石坂浩二の金田一耕助シリーズ第二弾『悪魔の手毬唄』は、ミステリー映画としてもホラー映画としても最高峰の傑作映画として名高い。『悪魔の手毬唄』のトラウマシーン(猟奇的殺人シーン・死体・最恐の瞬間など)と見どころのまとめ。
悪魔の手毬唄(1977) / 映画史に残るミステリー映画の金字塔。ミステリー映画としてもホラー映画としても最高峰の傑作映画として名高い。
『悪魔の手毬唄』は1977年に公開された日本映画で、横溝正史の作品を映画化したものであり、製作は東宝映画、配給は東宝である。
物語は、由良家と仁礼家の二大勢力に分かれた鬼首村で発生した殺人事件に焦点を当て、金田一耕助が真犯人を探るというものであり、石坂浩二の金田一耕助シリーズ第二弾である。
悪魔の手毬唄 予告篇
恨みが積って二十年。青い沼に悪魔の数え唄が流れて、美しい死体がまたひとつ・・・名探偵金田一耕助が、岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村で起こった奇妙な殺人事件に巻き込まれていく…。
『悪魔の手毬唄』(あくまのてまりうた)は、1977年(昭和52年)4月2日に公開された日本映画。横溝正史作の同名長編推理小説の映画化作品。
映画史に残るミステリー映画の金字塔。ミステリー映画としてもホラー映画としても最高峰の傑作映画として名高い。
20年前に迷宮入りした「青池 源治郎殺害事件」…青池リカ(岸恵子)の旦那の青池 源治郎は、顔の判別も不能な状態で殺された…青池 源治郎と恩田幾三との関係は?
磯川警部(若山富三郎)が亀の湯にやってくる。耕助は、この宿にやってきた時から抱いていた疑問を、磯川にぶつける。
耕助「磯川さん、人里離れた奥山に、どうして僕を呼んだんですか?」
磯川「・・・金田一さん、こんな村にも、浮世の風は吹きよるんですわ。 ここの旦那さんという人が殺されましてな」
耕助「ええ?!女将さんの?」
磯川「そう驚かないで下さい。 殺されたったって、昨日今日の話じゃありませんけん。 もう20年前の事件ですけん」
耕助「20年前?!」
磯川「犯人はいまだにわからんままなんです」
昭和6年、この村に恩田幾三と名乗る男がやってきて、農閑期のサイドビジネスにとモール作りを持ち込んだ。始めの半年くらいはうまくいっていたが、モール作りの機械を農家に売り切った頃から、次第に仕事が来なくなる。その頃、若い頃に村を飛び出して以来、ずっと神戸で暮らしていた亀の湯次男・青池源次郎が、妻のリカとまだ幼い歌名雄を連れて村に戻ってくる。
恩田幾三を詐欺師だと見抜いた青池 源治郎は、恩田が鬼首村での下宿先にしていた放庵の離れへ単身乗り込んでいき、逆に頭を殴られて殺されてしまった。発見したのは、夫の帰りが遅いのを心配したリカと、リカから事情を聞いた放庵。
金田一「死体は奥さんが確認したんでしょ」青池リカ(岸恵子)の旦那の青池 源治郎は、顔の判別も不能な状態で殺された…映画史に残るあまりにもグロテスクな顔の死体。視聴者にトラウマを刻み込んだ。
磯川「それがね、死体とゆうものがな…顔全体が焼けただれ、見分けがつかん状態だったんです」
青池 源治郎の顔は囲炉裏の火で焼けただれて判別がつかない状態だったが、着衣と体つきから、リカと放庵が青池 源治郎に間違いないと証言した。
磯川警部(若山富三郎)は、20年前に迷宮入りした「青池 源治郎殺害事件」の真相を調べるよう、金田一耕助に依頼する。
原作では「青池」は「アオイケ」と読むが、この1977年の劇場版は「アオチ」と読む。
腰が曲がった謎の老婆 / この老婆の本当の正体は誰か?
金田一耕助が亀の湯に滞在して2週間ほど経った8月10日。用事で山向こうの総社の町に向かう途中の耕助は、放庵の5番目の妻、「おはん」(原作では「おりん」)と名のる老婆と峠道ですれ違う。
おはん「ごめんくださりやせ。おはんでござりやす。お庄屋さんのところへ、戻ってまいりました。なにぶん、可愛がってやってつかあさい」
金田一は磯川の勧めで総社へ調査に行き、その途上で老婆に遭遇する。総社の井筒でおはん(原作のおりん)の死亡を聞いた金田一は磯川に電話して放庵宅へ先行してもらい、自分も急行する。
金田一「じゃあ僕が仙人峠で会ったあの老婆は いったい誰なんだ…。」
由良泰子の見立て殺人。あまりにも猟奇的な死に様。手毬唄の「枡屋の娘」になぞらえて殺害されている。
夜を徹した山狩りの末、翌朝、村はずれの滝つぼで、由良泰子(高橋洋子)の死体が発見される。
県警の立花警部補(加藤武)達が犯行現場に到着する。
泰子のあまりにも猟奇的な死に様を見て驚いている立花警部は絶句する「あっ、犯行現場…」
由良泰子の死因は首をひも状のもので絞められたことによる窒息死だが、口にはなぜか、漏斗を咥えさせられていた。
手毬唄の「枡屋の娘」になぞらえて殺害されている。
うちの裏の前栽に雀が三羽とまって
一羽の雀が言う事にゃ言う事にゃ
おらが在所の陣屋の殿様 狩好き酒好き女好き
わけても好きなが女でござる
女だれが良い升屋の娘 升屋器量よし
蟒蛇娘 升で量って漏斗で飲んで
日なが一日酒びたり酒びたり
それでも足りぬと返された
村出身の人気歌手・別所千恵(仁科明子)は、壁に映った老婆の影を見て叫び声を上げる。
不気味な腰の曲がった老婆の影。一体何者なのか?
この老婆の影は、金田一耕助が仙人峠で会った腰が曲がった謎の老婆と同じ人物である。壁に映った老婆の影
見事な絶叫クイーンの別所千恵「キャー!」
泰子の通夜が行われた晩、今度は仁礼家の娘の文子(永野裕紀子)が行方不明となり、文子の姿を探して屋敷の外に出た別所千恵(仁科明子)は、壁に映った老婆の影を見て叫び声を上げる。
アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作『サイコ』に出演した元祖絶叫クイーンのジャネット・リー並みの絶叫。1970年代から80年代は絶叫シーンが1つの恐怖演出方法として確立された時期だった。
本作の絶叫シーンはいずれも見事な迫真の演技であり、視聴者にリアルな恐怖感を大いに伝搬した。
この直後、青池里子(永島暎子)は老婆に扮した母親のリカを目撃してしまい驚きの表情を見せる。すべての犯行を悟り、翌日に文子の通夜に出かけるときから高祖頭巾の着用をやめた。
青池里子は、老婆に扮した母親の青池リカを見てしまい、すべての真相を悟る。
仁礼文子の見立て殺人。手毬唄の「秤屋の娘」になぞらえて殺害されている。本物の幽霊のような文子の死に様は、ミステリー映画史に残る恐怖のトラウマシーンとして名高い。最恐の瞬間。
昨夜、通夜の席から忽然と姿を消した仁礼文子が、仁礼家のぶどう酒工場で発見される。葡萄酒の樽に漬けられるという猟奇的なシーン。本物の幽霊のような恐ろしさ。1977年版『悪魔の手毬唄』の本物の幽霊のような文子の死に様はミステリー映画史に残る伝説のトラウマシーン。
辰蔵は仁礼文子の死体にまだ気づいていない…。辰蔵は何気なく後ろを振り返ると…「ああああああ…」と絶叫し気絶してぶっ倒れた。確かに気を失うレベルの恐怖。
仁礼文子の遺体を発見した辰蔵の叫び顔もなかなか怖い。気を失うレベルの絶叫シーンなので迫力がある。本物の死体を見たような真に迫っている。絶叫顔は、ホラー映画の醍醐味。ミステリー映画のレベルをはるかに超えた演技・演出。
文子の死体は醸造用の樽の中に漬けられ、上に大判小判が吊るされていた。
手毬唄の「秤屋の娘」になぞらえて殺害されている。
うちの裏の前栽に雀が三羽とまって
二番目の雀が言う事にゃ言う事にゃ
おらが在所の陣屋の殿様 狩好き酒好き女好き
わけても好きなが女でござる
女だれが良い秤屋の娘 秤屋器量よし爪長娘
大判小判を秤に掛けて
日なし勘定に夜も更けて夜も更けて
寝る間も無いとて返された
青池里子の見立て殺人。想定外の悲劇的な殺人…
金田一は、手毬唄の3番の詞を想定し、別所千恵の危険を察知するが、殺されたのは、別所千恵ではなく、青池里子だった…。
村はずれの峠道で青池里子の死体が発見される。 傍らには錠前と鍵が落ちていた。里子を殺した凶器は、砂を詰めた一升瓶。
里子は、母親が犯人であることを知り、別所千恵の身がわりになったのである。
背後から近づいた青池リカは、それが自分の娘の里子であるとは気付かずに撲殺してしまった。別所千恵ではなく、実の子の青池里子を殺してしまったリカ…。
手毬唄の3番の歌詞『女誰がいい 錠前屋の娘』になぞらえて殺害されている。
うちの裏の前栽に雀が三羽とまって
三番目の雀が言う事にゃ言う事にゃ
おらが在所の陣屋の殿様 狩好き酒好き女好き
わけても好きなが女でござる
女だれが良い錠前屋の娘 錠前屋器量よし小町でござる
小町娘の錠前が狂うた
錠前狂えば鍵合わぬ鍵合わぬ
鍵が合わぬと返された
20年前の「青池源治郎殺害事件」の被害者は一体誰なのか…恩田 幾三?青池源治郎?
恩田幾三と青池源次郎二人の写真がない!これは何を意味するのか?
2つの見立て殺人とは別に、迷宮入りした20年前の事件の調査を進めていた耕助は、加害者・恩田の写真も、被害者・源次郎の写真も、捜査資料の中に残されていないことに気付く。
恩田の場合は、本名がわからなかったために、正式な身元調査ができなかったこと、源次郎の場合は、鬼首村に戻るにあたり、弁士時代の思い出の品はすべて焼き捨ててしまったことが原因だった。
20年前の被害者が確かに青池源次郎であることを確かめるには、身体的特徴を調べるのが一番だと耕助に指摘された磯川は、恩田と一番親しかった人物、別所春江(渡辺美佐子)に会いに行く。
磯川「恩田の何か肉体的な特徴ちゅうものはなかったっすかの?」
別所千恵の母・春江に恩田 幾三(おんだ いくぞう)の身体的特徴を聞くと「足の中指が人よりも長かった」と答えます。
別所春江は、恩田の写真は持っていなかったが、身体的特徴ははっきりと覚えていた。恩田の足の指がとても変わっており、左右ともに中指が異常に長かったと言う。
磯川常次郎(演:若山富三郎)は、20年前の事件で死体を検案した地元医師・権藤(大滝秀治)に、「青池源治郎殺害事件」の死体の写真(スクラップブック)を見せてもらう(グロい死体写真だらけ)。
目的の写真を見つけた磯川「これだ!」…確かに、死体の両足の中指がかなり長い。
磯川「この死体の足の中指は、普通の人間より長いと思いませんか?」
権藤「ああ、異常に長かったのをはっきり覚えとるわ」
磯川「しかし検死調書には、そのことは書かれていなかった!」
権藤「ふん!そんなことは死因に関係ねえだろ!」
そこに金田一が来た。
磯川「金田一さん、殺されたのはやっぱり恩田だった。」
金田一は磯川が髭剃りに使った鏡に写った蜜柑を別の1個と錯覚したことをヒントに「一人二役」に気づく。金田一は「青池源治郎=恩田 幾三」(一人二役)という証拠(物的証拠となる源治郎の写真)を手に入れるために、神戸へ向かう。
野呂「大河内伝次郎傑作時代劇三本立てのお前これ、特別興行の案内状じゃないか。馬鹿だねーあいつぁー。この方が探してるのは写真だよ。青柳洋次郎の。おっ、ここにいるのは青柳だよ」
金田一「ヘっ!?」
野呂「4人ほど弁士の顔写真が印刷されてあるだろう。その一番右のがそうだよ」
野呂「この興行はな、有名な弁士を集めて共演させるのが呼び物のひとつでもあったんだな」
金田一は、神戸で無声映画の弁士時代の芸名:青柳洋次郎(青池源治郎)の写真をとうとう手に入れて、村へ戻る。
恩田幾三と青池 源治郎は同一人物(一人二役)…犯人が分かる伝説の見せ場の「写真鑑定シーン」
磯川常次郎(演:若山富三郎)は金田一の依頼で、恩田幾三と関係があった由良敦子・別所春江・仁礼(鳥取に嫁に出て性が変わり「司」)咲江の3人を権堂医院に集め、狙われた娘たちがすべて恩田のタネであったことや手毬唄の内容を説明しているところへ金田一が写真を持って到着し、恩田と源治郎が同一人物であることを確認する。
金田一が神戸で入手した無声映画の弁士だった青柳洋次郎、つまり青池源治郎の写真。
恩田幾三は偽名であり、青池源治郎の一人二役。この写真は、恩田と源治郎が同一人物である証拠の品。
金田一耕助は、「小さくて恐縮なんですが、3人で回してご覧になってください。右の人です。写真の主はひげを生やしておりませんが、一つ鼻の下にひげがあるものとして鑑定していただきたいんです」と言って、神戸で手に入れてきた1枚の写真を3人に見せる。
写真を見た仁礼(司)咲江は悶絶…びっくりする…。伝説の名シーン。写真を見た3人の奥様ともびっくり。迫真の名演技。
由良敦子「あんた、どこでこがいな物手に入れんさった!?これは恩田幾三の写真ですがな!」
由良敦子奥さんから、金田一が求めていた回答が早速出て来た。
びっくりする磯川「恩田の写真じゃと?」
金田一耕助「咲江奥さん、あなたはあの写真の主を誰だとお思いですか?」
仁礼(司)咲江「確かに、今敦子さんがお言いんさった人じゃと」
金田一耕助「春江奥さん、あなたのご意見は?」
涙を流す別所春江「はい…千恵の父です。決して間違いございません」
3人の奥さんの対応が三者三様なのも見どころになっている。
金田一耕助「皆さん、この写真は恩田ではなく、無声映画の弁士だった青柳洋次郎、つまり青池源治郎の写真なんです」
驚きを隠せない磯川「そ、そ、それじゃあ、恩田幾三と源治郎とは同一人じゃったんですか?」
金田一耕助「ええ」
恩田幾三の正体は、かつて神戸で人気を博した活弁士「青柳洋次郎」、すなわち殺害された「亀の湯」の主人・「青池源治郎」本人であった。
詐欺師・殺人犯の容疑をかけられ指名手配された恩田幾三が、警察の必死の捜索にも関わらず行方知れずになったのは、被害者・青池源治郎として既に死亡していたからであった。
物語の核心(トリック):恩田幾三は偽名であり、青池源治郎の一人二役であった。真犯人は、「青池リカ」だった。哀しき殺人者…青池リカが悪魔になってしまった理由…「恩田幾三=青池 源治郎」の血を引く3人の娘「泰子」「文子」「千恵」を全員殺してしまおうと思い立つ。
金田一の捜査により、恩田幾三と青池源次郎は同一人物であることがわかる。そして、恩田=源次郎は、千恵、泰子、文子の実の父親であった。リカは、それらの娘たちと血のつながる歌名雄をいっしょにできないと思い娘たちを殺してしまったのである。リカは、犯行を自供後、沼に入って自殺を測る。
なんと恩田幾三と青池 源治郎は同一人物だった。恩田幾三は偽名であり、青池源治郎の一人二役であった。
事件の真相を理解した磯川「金田一さん…犯人は…リカさんか…」
無言でうなずく金田一。驚愕の真相…犯人は「青池リカ」だった。
20年前に迷宮入りした「青池 源治郎殺害事件」の真相:恩田幾三こと青池源治郎を殺害した犯人は、彼の妻である「青池リカ(岸 惠子)」であった。そして「泰子」「文子」「里子」の3人を殺したのもリカであった。
仲良し4人組は、皆、恩田幾三(=青池源次郎)の子。歌名雄(かなお)が、腹違いの妹である泰子と結婚したいと言い出したのだ。それは不可能なこと。近親相姦だ。本当の理由は説明できないリカがいくら反対しても説得力がない。いくら反対しても歌名雄は結婚をあきらめようとしない。そして今度は、もう1人の妹である文子までが結婚を申し込んできた。そんな時、千恵が村に帰ってくるという知らせが入る。
里子の異母妹への妬みも積もっていた。文子、泰子、千恵子らが幸福な人生を謳歌しているにもかかわらず、源治郎の正妻であるはずの自分の娘・里子が生まれながらの赤痣をコンプレックスにして人目を避けながら不遇な日々を過ごしているという現実が、精神的鬱屈としてリカを苦しめた。特に、国民的スターとして一世を風靡する別所千惠は、かつて三味線奏者として芸能界に身を置いていた彼女にとって、苛立ちと嫉妬心をより一層かきたてる存在であった。
青池リカは、これを機会に、「恩田幾三=青池 源治郎」の血を引く3人の娘「泰子」「文子」「千恵」を全員殺してしまおうと思い立つ。
リカは、泰子と文子を手毬唄の「枡屋の娘」「秤屋の娘」になぞらえて殺した。あとは、千恵を殺せば、目的は達成できるはずだった。ところが、泰子の通夜の晩、里子が老婆に化けた母を目撃してしまった。
翌日文子も殺され、里子は母が連続殺人の犯人であることを確信し、それを、体が弱いのを理由にいつまでも蔵に閉じこもってばかりいる自分を不憫がってのことだと勘違いした。頭巾を取って外出したのは、「自分はもう母や兄には頼らないから心配するな」というメッセージのつもりであった。そして密かに母を観察し、母がこっそりと千恵のバッグに手紙をしのばせるのを目撃した。千恵と自分のバッグをすり替えて、中の手紙を読んだ里子は、待ち合わせの場所へ行って母を止めようとした。
だが、背後から近づいたリカは、それが自分の娘であるとは気付かずに撲殺し、手毬唄の3番の歌詞『女誰がいい 錠前屋の娘』になぞらえて、別所家の屋号である錠前をその場に残して立ち去ったのだった。
20年前の「青池源治郎殺害事件」の真相…逆上した青池リカは我を忘れ、その場にあった薪で青池源治郎の頭を殴りつけて殺してしまった。
20年前、トーキー映画が始まって失業してしまった青池源治郎は、恩田幾三という偽名を使って月に1度鬼首村に現れ、モール作りの売り込みを始めた。その後、亀の湯の次男として村に戻ってきた源治郎は、井筒屋や放庵の離れを利用して1人2役を演じ続け、由良敦子、別所春江、仁礼咲江との逢引を重ねた。
そんな源治郎の企みに気付いた人物がいた。離を貸していた庄屋の末裔・多々羅放庵だ。
リカ「夫が恩田の化けの皮を剥がすと言って出ていった後、お庄屋(放庵)が入って来たんです。お庄屋は、夫のからくり(一人二役)を世間にバラされたくなかったら、自分の言うことを聞けと私に言い寄りました。」
放庵から事実を聞かされたリカは、恩田幾三の鬼首村での住処である放庵の離れに乗り込んでいった。すると、青池源治郎はリカに詫びるどころか、身重のリカと歌名雄を亀の湯に残して、別所春江とともに満州へ行くつもりだとぬけぬけと言い放った。
散々裏切られた夫の源治郎への愛憎によって徐々に精神を蝕んでいった身重のリカは、とうとう爆発してしまった。源治郎を衝動的に殺してしまった。発作的に行われた無計画な殺害であったが、放庵の協力もあり迷宮入りさせることに成功した。
逆上したリカは我を忘れ、その場にあった薪で源治郎の頭を殴りつけて殺してしまった。前に倒れた源治郎は、囲炉裏の炎に顔を突っ込んだ…。
源治郎の顔面が囲炉裏の炎で焼かれ、ひどく損傷していく…。あまりにもグロテスクなトラウマシーン。
一部始終を陰で見ていた放庵は、殺害現場に乗り込んできて、返り血に染まっているリカを無理やり手込めにしてしまった。
以降、放庵は、すべてを秘密にする代わりに、リカの体と生活の面倒を要求した。
リカは、犯行を自供後、沼に入って自殺を測る。人食い沼で見つかった水死体=真犯人(リカ)の顔を見て驚愕する歌名雄。
青池リカは人食い沼に身投げをして自殺していた。犯人の死体が沼から引き上げられたと聞いて、駆けつける歌名雄。磯川は歌名雄を止めようとする。
歌名雄「放してくれ!殺した奴の顔を見たいんだよ!」
金田一が近づいて言う、「磯川さん、歌名雄君の好きなようにしてあげたらどうでしょうか。」
恋人を殺された歌名雄は犯人の顔を見ようとする。真犯人の顔(母親のリカ)を見て驚愕する歌名雄。母親のリカであることを知って号泣する。「嘘やー!!母さん、母さん!」。絶叫が響き渡る「母さん…母さん…」。