠番となっているエピソード。
「そうだ!!お前はごみだ!!ウジムシだ!!こここそがお前にふさわしい場所だ!!」…バットでフーテン(チンピラ)を殴り殺す。
次の日、清掃員はゴミ捨て場で動かなくなった袋詰めのチンピラ(フーテン)の姿(死体)を発見した…。
封印作品・欠番扱いのエピソード:『魔太郎がくる!!』うらみの9番「おぼれ方教えます」 / 酷いしごきをした水泳のコーチが水中に仕掛けた虎バサミに足を挟まれ溺死する。
「過剰なしごきをした水泳のコーチを水中で虎バサミに掛けた挙句に溺死させる」…魔太郎の恨みの晴らしかたが過激すぎて欠番となっているエピソード。
水泳の特訓合宿での鮫沢(さめざわ)コーチの魔太郎に対するしごきが酷すぎる。鮫沢は、魔太郎が水中に仕掛けた虎バサミに足を挟まれ溺死する。
青少年に悪影響を与えるということで、魔太郎の恨みの晴らしかたがあまりにも過激すぎるエピソードの一部が改変・封印されてしまった。
藤子不二雄Ⓐのブラック・ユーモア漫画『黒ベエ』
『黒ベエ』(くろベエ)は、藤子不二雄Ⓐが描くブラック・ユーモア漫画の一つ。1969年(昭和44年)より約1年間『週刊少年キング』(少年画報社)に連載。『ブラック商会変奇郎』『オヤジ坊太郎』『夢魔子』『狂人軍』『仮面太郎』『笑ゥせぇるすまん』『魔太郎がくる!!』といった、藤子不二雄Aによる一連のブラックユーモア作品群の基礎の一端を担った作品。
黒ベエは、気まぐれでかわいそうな人間の手助けをすることもあるが、気に入らない相手を破滅に追いやったり、何の罪も無い人間を面白半分に酷い目に遭わせたりと、決して善人ではない。
スズキ・ミチオの秘密復讐計画 / 『魔太郎がくる!!』の原型とみなしうる作品
スズキミチオは一見冴えなくておとなしい少年だが、実は自分をいじめた相手に次々と残酷な復讐をほどこしていく狂気と残忍性を秘めた少年だった。興味を持った黒ベエはミチオを付け回すがミチオは黒ベエのことをよく思っておらず…。
「スズキ・ミチオの秘密復讐計画」は表向きおとなしい中学生が悪魔的な復讐心でいじめっ子たちに仕返しを繰り返す物語であり、『魔太郎がくる!!』の原型とみなしうる作品である。
しごく者 しごかれる者
「おい吉村二等兵!しごかれるのが怖くて逃げだすようなやつは、わが班の面汚しだ!そんなにしごかれるのが嫌ならセミになれ‼おまえはセミだ…さあ鳴けミーンミーン」
野原にいきなり日本兵が逃げてくる。追いかけてくるのも日本兵。実は会社の新任研修を日本軍の軍事教練でやっているという。面白そうだと黒ベエは忍び込むことにするが・・・。
【黒手塚】手塚治虫屈指の問題作・傑作怪奇漫画 / ダークな怪奇・恐怖(ホラー)漫画
タブー、猟奇、異常性癖……「黒手塚」などと呼ばれることもある巨匠・手塚治虫屈指の問題作やダークな怪奇・恐怖(ホラー)漫画をご紹介。
バンパイヤ / 陰惨な怪奇長編マンガ
『バンパイヤ』は、手塚治虫が『週刊少年サンデー』(小学館)および『少年ブック』(集英社)に連載した怪奇漫画。テレビドラマ化もされた。水木しげるによって引き起こされていた妖怪ブームを意識した作品。
手塚プロダクション公式チャンネル「バンパイヤ」
オオカミに変身してしまうバンパイヤ族の青年トッペイを巡る少数民族とそれを弾圧する人間との戦い、というきわめて社会性の高いテーマが印象深い作品です。
主人公の少年である立花特平(通称トッペイ)は、月が出ている時に感情が高ぶると狼に変身する「狼男」であった。
トッペイがオオカミから人間に戻るシーン。
何かのきっかけで鳥や獣に変身してしまうバンパイヤ族の少年・立花トッペイが主人公の物語。トッペイは満月を見たり激しい怒りを覚えたりするとオオカミに変身してしまう。人間からオオカミに変身するシーン。オオカミに変身してしまうと凶暴になり人間の理性も失われてしまう。
どろろ / ダークな怪奇ヒーロー物。百鬼丸による妖怪退治。
『どろろ』は、手塚治虫によるダーク・ファンタジー、妖怪時代劇漫画。『週刊少年サンデー』(小学館)にて1967年35号から1968年30号まで連載された後、『冒険王』(秋田書店)にて1969年5月号から10月号まで連載された。
水木しげるの妖怪漫画「墓場の鬼太郎」を目にした手塚は、その内容から受けたあまりの衝撃に、自宅で階段から転げ落ちたという。やがて「ゲゲゲの鬼太郎」と改題された同作品によって「妖怪ブーム」が起こると、手塚はこれを意識して「どろろ」を発表している。
『どろろ』について手塚は手塚治虫漫画全集のあとがきにおいて、「水木しげるが描く一連の妖怪もののヒットと、それに続く妖怪ブームにあやかり作り上げたキワモノ」と語っている。
48体の魔神に、身体の48ヶ所を奪われた百鬼丸は、自分の身体を取り戻すため、孤児のどろろと共に妖怪を倒す旅を続ける。
手も足も耳も鼻もない状態の赤ん坊の百鬼丸…あまりにもグロテスクなキャラ設定は衝撃的。
生まれた赤子は身体の48か所が欠損した状態…。
生まれながらに魔物に体の48箇所を奪われ、満足に動けない状態から、育ての親、医師の「樹海」に義手、義足を作ってもらう。
百鬼丸という衝撃
怨念渦巻く仄暗いストーリーと時事問題に対する痛烈な風刺、義手や義足の中に刀などの武器を仕込んだ主人公というグロテスクな設定は、連載当時は読者に受け入れられず打ち切りとなった。しかしこうした作品の深さ、奇抜かつ独創的なアイディアは、読者に強烈な印象を残し、カルト的な人気を博すこととなった。
手塚治虫 怪奇マンガ『アラバスター』 / 猟奇的な耽美グロテスク。人間の心の闇に焦点を当てた暗く救いの無い物語が描かれる。
(巻頭カラー)手塚治虫「アラバスター」新連載号 – 週刊少年チャンピオン1970年(昭和45年)35号
『アラバスター』は、1970年から1971年まで週刊少年チャンピオンに連載された手塚治虫の漫画作品である。
裏切られて冤罪を背負わされ、その恨みから犯罪に手を染めた主人公と、彼が手にした特殊な光線銃、それらに翻弄されて自らも犯罪に手を染めてしまったヒロインを中心に、人間の心の闇に焦点を当てた暗く救いの無い物語が描かれる。
オリンピックで6つの金メダルを取った英雄、ジェームズ・ブロックは、黒人という理由で恋人に裏切られ、自分の皮膚を消したいと願うようになった。そして、ある老科学者が発明した、体を透明にする光線を浴びて、全身半透明の体になると、“アラバスター”と名を変えて、世の中の美しい物すべてに憎悪を向け始めたのだった……。
NHKのドキュメンタリー「手塚治虫 創作の秘密」の中では、作品から抜き出した絵のパネルを前に「これはひどいね」「僕が最低のレベルの時に描いたものです」と一刀両断。
ドキュメンタリー内で登場したのがこちらのシーン。この絵を見ながら当時を振り返りこう語る。「読者には陰湿だと言われましたね。陰湿で陰惨で非常に暗いと言われた。それは当然だと思います。僕がもう谷底に落ち込んだ時に描いたから」
引用元: 虫ん坊 2018年6月号(195)オススメデゴンス!:『アラバスター』
人種差別に苦しみ、自分の黒い皮膚を消してしまいたいと望んだアラバスターは、偶然手に入れた「透明になれる光線」を浴びるも、誤って「皮膚のみが透明」…骨格や筋肉、血管が透けて見える、グロテスクな“半透明人間”になってしまう。
小沢亜美 (おざわあみ)は、『アラバスター』のヒロイン。F博士の孫。胎児期にF光線を浴び生後完全に透明化。
自身の運命を呪ったアラバスタ―は、その光線を妊娠中の母親が浴びた影響で透明人間として生まれ育った少女・小沢亜美(おざわあみ)を女王として担ぎ上げ、世の中の美しいものを醜く変えてしまおうとするのだ。
『バンパイヤ』や『MW(ムウ)』など人間の悪の心を徹底的に描いた犯罪サスペンス作品が、本作の類似作品といわれる。
MW(ムウ)
『MW』(ムウ)とは手塚治虫の漫画作品。「ビッグコミック」(小学館)1976年9月10日号 – 1978年1月25日号に連載されたピカレスク(悪党)漫画。サイコサスペンス漫画。「同性愛」と「猟奇殺人」を題材として扱っており、数多くの手塚作品の中で異彩なものとなっている。
エリート銀行マンで連続殺人者の美形青年・結城美知夫(ゆうきみちお)。幼少時に化学兵器「MW(ムウ)」を浴び、善悪の区別を失った彼の悪魔的犯罪を阻もうとする、正義漢の神父・賀来巌(がらいいわお)。二人の同性愛関係、美知夫に魅せられて滅ぶ美女たち。複雑な男女の愛憎と、政財界や某軍事大国の巨大権力とが綾なす、狂気と頽廃のアラベスク—-。軍事基地から「MW(ムウ)」を奪った美知夫は、全人類に対してテロを企むが……!?
結城と賀来は16年前、ある島で軍が保管していた毒ガス・MW(ムウ)が発生する事件に巻き込まれた人々の生き残り。その毒ガス事件は政府の隠蔽により抹消され、世間では知られていない。
2人は同性愛者として、肉体関係を結んでいた。16年前、結城は、賀来に強引に犯された。
賀来は結城を誘拐・レイプしたことで毒ガスを吸わせてしまったことへの負い目と懺悔から、神父となり、結城を救済すべく、犯罪をやめさせようとするのだが、結城の悪魔的魅力に翻弄され、彼の計画に協力してしまうことに。
結城美知夫(ゆうき みちお)の表の顔は関都銀行新宿支店のエリート銀行員、裏の顔は世間を騒がす誘拐殺人犯。
MW(ムウ)に脳や心臓を冒されて死期の近い結城は、MWを手に入れて、自分が死ぬ時、世界中にMWをばらまき、全人類を道連れにしようと企んでいた…。
『ばるぼら』 / 怪奇ロマン・オカルト
『ばるぼら』は、手塚治虫の大人向け漫画である。『ビッグコミック』(小学館)で1973年(昭和48年)13号(7月10日号)から1974年(昭和49年)10号(5月25日号)まで連載された。
小説家・美倉洋介がある日駅で見つけた少女・ばるぼらは、美倉洋介が新宿駅で拾ったアル中の宿なし娘。洋介宅に居着くがケンカ・家出を繰り返しては舞い戻る奇妙な同居人。肉体関係など考えられない仲だったが急に美しく成長して心を捕らえ、2人は心身ともに結ばれる。しかし……。
ばるぼらが美倉の家にいついてからというもの、美倉のインスピレーションが冴えわたり…。悪魔か、ミューズか。ふしぎな少女ばるぼらを巡る不可思議な物語。
「ザ・クレーター」 / 手塚治虫の傑作恐怖シリーズ
『ザ・クレーター』は、17本の読み切り漫画からなる手塚治虫の連作短編シリーズ。1969年から1970年にかけて『少年チャンピオン』(秋田書店)に連載された。
オムニバス恐怖ファンタジーの傑作『ザ・クレーター』は、1969~70年、隔週刊時代の「少年チャンピオン」(秋田書店刊)で好評を博した巨匠・手塚治虫の傑作恐怖シリーズ。
恐怖、狂気、怪奇。人間を映すSF短編集!非現実的な状況に出遭った時、人は自らが抱える狂気に飲み込まれてしまうのか。それとも……?
1:二つのドラマ/2:八角形の館/3:溶けた男/4:風穴/5:墜落機/6:双頭の蛇/7:三人の侵略者/8:鈴が鳴った/9:雪野郎/10:オクチンの奇怪な体験/11:巴の面/12:大あたりの季節/13:ブルンネンの謎/14:紫のベムたち/15:オクチンの大いなる怪盗/16:生けにえ/17:クレーターの男
17のエピソードから、人間の秘めたる業が浮かび上がる!
『ザ・クレーター ≪オリジナル版≫(手塚治虫)』 販売ページ | 復刊ドットコム
空気の底
『空気の底』は、手塚治虫の連作短編シリーズ。1968年から1970年にかけて、14編がプレイコミックで連載された。SF、サスペンス、ホラーなどさまざまな手法で描かれる 空気の底=地球の表面でうごめく人間たちの過酷な運命。
空気の底 オリジナル版
「第1話 ジョーを訪ねた男」
「第2話 夜の声」
「第3話 野郎と断崖」
「第4話 グランドメサの決闘」
「第5話 うろこが崎」
「第6話 暗い窓の女」
「第7話 そこに穴があった」
「第8話 わが谷は未知なりき」
「第9話 猫の血」
「第10話 電話」
「第11話 カメレオン」
「第12話 カタストロフ・イン・ザ・ダーク」
「第13話 ロバンナよ」
「第14話 ふたりは空気の底に」
地上にへばりつき、私利私欲にまみれて生きる人間たち。その業の深さを、SFやホラー、サスペンスなどの形を取りながら描いた手塚治虫の傑作短編シリーズの、雑誌掲載時のオリジナルの形での初単行本化です。
空気の底で蠢くちっぽけな人間たちの世界!息が詰まるような日々の暮らしの中で、若者たちの満たされぬ愛と、やり場のない怒りが、しだいに人々を追い詰めていく! 問題作を多数収録した、異色の短編集!
この『空気の底』に収録されている各作品は、対象年齢がやや高い青年向けの作品になっている。
『空気の底』の掲載から消された封印作品「ながい窖」
「ながい窖」(サンデー毎日1970年11月6日増刊号掲載)。大企業の専務を勤める在日朝鮮人(作中では帰化朝鮮人という設定で、帰化朝鮮人と在日朝鮮人は厳密には違うが、便宜上、在日朝鮮人としておく)の森山の苦悩を描いた作品。本作は手塚治虫漫画全集や無数にある文庫本には収録されていない。サンミリオンコミックス『空気の底』下巻(1972年刊)にのみ収録されているが、絶版になっている。
物語のテイストや絵のタッチが『空気の底』と似通った短編集
『時計仕掛けのりんご』(全集MT261、1968年-1973年の短編8作)
『火の山』(全集MT265、1972年-1973年の短編4作と1979年の中編1作)
『サスピション』(全集MT284、1968年-1982年の短編9作)
原作漫画「鉄腕アトム」の後日談的内容の鬱漫画「アトムの最後」 / 誰も幸せになることがなくあまりに救いがないと賛否両論を巻き起こした。
『アトムの最後』(アトムのさいご)は、別冊少年マガジン(現・月刊少年マガジン)1970年7月号(講談社)に掲載された手塚治虫の漫画作品。鉄腕アトムの後日談的内容の作品であり、題名の通り「アトムの最後」をテーマとしている。「手塚治虫恐怖短編集 科学の暴虐編」に『アトムの最後』が収録されている。
作者自ら「陰惨でいやな気分になる」と記述したように殺伐とした悲劇として描かれあまりにも救いのない内容に賛否分かれるが、一部では高い評価を得た作品である。
秋田書店刊『鉄腕アトム別巻1』の作者自身の解説によると、「執筆当時、急進的な学生運動が流行り、漫画や劇画の内容も暗くてニヒルなものが多く、それらの影響を多分に受けた作品」と評している。
本作ではアトムの存在は脇に置かれており、主人公の丈夫とガールフレンドのジュリーの間に起きた悲劇が物語の主軸となっている。役目を終え博物館に眠るアトムが再び目覚める内容を描いた。
丈夫とジュリーが成長した2055年の地球では、人間とロボットの立場が完全に逆転していた。人間はロボットに支配されていた。ロボットは保存されていた人間の精子と卵子を人工子宮で培養し、生まれた人間の子供はロボットの親に育てられ、ある年齢に達すると同じように育てられた人間同士で殺し合い(決闘)をさせられるという、ロボットたちへの「見世物」のために使われていたのだった。見世物として人間同士の殺し合いを見て楽しむ悪趣味なロボットたち…。「人間はロボットの家畜、ロボットのペット」に過ぎないという残酷な世界の真実を知った丈夫はジュリーを連れ、ロボットたちの元から逃げ出す。
ロボット博物館に逃げ込んだ丈夫とジュリーは、役目を終え博物館の中に展示されていたアトムを見つける。アトムにエネルギーを与え蘇らせた丈夫は、起動したアトムに事情を話し助けを求める。
主人公の丈夫は、幼馴染のジュリーと共に、幼い頃に首吊りごっこをして遊んでいた。幼さと無邪気さがなせる残酷な遊びで重症を負ってしまったジュリーは、家出をし丈夫の前から姿を消してしまう。最後に、実は、ジュリーはこの時に死亡しており、身代わりのロボットにすり替わっていたことが追手のロボットによって明かされる。
事情を知ったアトムは2人を助け追手と戦う事を決意し、丈夫にとって衝撃的な真実を言い残して追手の元へ飛んでいく。
誰も救われない衝撃の鬱エンド…ジュリーは、人間ではなくロボットだった。衝撃の事実に驚き、ジュリーに裏切られたことを嘆いた丈夫は、人間もロボットも変わらないと訴えるジュリーを怒りに任せ殺してしまう(バラバラに破壊)。
追手のロボット「人間のジュリーを殺したのはおまえだ!おまえは人殺しだ」
そして追手のロボットから、丈夫は更に衝撃的な事実を聞かされる。丈夫とジュリーは将来の殺し相手として育てられていたが、ジュリーは首吊りごっこの遊びの結果死亡してしまい(丈夫は、子供の頃、ジュリーを首吊りごっこで殺していた)、その後ロボットにすり替えられていたのだった。
ジュリーを二度も殺してしまったことを知った丈夫は、真実を知った直後に追手のロボットの手により射殺されてしまう。丈夫を殺し、追手が去った空の向こうでは、二人の最後を知らないアトムが戦い続けていた。
つのだじろう
恐怖新聞 / オカルト怪奇マンガの代表格。心霊恐怖物ブームの先駆け。1970年代のオカルトブームを牽引した。
つのだじろうによる恐怖漫画。『週刊少年チャンピオン』誌(秋田書店)において、1973年から1975年まで連載された(全29話)。1970年代のオカルトブームの一端を担う。
「恐怖新聞」は、毎日、深夜0時に配達される。1回読むごとに100日分寿命が縮まるとされており、どれだけ読むのを拒もうとしても、新聞は主人公・鬼形礼(きがた れい)の元に必ず届くようになっている。
うしろの百太郎 / 心霊恐怖物ブームを牽引。オカルトブームを牽引した。
心霊現象をテーマにした恐怖漫画。主人公・後一太郎(うしろ いちたろう)が、主護霊の「うしろの百太郎」に導かれながら、様々な心霊体験をする。1970年代のオカルトブームの火付け役の1つであり、つのだじろうの代表作。
1974年(昭和49年から50年前後)頃、「コックリさん」が少年少女の間で大流行しています。「うしろの百太郎」がブームの火付け役に。
「一太郎が死んだ」…海で溺死し、地縛の霊となった少女に誘(いざな)われ夜の浜辺へとやってきた後一太郎。ふと気づくと少女の姿はなく、かわりに足元の水の中から・・・。
主人公の一太郎が死亡し、土葬の棺の中で蘇生する。
古賀新一
1964年、『週刊マーガレット』で「白ヘビ館」を連載。当時、少女向けホラー漫画家として楳図かずおと双璧を成す存在だった。以後、続々と怪奇漫画を発表し、このジャンルを代表する作家のひとりとなる。
ホラー映画やオカルトブームを追い風に、黒魔術というアイテムを取り入れた『エコエコアザラク』がヒット。
エコエコアザラク / 黒魔術を操る美少女・黒井ミサが活躍するオカルトミステリー・ホラーの金字塔
『エコエコアザラク』 は、古賀新一による日本のホラー漫画。また、それを原作としたテレビドラマ、映画も繰り返し製作された。黒魔術を駆使する若い魔女・黒井ミサ(くろいミサ)を主人公とし、ミサに関わる奇怪な事件、人々の心の闇を描く。
原作の黒井ミサは、善人であれ悪人であれ場合によっては人を平気で惨殺する非情な魔女として登場、特に自分に対する性犯罪者に対しては容赦ない場面がたびたび描かれた。
サバトの呪いをかけるには…必ず生きている動物を使い、その場で首を切断する。
サバトの呪いをかけるために、黒井ミサが犬の首を切断する凄惨なトラウマシーン。エコエコアザラクの初期の巻はリアル(劇画風)に黒魔術と儀式・サバトの恐怖が描かれ、凄惨で衝撃的な描写が多い。 黒魔術…サバトの呪い…ミサが裸になるとそこには・・・なんと犬の顔が…。お色気も満載な有名なトラウマシーン。
黒魔術のきびしい掟…黒井ミサの秘密を知った者は、口封じのために黒魔術によって容赦なく殺される。
同級生が黒井ミサの黒魔術によって理不尽にも殺されていく。
ミサが唱える呪文「エコエコアザラク エコエコザメラク エコエコケルノノス エコエコアラディーア !」
悪人でも助命したり、善人でも内臓を抜き取って殺したりエピソードごとに性格が異なる黒魔術を使う魔女…ダークヒロイン。悪人(特に性的な犯罪者)には容赦がない。悪人は惨殺やむなし。ミサに対する暴行、セクハラ…黒魔術で報復される。
自分に危害を与えたり、道義的に許せない人々に対しては魔術で命を奪うことも厭わない。
漫画での黒井ミサは、場合によっては人(善人であっても悪人であっても)を平気で惨殺する非情な魔女として登場する。顎を外して顔をくしゃくしゃに出来る。そのためあだ名は「くしゃくしゃ人間」。黒井ミサは、回が進むにつれ、比較的明るい性格の娘へと変化していった。
日野日出志(ひの ひでし)
ホラー漫画家の重鎮である日野日出志(ひの ひでし)の数多くのホラーや怪奇作品を読んで、一生消えないトラウマを植えつけられた子どもは数知れない。
蔵六の奇病 / 隠れた名作トラウマ漫画。70年代の子供達に強烈なトラウマを植え付けた。
体中が吹き出物だらけになる不思議な奇病にかかり、住んでいる村から追い出されてしまった主人公の蔵六 (ぞうろく)。森の外れに隔離された蔵六は、自らの体から吹き出る7色の膿を使って絵を描き始める。果たして蔵六の描く絵とは?そして読者を待ち受ける壮絶なストーリーとは?閉鎖的な村社会。村人たちの言動に人間の恐ろしさを感じる。閉鎖社会から爪弾きにされた蔵六。
蔵六の病状は進行していき、蔵六の目が腐って落ちてしまう。
サイケデリック怪異悲譚『蔵六の奇病』を1年がかりで描き上げ「少年画報」に発表。のちにひばり書房から単行本化され、70年代の子供達に強烈なトラウマを植え付けた。
秋田書店に持ち込んだが「グロテスクすぎる」という理由で断られた。続けて、少年画報(少年画報社)に持ち込むと、大学を出たての新人編集者に「おもしろいので、預からせてほしい」と言われた。いったんはやはりグロテスクすぎるという理由で断られたのだが、編集長が替わったタイミングで掲載されることになった。
引用元: 伝説の怪奇漫画家が歩んできた退屈しない人生 | 東洋経済オンライン
全身が腐り始めた蔵六の臭いが村にまで届くようになり、化け物となった蔵六を殺してしまおうと村人たちが話し合い、雪の吹雪く日に決行。
体は怪物になったが心は優しい人間のままの蔵六に対して、体が人間のまま心が怪物になった村人たちが対照的に描かれている。
ねむり沼に到着した村人たちは蔵六を見つけることは、とうとうできなかった。蔵六が姿を消した後、七色の甲羅の亀が現れる。
日野日出志の代表作であるショッキング自叙伝『地獄変』 / 衝撃のラストで有名。地上のすべての核兵器のボタンを押させることが真の狙い…。
作者自身を投影した絵師の独白で綴られる本作は、筆舌に耐え難い残酷な表現で埋めつくされ、まさに日野日出志の「狂気」が見事に圧縮された怪作である。ここでは作者の死、苦、血、狂、女全ての表現において、アートとしての完成形を見ることができる。
これは血の匂いとその美に魅入られて地獄に落ちたある無名絵師の狂気と戦慄に満ちた恐るべき告白の物語である。
地獄に魅入られたある絵師の男の語る狂気の数々。 そして男の向かう先、その衝撃の結末とは…。
『地獄変』は衝撃のラストで有名。
主人公の地獄絵師は読者に向かって、恐るべき一世一代の告白をする。
衝撃の結末…核戦争による全世界の皆殺しを目論んで、主人公の地獄絵師が、読者に向かって斧を投げつけるメタフィクションなオチ。
地上のすべての核兵器のボタンを押させることによって、本物の地獄絵図が実現する…。
「僕は死なない。僕は地獄の悪鬼だ。あの核の大魔王こそ僕の本当の父だ。だから僕は死なない。だが、きみは死ぬ!」
核戦争による全世界の皆殺しが地獄絵師の真の狙い。
ラストカットで絵師によって読者に投げつけられる斧は、コミックの歴史に残る名シーンでもある。
地獄の子守唄 / 「こんどは、きみが死ぬ番だ!」と呪詛を投げかける。当時の読者は怯え、PTAからの苦情も殺到した。
私の名は日野日出志。怪奇と恐怖にとりつかれたまんが家である、、、から始まる作者の告白的作品。自伝とも夢想とも言える形式の中で怪奇と猟奇が集約された傑作。ラストの3日後に君は死ぬと読者に指差して言い放つ狂気は何物に代え難い。
地獄の子守唄(ひばり書房、1977年6月30日)の最後に、主人公の日野青年は読者を指さして、「こんどは、きみが死ぬ番だ!」とメタ・フィクショナルな呪詛を投げかける。当時の読者は怯え、PTAからの苦情も殺到した。
ひどい家庭環境で育った日野少年が、いつしか漫画を使い人を呪い殺すようになる。いじめっ子を殺した後は、両親や編集者も呪い殺した。そして漫画の最後に日野青年は読者を指さして、
「こんどは、きみが死ぬ番だ!」と宣言する。
急に漫画がフィクションと現実の境界を超えてきた感覚に、当時の少年たちは怯えた。編集部には「本当に死んじゃうんですか?」という手紙がいっぱい送られてきた。PTAからの苦情も殺到した。
引用元: 伝説の怪奇漫画家が歩んできた退屈しない人生 | 東洋経済オンライン
呪われた赤ん坊が…
雷鳴轟く夜、生まれ落ちた双子のうち怪物のごとく奇怪な片方の赤ん坊は、ゴミ捨て場の一角に死んだまま捨てられた。しかし、怨念の鬼火が再びその女児に命を与え、復活させる。そこからおぞましくも悲しいその子の運命の物語が始まった。
少女は昼間は物陰に潜んで眠り、夜には人を襲ってその肉を喰らいながら、確実に一つの方向へと足が向かって行きます。警察は総出で少女を追っており、ついに少女は足を撃たれてしまいます。
血を流しながら逃げ込んだ一軒の家には同じ年頃の少女が一人眠っていました。の時、謎の老婆の声が聞こえます。そして「そこの少女はお前の双子の姉妹であり今まで幸せに生きてきたが、そいつの血を吸いつくせば姿も入れ替える事ができ、お前は幸せになれる」と言ってきます。そしてこの醜い少女は……。
あまりにも残酷で怪奇溢れる仕打ちの中に人間の存在を問い直す、「蔵六の奇病」にも通ずる隠れた名作。ラストは涙なしでは読めない。
赤い蛇
「あかずの間を覗くとな、家族に必ず恐ろしいことが起こるのじゃ……」
《迷宮の家》に囚われた家族たちを襲う世にも怪奇な忌まわしい出来事!!
旧家に暮らす僕は絶えず家を出たいと考えていた。言い知れぬ恐怖と不安に苛まれていた毎日。
近づいてはいけない開かずの間と、狂った家族、祖父、祖母、父、母、妹。
狂気と残酷に囲まれて過ごす日々。
それは赤い蛇が現れることで、これ以上考えられないほどの狂った世界に僕は引き込まれていく。
水木しげる
『ゲゲゲの鬼太郎』 / 妖怪・怪奇ヒーロー物の代表格。妖怪漫画の金字塔。妖怪ブームを牽引。
『ゲゲゲの鬼太郎』は、水木しげるの妖怪漫画、および、それを原作とした一連の作品群の総称。妖怪のイメージを世間に浸透させた水木の代表作であり、「妖怪漫画」を一つのジャンルとして確立させた作品。墓場から生まれた幽霊族の少年・鬼太郎が多種多様な妖怪たちと繰り広げる物語。
1967年(昭和42年)に『週刊少年マガジン』11月12日号から作品名を『ゲゲゲの鬼太郎』と改題された。
「妖怪族(幽霊族)」唯一の末裔「鬼太郎」出生の秘密。鬼太郎の父親「目玉親父」の誕生秘話。
『別冊少年マガジン』1968年8月号に掲載された「鬼太郎誕生」から始まる。
おもい病気に罹った不気味なお化けの夫婦(妖怪族・幽霊族)はやがて亡くなった。水木は、その霊をなぐさめてやろうと考え、やっとの思いで妻だけ墓に埋めた。
死んだはずの妖怪族(幽霊族)の母親を埋めた墓穴から、赤ん坊が生まれる…驚くべき鬼太郎出生の秘密が明かされた、「鬼太郎の誕生」
平凡なサラリーマン水木は、荒れ果てた古寺に住みついた、不気味なお化けの夫婦と知り合う。おもい病気に罹った夫婦はやがて亡くなるが、死んだはずの母親を埋めた墓穴から、赤ん坊が生まれるのだった・・・・・・。滅亡の危機にある「妖怪族(幽霊族)」唯一の末裔。鬼太郎のあてのない旅がここから始まる!! 主人公・鬼太郎の父親「目玉親父」(めだまおやじ)は、かつて地上を支配していた種族である幽霊族の生き残りであり、「鬼太郎誕生」以前は不治の病である「溶ける病」を患い、ミイラ男のような風貌をしていた(罹病前の風貌が描写された事はない)。身籠った妻とひっそり暮らしていたが生活の手段として売った血液が輸血した患者を幽霊化する混乱の元となってしまう。
調査に訪れた血液銀行の銀行員・水木に身の上を打ち明け調査の引き伸ばしを願い出たが妻ともども病死。鬼太郎を案じて自らの遺体の左の眼球に魂を宿らせて生き返り現在の姿となった。
父親の遺体の顔面からどろどろと流れ出た目玉が生きており…眼球に小さな身体と手足が生えた「現在の姿」に変わったため、「目玉おやじ」と呼ばれるようになる。漫画作品は、貸本を経て1965年から数多くのシリーズが描かれ、幼年誌から青年誌まで幅広く掲載された。当初のタイトルは『墓場の鬼太郎』であったが、アニメ化に伴い改題。怪奇色の強かった内容も鬼太郎と妖怪の対決路線へと徐々に変化し、鬼太郎は正義のヒーロー然としての側面が強くなっていった。
あの人気キャラクター、ゲゲゲの鬼太郎の原点がここに!
妖怪ブーム誕生の秘密がこの中に集約! 妖怪ブームを巻き起こしたゲゲゲの鬼太郎。貸本時代に描かれた鬼太郎の活躍をすべて収録した完全版!
「ゲゲゲの鬼太郎」第3期(1985年~1988年)のエンディングテーマ「おばけがイクゾー」
みんなのトラウマ…最後の最後で妖怪たちが視聴者を驚かしにかかる。
『河童の三平』 / 民話物
河童にそっくりな人間の子ども、河原三平は、ひょんなことから河童の世界に迷い込んでしまう。それをきっかけに、河童の長老の息子が人間世界へ留学することに…。古き良き日本の田舎で繰り広げられる大騒動!
『悪魔くん』
1963年の貸本漫画から始まり、1966年の『週刊少年マガジン』、1970年の『週刊少年ジャンプ』、1987年の『コミックBE!』、1988年の『月刊コミックボンボン』、1993年の描き下ろし単行本と、掲載誌を変えて断続的にシリーズが発表された。「悪魔くん」と呼ばれる少年が悪魔の力を借りて、世界を平和へと導くために戦う物語。
作品は貸本版の「松下一郎」、『少年マガジン』版の「山田真吾」、『コミックボンボン』版の「埋れ木真吾」と、主人公の異なる三種類のシリーズに大別される。
悪魔を呼び出す時は魔法陣を前に「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」と呪文を唱える。
映像作品は特撮テレビドラマが1966年から翌年にかけて放送。『少年マガジン』版を原作としており、水木作品では初めての映像化である。
伊藤潤二
伊藤潤二傑作集 富江 / 絶世の美しさをもつ少女『富江』(とみえ)と、その虜になった男達が狂っていく様を描く。
『富江』(とみえ)は、1987年から『月刊ハロウィン』誌や『ネムキ』誌などで伊藤潤二が発表したミステリーホラー漫画。デビュー作にして代表作。
富江に恋する男たちは例外無く彼女に異常な殺意を抱き始める。ある者は富江を他の男に渡さず自分が独占したいため、ある者は富江の高慢な性格に挑発され、ある者は富江の存在の恐怖に駆られ、彼女を殺害する。しかし、富江は死なない。何度殺害されても甦る。
『富江・画家』
美しい女性を描く新進画家として注目を集めていた森光夫は自身の個展で、息を飲むほど美しい少女に出会う。自宅でいつものようにモデルのナナを描いていると、高らかに笑いながらあの時の少女が現れた。ナナを悪しざまに追い出して、自分がモデルにしろと少女は言う。「私? トミエっていうのよ」
画家の森光夫は、堀江ナナという女性モデルを描き、その作品で人気を博します。
実は、富江は自分の姿を写真で残せません。写真を撮ると顔が分裂してしまうからです。それでも自分の美しさを残したい彼女は、「絵」に目を付けるのでした。しかし森が最後に描いた彼女の姿は…。
『富江・小指』
男ばかりの4人兄弟の新しい母親として、富江という美しい女性がやってきた。その女が来てから、3人の兄たちは富江を女として見るようになり、富江も気を引くそぶりをするように。父はそれが原因なのか、自殺。末っ子の弘也はそれを冷ややかに見ていた。そのうち弘也まで誘惑するようになった富江だったが弘也は徹底的に無視した。嫉妬した兄たちは彼を地下室に閉じ込め、ついには惨劇が……!小指の富江だけは顔に醜い傷を負っています。醜いことで辛い思いをしてきた三男は、しだいに小指の彼女に気持ちを寄せるようになっていきます。
4兄弟の末っ子で醜い容貌の弘也は、兄たちが殺してしまった富江の死体の処分を押し付けられる。殺人の濡れ衣を着せられた弘也は、逃亡先の洞穴の中で暮らし始めるが…
美しい富江に言い寄られても全くなびかなかった弘也が、灰になって醜い姿の小指に対しては「愛してる」と伝えるのです。
弘也が愛してるといった途端、小指は急に美しい姿に変貌し、弘也の元を去ります。結局の所、富江にとって男からの愛というのは、自分の価値を認識するための手段でしかないのです。
うずまき
女子高生・五島桐絵が生まれ育った黒渦町に、ある日突然、異変が起き始める。つむじ風が舞い、草木の枝葉がとぐろを巻き、火葬場の煙が渦を巻いて上がっていく……そして人間も、うずまき化し始めていく。髪が渦巻く。身体がねじれあがる。カタツムリに変身する……うずまきの呪いから助かるため、桐絵は町から脱出しようとするものの!?
横田先生が…カタツムリに変身する
閉塞感渦巻く今日の格差社会を予見した、ホラー漫画の古典的傑作は、怪奇漫画家・伊藤潤二の代表作である。
闇の声・グリセリド(伊藤潤二コレクション)
闇の声<全>は、伊藤 潤二によるホラー漫画。恐怖の裏に人間の哀しみがある。恐怖の裏に生きるおかしさがある。ホラー、シュール、ナンセンス・・恐怖の名手が放つ新感覚のホラー連作!! 人間心理の壁を余すところなく活写する魅力のアンソロジー14作。劇画調タッチのグロテスクな描写で、突飛な設定と緊迫感のある不条理な展開の内容が多い。
「グリセリド」はおぞましさで有名なみんなのトラウマ。兄が上からニキビ攻撃をしてくる様子はおぞましい。
自分の顔を思いっきりギュッーと絞り、ニキビ汁を大量に妹に浴びせる。
兄の大量のニキビ汁をぶっかけられる壮絶な展開…。
元々陰湿だった兄貴は思春期にはニキビ顔になり、いじめられるようになる。そのストレスの捌け口は妹の唯に向けられ、ある日、唯の顔に向け、ニキビの活火山を噴火させた。
焼肉屋を一階で経営する自宅で育った唯は、常に換気が悪く脂でべとべとになった柱や壁に嫌気がさしていた。加えてふたつ年上の兄には陰湿ないじめにあう毎日。サラダ油を飲む嗜癖があった兄は、学校でいじめにあうようになり家に引きこもり始める。引きこもり始めるといっそう油を求め始めるようになった兄は唯や父親に暴力を振るい始め、勢いあまった父親は兄の頭をフライパンで殴ってしまうのだが……!?
関よしみのトラウマ漫画『愛の墓標』
関 よしみは、少女漫画の絵柄で、ホラー、サイコ・サスペンスを執筆する。シチュエーションホラーの女王と評されるホラー作家。カルト的な人気のあるホラー漫画家。
極限状態にある人間を描くトラウマ漫画といわれる関よしみのホラー漫画。どこか暖かみのある少女漫画らしい絵柄と残酷なストーリーのギャップにショックを受ける読者が多く、「読んだ後しばらく食欲が無くなった」「こんなモノが存在する事に腹が立った」「作者は本当に人間なのか?」といった感想が聞かれる。今でもトラウマとして語り継がれる『愛の墓標』。
一番強い愛で結ばれたカップルには10億円…生死をかけた愛情ゲームの始まり…。「さあ、準備が整いました!!それでは、美和さんのルーレット、スタート!! 出ました!Bの左上腕切断ー!!略して…左切!!」
人間の恐さ・人間の闇や暗部をえぐり出す関よしみ先生の先見性。「自分のパートナーを殺してみせた者に…わしの全財産800億円の相続権を与えよう」
最後に残ったのは主人公ペアと担任の先生ペア。主人公の美和の担任である先生は、旦那を助けるために眼球に空気を注入され、両眼とも破裂させられていた。
衝撃のラスト…人は本当に譲り合い、愛し合うことはできないのか…。
救命ボートに穴が開いてることに気づき、次第に救命ボートが沈んでいく。慌てる二人だったが、救命ボートには何故か一つしか救命衣がなかった…。あまりにも究極の極限状態に、残酷なことがありすぎて精神的に消耗しきっていた二人は、またもや訪れた極限状態に錯乱し、救命衣をめぐって口論になる。沈みゆく救命ボートの中で助けを求め続ける二人。
主催者が「やはり、人間とは裏切りの生き物だ。信用ならん生き物だ……」とつぶやく。
美内すずえ
13月の悲劇 / オカルト映画「サスペリア」に似たオカルト漫画の傑作
寄宿学校の聖バラ十字学校に転入したマリー。そこは、外出はおろか手紙を書くことさえ許されない厳しい校則に縛られた悪魔崇拝の学校だった。日曜日もクリスマスも存在しない。あるのはシスターたちによる水曜日の礼拝と、洗脳された生徒たちだけ。高い鉄柵に囲われて、外の世界を眺めることしかできないマリーは……。
母の形見である十字架のネックレスをつけていたことがバレて、夜中中体罰をうけたマリー。
どうしてここまでひどい目にあわなくちゃいけないの――?
狂信的に“主ルシフェル”に忠誠をちかう人たちを不思議に思ったマリーは、図書室でその存在を調べることに。 すると驚愕の事実が……!
白い影法師
少女マンガ界のオカルトジャンルの基礎的作品。父の転勤で転校した長谷部涼子。新しいクラスの窓ぎわの前から4列目の席はなぜかいつも空席になっていた。ある日忘れ物を取りに戻った涼子はとんでもないものを目撃してしまう!!最後の「机の下から…」のシーンが有名。幽霊の登場シーン…クライマックス、不意に目に飛びこんでくる「例のシーン」の衝撃…数多のトラウマを産んだこのシーンは、今でもファンの間では語り草に……。
黒百合の系図
謎に満ちた母の突然の死。「黒百合」をキーワードに知られざる母の過去を求める北条安希子。そこには恐るべき血の伝説が!!優しくて大好きな母親が自殺⁉
母の自殺を信じることができない娘の安希子は、亡くなる1週間前から母の様子がおかしかったことを思い出す。それは庭に高山植物の黒百合が咲いていたことからだった。その母の葬儀に20年以上前から知り合いだったという女性が現れ、安希子に「飛竜家最後の…黒百合に気をつけて」と謎の言葉を残し、去って行った…。
アキコを写した写真には、千也姫の霊が写っていた。
母親の不審死の真相を突き止めようと決意した北条安希子は、母親の故郷である鬼姫谷に向かった。そこで出会った旅行者の田代源太郎と共に、鬼姫と呼ばれた千也姫の祟りを知った安希子。自身も何度も窮地に陥るが、源太郎たちの協力により、祟りから解放された。
わたなべまさこ
『ガラスの城』
1970年代に爆発的な人気を獲得し、「純粋な心を持つ妹が、性格のゆがんだ姉を最後には許す」という善悪構造はその後、多くの作品で取り入れられ、日本のみならず2002年の韓国のテレビドラマ『ガラスの靴』などにも影響を与えているという説もある。
派手好きでわがままな姉・イサドラと、慎ましく純真な妹・マリサ。対照的な姉妹が、ロンドンの一角で母親とともにささやかながらも幸福な生活を送っていた。
ロンドンの裏町で暮らす双子の姉妹、イサドラとマリサ。二人の運命は、母親の事故死で大きく変わることに…。母の遺品から、マリサが行方不明のストラス・フォード伯爵の娘と知ったイサドラは、真実をひた隠し、まんまと伯爵令嬢になりすます。相反する二人の運命は…!?
『聖ロザリンド』 / サスペンスホラーの新境地を開拓。幼い快楽殺人鬼のロザリンド。
本書は、彼女が少女マンガ華やかなりし70年代に生んだホラー大傑作『聖ロザリンド』の描きおろし番外編を収録した復刻コミックです。人を疑うことを知らない天使のように愛らしい8歳の少女・ロザリンドは、じつは天性の無邪気さゆえに人々を死に追いやる殺人鬼だった……。愛らしい笑顔で惨たらしい罪を犯していくショッキングなトラウマ名作が、本書描きおろしの知られざる前日譚を交えて、よみがえります! !
首吊り死体でブランコ遊びをする快楽殺人鬼のロザリンド。愛くるしい笑顔のかわいらしい少女ロザリンドは、欲望のおもむくまま無邪気に人を殺す殺人鬼だった。天使のような少女が本当は悪魔の子と気づいた両親や執事の苦悩が描かれる。
山岸凉子
ホラー作品を数多く手がけ、クオリティの高さとその恐ろしさには定評がある。また、霊感モチーフを採り入れて運命や業の深さを追及する作品も多い。
『汐の声』(しおのこえ) / ひねりのきいた幽霊の正体が読者に強いインパクトを与えた。
芸能界と子供にまつわる話を描いた『汐の声』(しおのこえ)幽霊屋敷を取材するTV番組に参加した霊能力少女が視たモノは…
成長を止める薬を飲まされた子役、大人になっても小さいまま…
『天人唐草』 / 毒親に人格・人生を支配されてしまった娘の悲劇
『天人唐草』(てんにんからくさ)は、山岸凉子による日本の漫画。主人公の岡村響子(おかむら きょうこ)は、元々は好奇心旺盛な明るい少女だったが、男尊女卑的かつ古風な思想の厳格な父の影響により徐々に自分らしさを失い、対人関係がうまく築けなくなっていく。
気むずかしい父親に厳格に育てられた響子がゆっくりと自身のアイデンティティを失い、父親の死をきっかけに精神崩壊する。
少女漫画史上最強クラスの衝撃的なオープニング(=バッドエンド)と評される。毒親に人格・人生を支配されてしまった娘の悲劇を描いている。
わたしの人形は良い人形 / 人形ホラーの金字塔
山岸先生のホラー作品では『汐の声』と並んで最高に怖いと評判。呪われた人形がどこまでも追ってくるという古典的なお話を、時代が移ると共に持ち主が変わり、主人公が交代する仕組みでおもしろく描いている。
女の子の影をみたり局地的な地震に見舞われたり真夜中に走り回る足音が聞こえたり、陽子は心霊現象に見舞われます。
怪奇現象は日常的に起こるようになり、陽子もだんだんと精神をすり減らしていきます。
高橋葉介
代表作に怪奇幻想マンガ『夢幻紳士』シリーズや学園ホラーマンガ『学校怪談』や『もののけ草紙』などがある。作品は、基本的に猟奇要素の強い幻想怪奇漫画が多い。
『夢幻紳士』シリーズ
『夢幻紳士』シリーズは、2021年で40周年を迎えた。
夢幻魔実也 少年探偵Aバージョン – 夢幻紳士マンガ少年版|最初期の夢幻紳士作品。少年探偵「夢幻魔実也」が怪奇事件に挑む姿を描く。
夢幻魔実也 少年探偵Bバージョン – 夢幻紳士「冒険活劇篇」版
夢幻魔実也 青年探偵Aバージョン – 夢幻紳士「怪奇篇」版|青年探偵「夢幻魔実也」と彼の周囲で起こる怪奇事件を描く。ギャグ・コメディ要素を排したシリアスな短編連作シリーズ。
夢幻魔実也 青年探偵Bバージョン – 夢幻紳士「夢幻外伝篇」版
夢幻魔実也 青年探偵Cバージョン – 夢幻紳士「幻想篇」「逢魔篇」「迷宮篇」版
永井豪『デビルマン』 / 伝説のトラウマ漫画
『デビルマン』は、永井豪により1972年から1973年にかけて製作された日本の漫画作品。漫画版のテーマは「ホラー」であり、古典的なホラーからモダンホラーまで、様々な要素が見られる。連載を経るごとに黙示録的な大河要素のある構成へと変遷していった。悪魔のジンメンの甲羅には今まで食った人間の顔が浮かび上がっていると言う衝撃的な設定を持つ。
「食われた人間の顔になるのさ…おれに食われた悲しみが…おれに食われた怨念が…背中の甲羅に浮かび上がるのよ…」
「なんせおれた食っただけだからなー」「人間の感覚じゃ生き物を食うのは悪いことじゃない…そーだろう」「従順でおとなしいウシ ブタを平気で食ってるからなー」「だが殺すのはいけないな…生き物を殺すのはいけないことだ…なーっそうだろう」
「だからおれは殺さずに食ったのさ…殺さずに殺さずに…食ったのさ…クククク」
ジンメンは、最後は甲羅の人面を盾とし突撃を掛けるも明の知り合いであるサッちゃんの「おにいちゃんこいつを殺して…あたしは死んでる気にしないで…あたしは死人よ」という必死の訴えに、覚悟を決めた明が全力で甲羅を攻撃する。
「甲羅をはがすと全員死ぬぞいいのか!全員死ぬんだぞ!」
ジンメンの悪あがきに対して明はこう言い返す。「だが、貴様も死ぬんだろ!」牧村夫妻は、現代に蘇った魔女狩り組織である悪魔特捜隊に捕らえられ惨殺される。デーモンの脅威に怯える人類は、疑心暗鬼のあまり中世の魔女狩りさながらの「悪魔狩り」を行い、同胞である人間たちを次々と虐殺していく。不動明がお世話になっている牧村家の奥様が悪魔特捜隊に連れて行かれ、無残にも惨殺されてしまう。その悲惨すぎる遺体を、不動明が発見する有名な残酷シーン。
タレちゃんの生首…牧村美樹の弟のいたいけなタレちゃんも、容赦なく惨殺される。あまりにも壮絶な地獄絵図。
暴徒と化した近所の住民が、牧村美樹(まきむら みき)を惨殺してその生首を槍の先に掲げて狂喜乱舞しているという地獄絵図…。
牧村美樹(まきむら みき)は、永井豪の漫画「デビルマン」などに登場するキャラクター。牧村家の長女。同居人の明とは友達以上恋人未満の関係。悪魔に恐怖した暴徒により惨殺され、五体をばらばらにされてしまう。その後、明の手で頭部だけが埋葬された。悪魔に恐怖した暴徒により惨殺され、五体をばらばらにされてしまった牧村美樹。
暴徒と化した町の住人たちは、牧村美樹(まきむら みき)を惨殺してその生首を槍の先に掲げて狂喜乱舞している。漫画史に残る屈指の鬱展開・トラウマシーン。過激・残虐な描写、強烈なストーリーで後世の作家にも大きな影響を与えた伝説のトラウマ漫画。
犬木 加奈子(いぬき かなこ)『口裂け女伝説』
知ってる人は知っている。知らない人も凍りつく。あのウワサの女が帰ってきた――!!マフラーで顔をかくし、小学校の前にたたずむ不気味な女。そいつは口裂け女だというウワサが子供たちの間で広がり、やがて恐るべき悪夢へと…。
口裂け女(くちさけおんな)は、口元を完全に隠すほどのマスクをした若い女性が、学校帰りの子供に 「私、綺麗?」と訊ねてくる。「きれい」と答えると、「……これでも……?」と言いながらマスクを外す。するとその口は耳元まで大きく裂けていた、というもの。「きれいじゃない」と答えると包丁や鋏で斬り殺される。
口裂け女は、1979年の春から夏にかけて日本で流布され、社会問題にまで発展した都市伝説。この都市伝説は全国の小・中学生に非常な恐怖を与え、パトカーの出動騒ぎ(福島県郡山市・神奈川県平塚市)や、北海道釧路市・埼玉県新座市で集団下校が行われるなど、市民社会を巻き込んだパニック状態にまで発展した。
『不思議のたたりちゃん』 / 犬木加奈子の傑作学園ホラー。悪い子をたたりで成敗!
初出は1991年、講談社「少女フレンド」で、フレンドKCより全7巻。心優しいイジメられっ子「たたりちゃん」が、イジメっ子達に“たたりー”の正義のお仕置きをするホラー漫画。
日本じゅうの人気者、ウワサの魔界少女がやってきた!!その名も神野多々里(かみのたたり)ちゃん。暗~くてイジメられたりするけれど、やさしくけなげな女のコ。だけど、人の心の醜さに、正義の怒りが燃えたとき、“たたりー”の嵐をまき起こす!?
望月峯太郎(現・望月ミネタロウ)『座敷女』 / 心理ホラーの傑作。ストーカーを題材としたサイコサスペンス・ホラー漫画の先駆け。
『座敷女』(ざしきおんな)は週刊ヤングマガジン1993年第13~24号で連載されていた望月峯太郎の漫画作品。『ドラゴンヘッド』や『バタアシ金魚』、『鮫肌男と桃尻女』などで知られる漫画家・望月峯太郎(最近は望月ミネタロウ表記)の初期の傑作。史上最強のストーカー「座敷女・サチコ」がひたひたと迫りくる恐怖。得体の知れない恐怖の存在感。都市伝説を題材にした心理ホラー漫画の金字塔。
怪物や幽霊が出てくるホラーではなく、得体の知れない人間に理不尽に付きまとわれるという心理的恐怖、また日本で1990年代後半で「ストーカー」という言葉が広まる以前に既にストーカーをモチーフにした作品として出版されていることもあり心理ホラー漫画としての評価は高い。
【概要】大学生の森ひろしは真夜中に隣部屋のドアがしつこくノックされていることに気づく。自分の部屋のドアを開け覗いてみると、そこにはロングヘアにロングコートの大女が立っていた。後日、その大女はひろしの部屋を訪れる。電話を貸してくれと頼まれたひろしは彼女を玄関に入れてしまう。 その日を境にひろしは「サチコ」と名乗るその大女に付きまとわれる。サチコとは何者なのか?目的は何なのか?サチコの異常な行動は次第にエスカレートしていき、やがてはひろしの周囲の人々をも巻き込んでいく。
諸星 大二郎『妖怪ハンター』
『妖怪ハンター』は、オカルト・超常現象を題材とした諸星大二郎の怪奇・恐怖漫画。『週刊少年ジャンプ』1974年37号から41号にかけて『妖怪ハンター』のタイトルで、最初のシリーズが連載された。1991年に松竹富士より『ヒルコ/妖怪ハンター』として映画化されている。
異端の考古学者・稗田礼二郎(ひえだ れいじろう)が日本各地の様々な場所を学術調査で訪れ、その地の歴史や伝承などを独自の視点で再検証し、その結果、超次元的・超自然的な事件に遭遇していく様を描く。別題『稗田礼二郎シリーズ』『稗田礼二郎のフィールド・ノートより』など。ヒルコ古墳で、ヒルコ古墳の文様を研究していた郷土史家(まさおのお父さん)の首なし死体が発見された。『妖怪ハンター』の第1話『黒い探求者』に登場した怪物「ヒルコ」と融合してしまった「まさおのお父さん(の生首)」。
「週刊少年ジャンプ」(集英社)1974年37号に掲載され、後に単行本化された際に他の作品と共に収録された。「生命の木」は、『妖怪ハンター』の一作。1976年の『週刊少年ジャンプ』増刊8月号に掲載され、後に単行本化された際に他の作品と共に収録された。
2005年に、『生命の木』を原作とした映画『奇談』も公開された。
御茶漬海苔
御茶漬海苔(おちゃづけのり)は、「惨劇館」など多数のホラー作品で知られ、実写ホラー映画の監督も務めている。
独特の効果音演出や容赦のないゴア描写によるスプラッターホラーを得意とするが、追い詰められた人間の心理描写など絵的な部分以外で恐怖を煽るサイコ・サスペンス、奇想な設定を背景としたSFホラーにも定評がある。
1980年代後半から90年代にかけて『ハロウィン』『サスペリア』『ホラーM』といった恐怖漫画雑誌の常連作家として活躍した。
惨劇館 / トラウマの宝庫。残虐なゴア描写、寄生虫がらみのグロ描写はトラウマ必至。
「月刊ハロウィン」に連載され、読者から大反響を呼んだ、御茶漬海苔の代表作といえる作品。スプラッタ傑作ホラーの決定版。
鬼才・御茶漬海苔が贈る、ホラー短編集!「第一回 テレフォン」以下「第二回 人蜘蛛」「第三回 めぐみちゃん」「第四回 エレベーター」「第五回 あなたと一緒に」「第六回 ケビンの惨劇」そして「バスルーム」「バスルーム2」「バスルーム3」を収録。有名なトラウマエピソード「進化したゴキブリ」
日々ゴキブリの出現に悩まされていた主人公は、その日もゴキブリをバンバン殺しているが、とうとう進化したゴキブリの復讐が始まる…。寄生虫(蛆虫)
身体から虫が湧いてくるようになった人間の話
曽祢まさこ
『呪いのシリーズ』
『月刊ハロウィン』(朝日ソノラマ)にて「呪いのシリーズ」として連載が始まり、後に「呪いの招待状」、更に「新・呪いの招待状」とタイトルが改められ、現在はウェブコミック配信サイト『デジタルホラーM』(ぶんか社)において、『新・呪いの招待状』の連載が続いている。一話完結。
10年の寿命と引き換えに人を呪殺する呪術師・カイの元を訪れる人間たちの物語。
『幽霊がり』 / オカルト・ロマンの巨匠・曽祢まさこの初期の傑作。
『幽霊がり』は、曽祢まさこの作品では最初期のもので、『なかよし』(講談社)に掲載された。1975年に「ダニエル」「マリアンヌ」の2作が「講談社コミックスなかよし」レーベルで単行本に収録された。その後『幽霊狩り』と改題、宙出版(1991年)より未収録作品の「魔犬シリウス」を加えて再刊され、講談社からも(2000年、2008年)とレーベルを変えて再刊されている。
盲目の美少年ダニエルには人の不幸や死を見てしまうもう一つの目があった。彼の一族にはごくまれに超能力を持った子供が生まれてきていたのだ。世間から迫害を受けつつも兄アーサーの力も借りながら、彼は不思議な事件と向き合っていく。
盲目の少年ダニエルは、超能力を持つエスパー。だが、身近な人々に不吉な影を感じるたびに、その与えられた不思議なパワーと宿命を、恐れ哀しむことになるのだった…。哀しい宿命を背負った少年の孤独な姿を描いたホラー・ストーリー。
七年目のかぞえ唄 / 愛と憎しみが織り成す幻想と怪奇が渦巻くオカルト・ロマン。
『七年目のかぞえ唄』は、曽祢まさこによる日本の漫画作品。『なかよしデラックス』(講談社)にて1981年11月号から1982年5月号まで連載された。
だれがセシリーを追いつめた――?かがやくばかりの女の子から笑顔をうばったのはだれ?平和なたたずまいになつかしい家。それは今も変わらない。なのに、何かがうごめいている!7年前の憎しみ、遠い記憶の糸をたどりながら、セシリーの心の旅がはじまる…。幻想と怪奇がうずまく曽祢まさこのオカルト・ロマン。